齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

8月のことば 諸悪莫作 衆善奉行 (しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう)

2012年08月08日 | 今月の言葉
暑い日が続きますがみなさまいかがお過ごしですか?

8月といえばお盆。いつもにましてご先祖様をおもい、自らを振り返りたいものです。

さて、今月のことばです。

一見するとなんだか漢字ばっかりで難しい??

「諸悪莫作 衆善奉行(しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう)」

でも簡単に言ってしまうと、「悪いことはせず、善いことをする」
なんです。ま、言うは易し・・・なんですが・・・以下説明です。


「諸悪莫作 衆善奉行(しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう)」

「七仏通戒偈(ひちぶつつうかいのげ)」の一部です。「自浄其意(じじょうごい) 是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」と続きます。

ここに興味深い話があります。

中唐の時代(八世紀後半)、「白氏文集(はくしもんじゅう)」などで我が国の平安文学にも大きく影響を及ぼした、漢詩で有名な白居易(はくきょい)(白楽天(はくらくてん))という人物がいました。

彼は四十才で母を失い、続けて娘を失って「死」の問題に出遭い、儒教から仏教に関心を寄せるようになりました。
彼は官吏でありましたが、地方勤務を自ら志望し、五十才で中国杭州・蘇州刺吏(県知事)に赴任します。

当時、杭州には、高い松の木の上に板を渡して巣のようなものを作り、そこで坐禅をしているという一風変わった名物禅僧の鳥彙道林禅師(ちょうかどうりんぜんじ)がいました。

道林禅師が高僧だという噂を聞き、仏教に関心を持つ白居易は、自ら禅師を訪問しました。

木の上に禅師が居られたので

「危ないではないか」

と言うと、

「お前の方が危ないぞ」

と返されたそうです。

つまり、木の上の物理的危険を心配するより、
官吏とし権謀術数のまっただ中にいるお前さんの日常性の方がよっぽど危険だと指摘されたのです。

続けて白居易が訪問の真の目的である

「仏教の一番の根本は何か」

と質問すると、禅師は、今月の言葉

「諸悪莫作 衆善奉行(悪いことをしない 善いことをする)」

と応えられました。

先ほどのやりとりで、ピシッとやられている白居易は、
知事でもあり漢詩の達人でもある自分が、わざわざ訪ねて来て仏教の根本を質問したのに対し、
あまりにも簡単な答えだったのに憤りを覚えたのか

「そんなことは三才の童子でも知っていることだ」

と言ったそうです。

それに対して禅師は、

「三才の童子でも知っているが、長年修行を重ねた八十才の私でもそのことを実践することは大変難しい」

と諭されたといいます。

それ以後、白居易は道林禅師に深く帰依したと言う話です。

知っているということと、実践することは大きく異なります。

「善きこと」とは「自他を共に生かし、他を苦しめたり悲しませたりしないこと」であると仏教は説いています。

さぁ、八月はお盆月、先祖に報恩謝徳し、利他行の月、今の自分の「実践」に眼をむけてみましょう。                       
壬辰 葉月

☆お知らせ
十二日 午前中 墓参り・盆礼受け
十五日 午前八時 山門施餓鬼会
二十五日 午前八時 齢仙寺 地蔵盆


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