齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

一葉落知天下秋(いちよう おちて てんかの あきをしる)

2018年10月03日 | 今月の言葉
台風21号、北海道胆振東部地震、
引き続き台風24号と、
被災されました多くの方々に
衷心よりお見舞い申し上げ、
亡くなられた方々のご冥福と
一日も早い復興を祈念しております。

さて、早いものでもう10月
今月のキーワード「秋」。

秋は何時の事をいうのでしょう?
気象学的には
9月、10月、11月
二十四節気の暦では
当たり前ですが、
立秋から立冬前まで
天文学的には
秋分から冬至前まで
なんだそうです。

どの観点からも
完全にひと月間秋と言える月は
10月だけのようです。

前置きが長くなりましたが
今月の言葉は
「一葉落知天下秋」
(いちよう おちて てんかの あきをしる)です。

宜しければご高覧ください。


今月の言葉
一葉落知天下秋
(いちよう おちて てんかの あきをしる)

この句は、淮南子(えなんじ)の説山訓(せつざんくん)に
「見一葉落、而知歳之將暮(一葉の落つるを見て、
歳(とし)の将(まさ)に暮れなんとするを知り)云々」
というのから来たと言われる。

些細な現象を見ていち早く先の事を予見する
というような意味である。


さりながら、揮毫(きごう)されたこの句が
床の間に掛けられた時、
それは少し違った受け止めになる。

一即多(いちそくた)の世界、
「一枚の落葉で天地一杯の秋を満喫する」
とでも言えようか。

妙心寺の「生活信条」の最初に
「一日一度は静かに坐って
身(からだ)と呼吸と心を調えましょう」
ということが謳われている。

高尚な目的はともあれ、
凡人には自己回復の大切さを提言している。

私たちは日々多事に追われ
自己を振り返る時間を持つことが中々難しい。

秋の夜長、一度ゆったりと坐して、
虫の声、月の明るさ、風の音に親しむ中で、
今日まで生かされてきたこと、
父母への感謝、衆生の恩などに思いを馳せて、
天地一杯の秋を満喫しつつ
「秋」そのものにたっぷりと浸ってみよう
と思うのは小衲だけだろうか。


お知らせ
十月七日 齢仙寺達磨忌
平成三十戊戌神無月