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週休二日制の先駆け (夢を育てる(松下幸之助))

2006-01-21 00:14:09 | 本と雑誌

 今では多くの企業で定着している「週休二日制」を松下電器ではすでに昭和40年4月より実施しています。

(p85より引用) 昭和35年1月の経営方針発表会で、好況に酔うことを戒めつつ「国際競争に打ち勝つために週二日の休日を目標に働こうではないか」と次のように方針を述べたのである。
「これからは国と国との間の競争が激しくなります。・・・そのためには、・・・海外との競争に打ち勝つようにしなければならないのであります。そうなりますと、私はどうしても週二日の休みが必要になってくると思うのです。」

 ここからがその理由の説明ですが、これも松下氏一流の言い様です。
 せっかくですからそのまま引用します。

(p87より引用) 「・・・どういうわけかと申しますと、非常に毎日が忙しくなって、今までゆっくり電話をかけていたというようなことでも、ゆっくりかけていられない。三分間かけていたものでも、一分くらいですますように、しかもそれで用件がチャンと果たせるように訓練されなければならないのです。工場の生産もまたそのとおりです。つまり、八時間の労働では相当疲れるということになります。ですから、五日間働いて一日は余分に休まなければ体はもとに戻らない、ということになろうかと思います。」

 すなわち、
 海外との競争に打ち勝つためには生産力を上げなくてはならない→そのためには生産性(効率)を上げなくてなならない→そうすると集中して仕事をするので疲れるだろう→だから、それを回復させるための休息は増やさなければならない→そうしないと生産性(効率)は上がらない
という理屈です。

 私たちの単純な頭では、「生産力を上げるためには労働時間を増やす(休日を減らす)べき」と考えてしまいがちです。しかし、労働時間を増やすことによる生産力の向上には限界があります。単位時間の生産性を上げることが真の競争力の向上であることに松下氏は気付いているわけです。

 さらに、松下氏はこう語ります。

(p88より引用) 「・・・アメリカでは経済活動がどんどん向上発展していますが、それとともに、やはり人生を楽しむという時間をふやさなければならないということのために、二日の休日のうち一日をあてるのです。このように、半分は高まった生活を楽しむために休み、半分は疲労がふえぬために休むという形になって、土曜も休みになる、というように松下電器をもっていかなければ、松下電器の真の成功ではないと思うのです。・・・そうでありますから、まず、5年先には松下電器は週二日の休みをとりまして、給与もまた他の同業メーカーよりも少なくならないというようにもっていくところに、会社経営の基本方針をもたねばならないと私は思うのであります。」

 松下氏は、日本経済が一本調子の拡大基調にある高度成長期の只中で、すでに「ワークライフバランス」の重要性を先取りしていました。
 そして、その具体的施策としての「週休二日制」を達成期限を定めた会社の基本方針として掲げていたのです。

 さらにすごいことに、その実現期限の昭和40年は高度成長期が過ぎた経済の不況期であったにも関わらず、松下氏は、大きな決意をもって「週休二日制」実施に踏み切ったのでした。

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