齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

体露金風(たいろきんぷう)

2018年11月04日 | 今月の言葉
地震、豪雨、台風などで被災された方々。
亡くなられた方々のご冥福を祈り、
寒くなりますので一日も早い復興を願っております。


ご来訪有難うございます。

早いものでもう今年も余すところ2ヶ月を切りました。
来年の年賀状発売のニュースを聞くと
何かと慌ただしさを覚える今日此の頃です。

朝夕、メッキリ冷え込むようになりました。
お風邪など召されぬよう、お体にお気をつけください。


さて、今月の言葉で金風と云う言葉が出てきます。
恥を忍んでカミングアウトします。
無学の私は、金風とは秋の稲穂や
夕暮れ時の夕陽に照らされた山々の
色付きの色彩的なところから
秋風を金風と呼ぶものと思い込んでおりました。

お恥ずかしい限りです。
本文にも記しましたが次のような意味合いで
秋風を金風と呼ぶことを学びました。

古代中国からの思想で五行思想又は五行説と云うのがあります。
全ての事象は「木・火・土・金・水」の五種類の
要素から成り立ち、それらが互いに影響し合い、
その生滅盛衰によって天地万物が変化、
循環するという考えであります。

四季の変化も五要素の推移によって起こると考えられます。
「木」は春、「火」は夏、「土」は季節の変わり目、
「金」は秋、「水」は冬をそれぞれ象徴すると云います。

よって「秋」は「金」で象徴されるので
「金風」は「秋風」と云う事であるという事であります。


冗長な、恥の上塗りのような、したり顔の説明は兎も角も
「今月の言葉」は「体露金風」です。
宜しければご高覧頂ければ幸いです。




今月の言葉
体露金風(たいろきんぷう)

僧、雲門(うんもん)に問う、
「樹凋(しぼ)み葉落つる時如何(いかん)」。
門(もん)云(いわ)く
「体露金風(たいろきんぷう)」
と云う禅僧の問答がある。
体露とは真理の全てが隠すことなく現れ出ていると云う意。
金風の金は五行説で秋を示し、金風とは秋風を云う。

この遣り取りは単に知らない事を質問し
高位の識者が答えると云うものでなく、
抜け切った雲門禅師と老熟の僧の
高度な境地の遣り取りであると云われる。

いろいろと解釈できるが、
禅の世界では修行を重ね
二元対立の世界を超えた心境の遣り取りと捉える。

つまり、老成の僧から、
樹木が老木となり葉が落ちてしまった時の様を
秋の樹相にかぶせ、
苦楽、好悪、善悪、美醜、快不快、損得等の
煩悩に翻弄される心境から解脱した時は
どんなものかと問われ、
雲門禅師はあっさりと
「天地一杯、心地よく颯然と吹く秋風だわい。」と
答えている。というか、言わされたと看るべきか。

人は生まれた以上いずれ死を迎える。
ある方から「バケツに水が入っているが
実は穴が開いていてポトリポトリと
漏れている様なもの」が
人の「生」だと教えて頂いた。
その意味で「生死事大 無常迅速」で、
「体露金風」とあっさり言える日は待ってくれない。

恥かしながら、
日々、雑念や執着、妄想に振り回され、
ただ馬齢を重ねる底の小衲は
この語に出会うとまさに冷汗三斗である。

お知らせ
十一月二十四日午後二時 於齢仙寺
 教区第二部花園会
   秋季特別布教会
    松久宗心師(岐阜陽徳寺住職)
    「信」・・・・何を信じるのか

平成三十戊戌霜月