robihei日記(将棋とか、GOLFとか、徒然に)

将棋ファン暦30余年、10年程前のNスペ「対決」を観て将棋ファン熱が更に高じ、以来ずっと棋界ウォッチャーに

A級順位戦終了

2008-03-04 13:13:54 | 将棋な私
昨日寝てからも考えていたことがある。

先崎は何ていったのか?

きっとこんな感じだ、

「さいご歩成のところ銀打ってたら詰んでたんだけど」

天才たちの集団(奨励会)を抜けてプロ棋士になった連中はとにかく
頭の回転が速い上に言葉を端折る、ハショルなんてもんじゃない位
論理の飛躍が言葉を飛び石のように跳ねさせる。慣れてくるとそれも
読み解くことである種の心地よさを感じなくもないが、ともあれ忖度
するのには前後背景の理解と発言者のパーソナリティを知っておくこと
が前提になる。だって「とってとっておかわりして」とか、普通ワカンナイ
でしょ?

先崎の発言のタイミングはこうだ。

A級順位戦最終局、「将棋界の一番長い日」は放送夜の部が始まる前、
羽生が谷川を僅か67手で囲碁でいう「中押し勝ち」のような状況で一息
に吹っ飛ばして挑戦決定。

あとは既に降級が決まっている行方八段と共に、来期A級棋士の肩書き
を失うのが佐藤か久保かという一点に注目があつまっていた。

その一方の久保は23時に優勢の将棋を後手番で勝ちきれずに千日手
成立、30分後に先後入れ替えて指しなおしという状況。

で、佐藤-木村戦。

中盤で角と桂馬の交換となり、圧倒的に優位に立つ佐藤棋聖棋王に対し、
ありえないほどの難渋を受け入れて涙を誘うような粘りで形勢を損ねず
ついていく木村八段。

いつしか佐藤勝勢とまで言われた局面が混迷を深めて、そして最終盤
での佐藤玉の「詰むや詰まざるや」の局面だったのである。

一手前の佐藤の玉引きが悪手だったようで、120手目の局面で△6七銀
から佐藤玉に詰みが生じていた。

その局面で木村は残り2分、最後の考慮時間を使い切って以後は1分
将棋となったのだが、詰みを読みきれずに9九歩成と香車をとった。

この場面が控え室では大騒ぎになっていたという訳である。

佐藤玉が詰めば即佐藤は負け、佐藤●久保○だと、過去にも殆ど例の
ない、現役タイトル棋士の順位戦降級という事態になるわけであり、「事件」
を好む好事家の集まりである棋士雀たちが色めきたった様子は想像に
難くない。

佐藤玉の詰みはすなわち超一流棋士の棋歴に残る大汚点になる可能性
が大だった。

そこが先崎の冒頭の発言のタイミングになるのである。

佐藤の大親友で木村とも飲み友達である先崎としては、

「モテ光(佐藤のこと)悪運つえーな、木村、今回はダラシネーけど許すか」

ぐらいの感じだったかもしれない。

ちなみにこの将棋は結局150手以上掛かった、なので120手目は最後では
ないのだが、棋士にいわせれば詰んでいれば最後ということなのである。
もしくは、状況を鑑みると「最期」と表記しても良かったかも。

勝った安堵もつかの間、実は一度終盤に死んでいたと知らされた佐藤康光
は頭を抱え込んだ。眼も鼻も真っ赤に充血していた。

とはいえ、死地から生還するのもTOP棋士の技量のうち。昔、島朗がA級で
下のほうとはいえしっかり残留する格付けを得ていたときに、そこまで全部
勝ってきていた谷川(結局挑戦者になった)の、あの光速の寄せをかいくぐり
詰みを逃れて勝って残留した将棋を思い出した。

結局久保が千日手局を落として、仮に佐藤が詰まされていたとしてもA級
残留だったというのは後講釈もいいところ。
勝って残留できないようでは、来期の佐藤の活躍も覚束ない。

佐藤康光 ●●●●●●○○○の3-6で残留決定。

昨年夏から指されていた順位戦、何と昨年のうちは1度も順位戦で勝てずに、
年明けから3連勝での凌ぎ。

来期は順位戦に鬼のように強い森内がA級に戻ることになるであろうし、下から
来る鈴木・深浦も弱くない、っつかツエー奴。数年前まで降級候補だった郷田や
三浦も、郷田6-3、三浦7-2と地力を着けて易々とは踏んづけられない状況。

来期順位、谷川浩司7位、佐藤康光8位という2人は、もっとも降級確率が実績
から見て高い順位である残留者の下位ゾーンのハンデを跳ね返すことができるか?
今から来年のこの日が楽しみといったら、気が早すぎるか?さすがに(笑)

PS.終盤の佐藤の哀切の表情、同僚棋士は「鬼のよう」などと形容していたが、
   robiheiの見立てとしては「される運命を感じてつれられていく羊のよう」
   に見えた。勝負の世界には狼と羊がいて、狼同士の戦いだと、狼を食う虎が
   現れる、なーんて話もある。羊に見えた佐藤も勝ち残って狼の衣を脱がずに
   済んだ。来期は1年通じて虎の衣で通してもらいたいものである。