「書物と装釘」である。装釘同好會から1930(昭和5)年5月20日第1号が刊行、第2号は同年8月20日、第3号は同年11月25日。3冊で揃いという。つまり3冊で終刊した3号雑誌というわけだ。昭和5年は、装訂を語るには少し時期が早すぎたのかもしれない。装釘同好會の会長には、和田萬吉、理事に小河阿丘、稲葉熊野、庄司淺水とある。
「書物と装釘」創刊号 装釘同好會 1930(昭和5)年5月20日
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小川亮作訳、岩波文庫の『ルバイヤート』第7刷を手に入れた。神保町の古書店で150円だった。昨年10月に第4刷を古書会館の古書展で入手して以来、3ヶ月ぶりの『ルバイヤート』である。第7刷をまずご覧頂こう。
『ルバイヤート』 エドワード・フィッツジェラルド 小川亮作訳
1959(昭和34)年3月20日 第7刷 岩波書店 150×104ミリ164ページ 頒価80円
そして、参考までに第4刷。 . . . 本文を読む
大島豊の『宇宙論』を紹介しよう。
第一書房から1932年(昭和7年)8月15日に初版が1500部で、翌月の9月15日には第2版が500部、矢継ぎ早に出された。
角背黒クロースで、がっしりとした装訂である。書影では背が見えないが、飾りマウントが設えてあるのも美点であろう。
私はこの角背の持つ味わいは嫌いではない。
丸背至上主義のように闇雲に角背を嫌う人もいるようだが、材料と内容をきっちと吟味すれば中 . . . 本文を読む
第一書房が、辞書も刊行したことをご存知の方は少ないと思う。
今から80年近く前、イタリア・ミラノの総領事・井上静一は、日伊関係の推進のため個人的に書き溜めたイタリア単語カードをベースにイタリア語辭典の企画を進めた。
しかし、日本とイタリアは、1940(昭和15)年の日独伊三国軍事同盟を結ぶ前。
日本でイタリア語を学ぶ学生は、ほんの数えるほどしかいない。
とても採算が合わないと出版各社は尻込みをし . . . 本文を読む
子供の頃、近所の工事現場で働く土方の小父さん達が、昼時に喰う弁当に憧れた。ふたを開けると、醤油のしみた海苔が蓋に付き、これでもかとぎゅうぎゅうの超大盛りの白飯の間から、黄色い卵焼きや朱色の鮭の塩焼きが必ず顔を出している。そんな弁当をモリモリと楽しそうに食べる土方の小父さん達に憧れた。
我国では昔から、土方であろうとサラリーマンであろうと、学生であろうと昼食は弁当と決まっていた。私の中学時代もそう . . . 本文を読む
土田杏村の『マルキシズム批判』を取り上げよう。平成12年11月24日古書展で1万円購入した特装本である。天金で特別製125部とあり、各号記番入りだ。さらに、スリップケースと函が付く。中々豪勢な造本である。
『マルキシズム批判』 土田杏村 1930(昭和5)年7月15日 第一書房
菊判 天金 特別製125部 記番 スリップケース 函 3円
第一書房は、記録に残らない形で各種の特装本を出して . . . 本文を読む
「鳩亭雑話」 鳩書房 1983年(昭和58年)7月1日~1985年(昭和60年)10月25日
限定250部
東京三鷹の古書店、鳩書房が発行した野心的な古書目録冊子「鳩亭雑話」である。これを古書目録と読んでいいかどうか悩むところだが、鳩書房の古書目録が後半に少し貌を出しているので、古書目録と読んでかまわないと思うが、この冊子のメインは、表紙や本文を彩る和紙の装訂と関川左木夫の「黄眠塾小史」であ . . . 本文を読む
「SHIP」 柄澤齊 2004(平成16年)2月29日、4月30日 梓丁室
初刷150部
柄澤齊さんの「SHIP」である。2004(平成16年)2月29日、初刷150部で柄澤齊さんの小口木版がふんだんに入った譚画集である。第Ⅰ期は「SHIP」18で終了した。 . . . 本文を読む
「TRAP」 編集発行人鳥居昌三 1983(昭和58年)1月、7月 海人舎
限定165部
鳥居昌三さんの「TRAP」である。手漉き和紙に活版で刷り上げた見事で揺るぎないシュルレアリスム誌だ。表紙のイラストというかデザインというかは北園克衛である。海人舎は鳥居昌三さんの個人書肆で、私は晩年の鳥居さんから無料で「TRAP」頂いた。「TRAP」は途中から限定175部限定となり、第15号が最終号と . . . 本文を読む
石川巖の『明治初期戯作年表』を取り上げよう。明治期に刊行された戯作である草双紙や合巻類を細大漏らさず網羅した掲載した年表で、明治期の合巻調査研究には欠かせない資料であろう。従吾所好社から、初刷700部で1937年(昭和2年)11月10日に刊行された。従吾所好社は「じゅうごじょこうしゃ」と読み「吾(われ)好む所に従う」という意味だ。
書物往来叢書特別篇『明治初期戯作年表』 石川巖著 従吾所好社 . . . 本文を読む
今話題の映画、私と同い年のジェームス・キャメロン(James Cameron)監督作品の「AVATAR」を取り上げる。この映画、上映時間3時間と長すぎるしその他欠点も多々ある映画だが、それが長所に思えるほど、そう、痘痕も笑窪に見えるほど、衝撃的な作品なのである。アカデミー賞間違いなしの一本だ。
私は、川崎のIMAX3Dシアターで、「AVATAR」体験をしたのである。脱税野郎のアハ体験とは . . . 本文を読む
四六倍判と大型な絵本、西村眞琴の『凡人経』を紹介する。特製限定版500部で書物展望社から1935年(昭和10年)3月20日に刊行された。題辞に徳富蘇峰の書を頂き、序文に島崎藤村の文をあしらった、西村眞琴の文も絵も見事なエッセイ集である。
『凡人経』 西村眞琴著 書物展望社 1935年(昭和10年)3月20日
四六倍判 布装訂 特製限定版500部 176ページ 函 3円50銭
西村眞琴は日 . . . 本文を読む
浮世絵研究家・井上和雄の『書物三見』を紹介しよう。書物展望社から愛蔵版百部として1930年(昭和14年)5月20日3円で刊行された。2円50銭の普及版もある。
『書物三見』 井上和雄著 書物展望社 1939年(昭和14年)5月20日
四六判 和紙刷布装訂記番署名入 愛蔵版百部 292ページ 函 特装版3円
井上和雄は酒井好古堂の「浮世絵」の編集を経て、関東大震災後に吉野作造、宮武外骨と明 . . . 本文を読む
最近珍しく超お買い得価格で入手した古書がある。いつもは、保存の悪い本を高く買うばかりの、お間抜けな私だが、今回ばかりはちょっと違った。長年欲しかった本で、私の想定価格のはるか下を行く古書値である。
その本とは『現代獵奇尖端圖鑑』。ご存知ない?新潮社から1931年(昭和6年)に刊行されたエログロナンセンス時代の基本図書だ。昔から、買おう買おうと思っていたが、古書価格が自分の思った価格と相違していた . . . 本文を読む
書物展望社の三村竹三郎著『佳氣春天』を紹介しよう。1935年(昭和10年)10月16日に天金、特製限定版百部と総革装3部本で刊行された。著者の肉筆画署名入りで、家蔵本は岡山県吉備津のうさぎが描かれていおり、川上澄生による駒井清次郎の蔵書票が貼られた駒井旧蔵本である。
『佳氣春天』は、京都、奈良、大阪や伊勢神宮など夫人同伴の旅行を各地のエピソードを交えて書いた紀行文が主である。そのため、旅の恥は「 . . . 本文を読む