現代の代表的知識人と言われている加藤周一氏が40歳台のころ高校生を対象にして書いた「読書」の入門書です。
(p62より引用) 「本をおそく読む法」は「本をはやく読む法」と切り離すことはできません。ある種類の本をおそく読むことが、ほかの種類の本をはやく読むための条件になります。また場合によっては、たくさんの本をはやく読むことが、おそく読まなければならない本を見つけだすために役立つこともあるでしょう。
「おそく読む」のか「はやく読む」のかは、その本に書かれている内容の理解の程度が異なることではありません。
本を読む場合、「おそく読む」ということが基本になります。「おそく読む」ことにより書かれている内容、即ち新しい単語や言葉づかい・論理展開等をキチンと理解することができるようになります。
そうやって、多くの語彙・概念・論理等が身についていれば、新たな本を読んだときにも理解が早まる、したがって、結果的に「はやく読む」ことになるというわけです。
加藤氏のいう「はやく読む法」というのは、テクニカルな速読術とは別のものです。
そして、「はやく読む」ことにより多くの本に接すれば接するほど、新たな興味・次なる疑問が湧いてきます。その興味に惹かれて、その疑問を解くために、じっくり腰をすえて読まねばならないような本(おそく読む本)に向かうことになるのです。