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映画「誰も知らない」是枝監督の眼差しの優しさと日本のセーフティネット

2021-06-03 15:32:46 | 日記

映画、誰も知らないを見たが、驚くべき低予算で社会問題を鋭く映し出した。巣鴨の子供置き去り事件をモチーフに是枝監督が脚本を書き監督したデビュー作品。
先日も記述したがイギリスの名匠ケン・ローチ監督を尊敬する是枝監督の眼差しがこの作品を写したカメラそのものである。
母親に置き去りにされてアパートで暮らす4人の子供達、長男は12歳、長女は10歳、次男7歳、次女3歳がこっそりと生活する。母親が近所に知られるとみんなが一緒に暮らせなくなると子どもたちに言い聞かせる。長女でさえ洗濯物を干すためにベランダしか外に出られない。母親から預かった金は底をつき、コンビで賞味期限切れの食品をもらいかろうじて食いつなぐ。
ある日、イジメにあっている高校生の女の子と長男は知り合い女子学生はこの一家のアパートに昼の居場所を見つける。ついに家賃滞納で困りはてている長男に女子高校生は援助交際で得た金を渡す。
この作品の実話はもっと悲惨である。悲惨なストーリーに救いを微かに見せることで観客は作品について深い味わいを反芻しながら考える。小説も映画も演劇も観客に考えさせることで、提示することが創作の意義でもある。「万引家族」もこの作品も社会のあり方を考えさせる。
私は日本のセーフティネットの脆弱さを考える。弱者をいたぶる右翼化している世間はこうした問題には無関心である。眼差しの優しさこそ日本が再生する要点となるのに。

厚生労働省のまとめによると、昨年度、18歳未満の子どもが親などの保護者から虐待を受けたとして児童相談所が対応した件数は全国で19万3780件にのぼっている。

虐待の対応件数は統計を取り始めた平成2年度以降増え続けていて昨年度は前の年度より3万3942件、率にして21.2%増えて、過去最多を更新。
虐待の内容別では、最も多かったのは暴言を吐いたり、子どもの目の前で家族に暴力を振るったりする「心理的虐待」で10万9118件(56.3%)にのぼり、全体の半数以上を占めている。

次いで、殴るなどの暴行を加える「身体的虐待」が4万9240件(25.4%)、そして本作品のような子どもの面倒をみない「ネグレクト」が3万3345件(17.2%)、「性的虐待」が2077件(1.1%)となっている。

国連子どもの権利委員会は、1月16日と17日に子どもの権利条約の日本の実施状況に関する審査を行い、2月7日に総括所見を公表した。日本についての審査は、日本が1994年に締約国となって以来、1998年、2004年、2010年に審査が行われており、今回は政府の第 4 回・5 回統合定期報告書をもとに行われた4回目の審査。

総括所見は、条約に基づき日本がとるべき措置について、多岐にわたる勧告を列挙した。とりわけ、緊急措置をとるべき分野として、差別の禁止、子どもの意見の尊重、体罰、家庭環境を奪われた子ども、リプロダクティブヘルスおよび精神保健、少年司法に関する課題をあげている。

本作品では置き去りにされた子どもたちに薄っすらと気づく人々がえががれている。見て見ぬふりをするのが日本社会の現実である。やっと児童福祉法が来年に改正される方針を政府が発表したが、とにかく弱者に対するセーフティネットが貧弱すぎる。
政府の怠慢に声をあげよう!