いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

ひとりでは生きられないのも芸のうち  内田樹 著

2012年08月03日 | その他
毎日厳しい暑さが続いています。経済情勢や政局など不安材料が取り巻く中でロンドンオリンピックの報道は明るい気分へ導かれます。結果はともかく人々が全力で頑張る姿を見るのは感動を誘います。

さて、今回は内田先生の「ひとりでは生きられないのも芸のうち」です。これはブログに基づいて編集された本だそうですが、若い人はもちろん、私と同世代の人々にも薦めたいと思いました。

内田先生のブログの存在は知っていましたが、ゆっくり拝見する間がないのでこの本の存在も知りませんでした。数か月ほど前、書店でこの本の内田先生の前書きを読み、マルクス主義に対する先生の見解に興味を持ち購入しました。一気に読み終えたわりにすぐアップできなかったのは、今、家族の介護と向き合う生活の中でなかなかPCに向かうことができなかったからです。

ブッシュ大統領(お父さんの方)が湾岸戦争を始めた時、「世界はもう待てない」という演説をして「アメリカが我慢できないこと」はそのまま「世界が我慢できないこと」になってしまったという論理から発展し、「私が我慢できないことは万人もこれを我慢できなく思っている。だからわたしが我慢できないことのリストを長くしていくことで世界はどんどんよくなるはずである」という考え方は実はとても危険な考えだと思います。この本ではその危険性を丁寧に説明されているので読者はそれをどう消化するかが鍵でしょう。

”I cannot live without you."

愛の言葉としても、もっとも説得力がある言葉です。

最後まで読み終えると、実はとても深いということをしっかり刻み込むことができるでしょう。

家族から社会へ

現代人は身勝手な論理に毒されまくっています。それでも人は誰かとかかわりあいなしには生きられないのです。

最終章の「死と愛をめぐる考察」はもっとも読み応えがあります。

「自我の縮小」についての記述は現代の日本人が根本的に考え直すべきとても大きな問題であると思います。この本は東日本の震災以前に書かれたものですがこの点については震災によって見直された部分も大きいかもしれません。「家族」は人間にとって大切なものです。

この本は若い人々へ人間とはどのような生き物なのか社会性という観点からの結婚のお薦め的な部分が強調されています。
結婚によって学び人間的に成長する部分はとても大きいからです。私も、自ら家族を持つことによって学んだことは社会へもつながることを確信しています。

現在は私の子供時代や若者だった時代より閉塞感が漂っています。実際、高齢者の介護と向き合う私も暗い気持ちになることがしばしばあります。粘り強く笑顔で義父母と会話する若いケアマネさんやヘルパーさんに敬服しながら、自分を励ます日々です。「あなただけが頼りだから」とたたみかけるように私に語りかける義母の言葉にずっしりと重いものを感じながら・・・。厳しい環境も所詮本人の考え方次第・・・。

「他者と共生することのできる能力」は生涯を通してもっとも大切ことのように思います。



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