夜の八時過ぎ、テレビを観ていた。
ちょっとおもしろかったので、
立っていた妻への注意がおろそかになった。
足音が、ダダダとした。
振り向くと、
妻が後ずさりしながらそのまま
真うしろに棒のように倒れた。
頭を打った。
( しまった、やってしまった。)
妻を見る。
目を閉じている。
気を失ったか。
動かさないで様子を見る。
うっすらと目を開けた。
静かに身体を抱えて立たせ、
そのままベッドに横にする。
すぐ目を閉じてしまった。
脈をとる。
10秒で10回くらいある。
様子を覗う。
いつもの様に口を少し開けている。
耳を近づけると寝息がする。
大丈夫、息をしている。
まだ安心は出来ない。
あれだけまっすぐ、本当に
絵に描いたように、棒のように
後ろに倒れたのだから、
脳に損傷があるはずだ。
俺はバカタレだ。
前に2回も転倒させているのに、
またやってしまった。
骨身に沁みないと治らない。
また、妻の様子をみる。
口元に耳を近づけると軽く寝息が聞こえる。
よかった、息をしている。
ごめんな、ごめんな、 と謝る。