林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

村上春樹の中央林間(続)

2010年04月29日 | Weblog
受験とも勉強とも関係ありませんが、村上春樹の『1Q84』(Book3)について書きます。

以前書きましたが、この本のBook3には準主役の牛河(悪役だがシステムではなく生身の人間。ちょうど命令に従いながら悪事をはたらくイスラエルの兵士ですね)が、かつて中央林間在住という設定なのですね。

146,258,266,320,379,389、507,568ページと中央林間についての記述があるわけです。

258頁
牛川は一人でそこに住んでいる。以前は妻がいて、二人の小さな娘がいた。神奈川県大和市中央林間に一軒家を買って、そこで暮らしていた。小さいながらも芝生の庭があり、犬を一匹飼っていた。妻はごく当たり前の顔立ちだったし(中略) 

自分がかつて家族を持ち、郊外の一軒家で暮らしていたと言うこと自体が不思議に思える。(259)

266 弁護士としての忙しい生活、高い収入、中央林間の一軒家、見栄の悪くない妻、私立小学校に通う二人のかわいい娘、血統書付きの犬。

320 彼は中央林間の一軒家のことを思い出し、芝生の庭と犬のことを思い出し、妻と二人の娘を思い出した

379 妻も二人の娘も、芝生の庭のある中央林間の一軒家も、これほどの温かみを牛河に与えてくれることはなかった(←ふかえりという少女のまなざしに打たれた牛河です)

389
中央林間の一軒家と、そこにあった食卓のことを牛河は考えた。その食卓には毎晩暖かい食事が出ていたはずだ。(中略) 昔々、小田急線中央林間駅徒歩十五分のところに、新築の一軒家と暖かい食卓がありました。二人の小さな女の子がピアノを弾き、小さな芝生の庭があり、血統書付きの子犬がそこを駆け回っておりました。


とこんな具合で基本的には同じ記述が多い。(「建て売り一戸建て」を購入したという記述があったはずだが)

中央林間の近くに住む人であれば、「中央林間徒歩15分」にある「やや豪勢な一戸建て」、時代は1960-70年代(?)となれば、具体的なイメージを考えてしまうでしょう。娘たちが通うとされた私立小学校の名前だって、あれやこれやと思いめぐらしてしまうでしょう。

こういう視点から村上作品を読む人は少ないでしょうが、我ら「林間人」はそういう読み方をしてみてもよいのではないでしょうか。