林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

数学と学習塾

2009年03月16日 | 数学学習
数学と学習塾

ある程度まともな補習塾の多くは、中学生の数学の成績を上げることに自信を持っているはずです。数学は、英語以上に短期間のうちに定期試験の成績が高くなる!と。しかし、その塾がとりわけ優秀な指導力を持っているというわけではありません。むしろ、数学という教科の性格なのです。

仮に中学生や高校生が数学でつまずいているとしましょう。その場合、上記のような個別指導塾や家庭教師につけば、1-2週間~2-3ヶ月もあれば、成績は上がることは珍しくないのです。ただし、ここには二つの条件があります。

まず、前の段階の数学、つまり高校生ならば中学数学、中学生ならば小学生の数学の基本ができているということです。逆に言えば、小学生レベルの数学がわからなくなっている中学生の場合、成績を上げるのにはかなり長い時間がかかるはずです。中学数学あるいは小学校数学の理解が完全ではない高校生に数学を教えるのも、もちろん大変です。(残念ながら、大学進学希望者であっても、小学校の算数が完全には分かっていない場合があります。さらに悲しいことですが、それでも入学できる大学工学部が存在します)。

もう一つは、数学の成績が向上するという時、応用問題や難問までもが解けるようになるというわけではないということです。巷の学習塾が宣伝している数学の成績急上昇というのは、基本的には公立中学校の定期試験の点数が良くなったということなのであって、数学が苦手な生徒が難問を解けるようになったということではありません。教科書の基礎的問題を1人でなかなか解けなかった生徒が応用問題・難問を解けるようになるためには、かなりのハードルがあるからです。一般論として言えば、前の段階で応用問題・難問が解けなかった生徒は、次の段階で応用問題・難問にチャレンジするのは断念した方が無難です。無理に数学に固執する必要はないのですから。

ただし、前の段階の応用問題ができなかった生徒であっても、現段階の基礎的問題を解くことは十分可能です。中学数学では初歩的な代数しか解けなかったとしても、高校数学の基礎的問題、例えば数Ⅱの積分問題 ∫(ax+b)dx を解くことができるようになるはずです。仮にできないとしたら、塾に通っていないか、勉強をさぼっているかです。(現実には、一流高校の生徒でも、苦手意識から数学の勉強をさぼり、基礎的問題をできなくなっている場合はかなりある。分野で言えば、ベクトルや三角関数などで訳が分からなくなって悲鳴を上げていることが多いようです。基礎レベルは至極簡単なはずですから、早めに手を打っておきましょう)。


話を元に戻します。数学の成績がみるみるうちに上がるという学習塾は、その塾が補習塾であることを宣言しているようなものです。だから、そういう塾には、一般的に見て成績が良い生徒(上位校の成績下位の生徒は、一般的に見れば成績上位者です)や、数学が著しくできない生徒には、あまりお勧めできません。補習塾では、そういうタイプの生徒に慣れていないはずですから。

ところで教師としては、補習塾の労働は凡庸で退屈な仕事に過ぎません。教育に携わる者としては、数学教育のチャレンジングな課題はむしろ進学塾と救済塾にあるのです。この話題については、改めて別に書きましょう。