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第一書房巡礼行記  『島崎藤村の文學』

2010年07月06日 00時10分17秒 | Weblog
島崎藤村の『破戒』初版は、1906年(明治39年)3月20日に自費出版で緑蔭叢書から出された。
初版の古書価格は、昔からべらぼうに高い。

ある古書店主、宅買いで古書を引き取りに行った。
雑本ばかりでガソリン代にもならないと嘆いていたところ、屑山の中から『破戒』初版がポロリと覗く。
近代文学館の復刻本かと悪い予感が横切る。
だが、どうやら本物。
美本で一安心。
喜び勇み手に取れば、残念無念。
表紙が取れていた。
がっくり、である。
帰宅するや駄目元。
表紙を糊付けして、重しを置くこと数日。
埋め立て以外で初めて使われたジャポニカ大全集、恐る恐る取り除けば奇跡か。
表紙はピッタリと収まって、補修したとは思えぬ出来也。
古書市に出せば、これがあなた。
赤毛氈に一冊だけ鎮座ましまし、その日のメインだ。
札で唸る入札封筒を横目で見ながら、店主一人で美味い酒を飲んだという話。

『破戒』に敬意を表し伊藤信吉の『島崎藤村の文學』は、装訂に同じデザインで挑んだ。
パロディである。


 
『島崎藤村の文學』 伊藤信吉著 1936年(昭和11年)2月20日 
初版 1500部 177×130ミリ 565ページ 1円50銭

伊藤信吉は、同郷の天才詩人・萩原朔太郎に師事。
戦前は、プロレタリア文学運動に参加。
発禁本『中野重治詩集』が押収された際、機転を利かし一冊を座布団に隠し接収を遁れた話は有名である。
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