2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

■ここでは静けさが第一だ!

2008-11-07 | ■拓のフォト・ギャラリー
(C)Taku

  「セーヌの釣りびとヨナス」 ライナー・チムニク  

  パリでは、セーヌの河岸に、釣りびとたちがすわりこんで、年中釣り糸をたれている。

  セーヌは青く、岸は黄いろい。釣りびとたちは、赤いネッカチーフを首にまきつけている。パリの陽は、じりじりとその背に照りつけ、釣りびとたちのシャツは、おかげで色あせて、まあたらしい新聞紙みたいに白っぽくなっている。

  ここでは静けさが第一だ!

  釣りびとたちは、時計をセーヌにほうりこんでしまった。セーヌのほとりでは、時も歩みを止めるんだからね。

  まちは広大な銀色の海に沈み、河波と釣り糸とのあいだに、夢の王国がおもむろにひらけはじめる。

  釣れるのは、ほんのちっぽけな魚ばかり。だが、パリの釣りびととしては、そこがまたこたえられない。
  
  (訳・矢川澄子)

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