齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

7月のことば「不期明日(みょうにちをきせず)」

2015年07月05日 | 今月の言葉
梅雨空が続くこのごろ・・・いかがお過ごしでしょうか?
今年ももう半分すぎてしまいました。
時が流れるのはほんとに早い、と感じる今日この頃です。

そんな流れるような毎日を反省すべく今月のことばです。

今月のことばは、

「不期明日(みょうにちをきせず)」

千利休の孫の千宗旦(そうたん)は、

新しく建てた茶室に、参禅の師である京都紫野大徳寺の清巌(せいがん)和尚を招き、
その茶室の命名をして頂こうとしましたが、約束の刻限になっても和尚の来訪がありませんでした。

そこにたまたま急用ができてしまったので、弟子に
「和尚が来られたら、明日又来て頂くようお願いせよ」と言い残してでかけました。

所用を済ませて急いで帰ってみると、既に清巌和尚はお帰りになられていました。

そして茶室の腰張りに
「懈怠比丘不期明日(けたいのびくみょうにちをきせず)(遅刻するような怠け者の和尚は明日もう一度来ることは約束できない)」と書かれてありました。

これを見て宗旦は直ちに和尚のもとに参じました。
そして、一寸先の命もわからぬのに、明日の約束を求めた自分を反省し、その諭(さと)しを頂いた和尚に感謝し、
その茶室を「今日庵(こんにちあん)」と名付けたそうです。

日頃、私たちは何の確証もないのに、当たり前のように
今日の次に明日があり、明日の次に明後日があるように思い込み、
仕事の取っ掛かりを先延ばしにしたり、問題解決を先送りしています。

しかし、人生はまさに薄氷の上をおそるおそる渡っているようなものなのです。
この話はまさに、「明日を頼むことなく」今日を生ききることの大切さを教えられる話ではないでしょうか

お知らせ
七月十二日 午後一時 観音講

平成二十七乙未文月