齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

唯嫌揀択(ゆい けん けん じゃく)

2018年07月10日 | 今月の言葉
西日本豪雨で
被災されました皆様、
衷心より
お見舞い申し上げます。


今月の言葉は舌を噛みそうな語です。
難しそうな漢字が並んでいますが
宜しければご高覧ください。



今月の言葉
唯嫌揀択(ゆい けん けん じゃく)

「至道無難、唯嫌揀択」

(しいどうぶなん ゆいけんけんじゃく)

という句が、

禅の世界を端的に示す語句が記されている

「証道歌(しょうどうか)」という書にある。

「道に至り安心(あんじん)を得るには、

何も難しいことがあるわけではない。

ただ、選り好み、こだわりを捨てることである」

というような意味である。


私どもは日々の生活の中で、好悪や

自分にとっての都合の良し悪し、

利益の有無などなどで行動選択をしている。

さりながら、

「娑婆の世は思うままにならない」

というのは言うまでもない。

物事が上手くいくと有頂天になり

後で多くは躓(つまづ)く。

上手くいかないと

落ち込んだり斜(しゃ)に構えたりする。

結果、心は大きく揺れ動き、ストレスが蓄積する。


この語は

「良し悪し、好悪に拘らず、

すべて普通に受け止めることだ。」と示す。


ある老師(お悟りを開かれた高僧)は

仙厓さんの言葉と言われる

「気に入らぬ 風もあろうに 柳かな」

とよく色紙に揮毫された。


「時に応じて柳の枝になる努力をする」のでなく、

「平素に柳の枝であること」に心せねばならぬ小衲である。


平成三十戊戌文月