齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

10月の言葉「良賈深蔵若虚(りょうこは ふかくぞうして むなしきが ごとし)」

2016年09月30日 | 今月の言葉
お彼岸を過ぎ、10月の声を聴きますと、
なんとなく朝夕の涼しさを感じる今日この頃ですが、
皆さん、お変わりなくお過ごしですか。

ご来訪を感謝します。

今月は
「良賈深蔵若虚(りょうこは ふかくぞうして むなしきが ごとし)」です。




良賈(りょうこ)とはすぐれた商人。
意味は「本当に賢い商人は、店の奥深くに良い商品を隠しているもので、店の間(ま)はカラッケツみたいだ。」であります。

昨今、これでもか、これでもかとできるだけ多くの情報を発信して販売に精を出しますが、昔の老舗(しにせ)の大店(おおだな)は、店先には多く並べず、求めに応じて幅広く、良品や高価なモノ、珍しいモノまで自在に奥から出してきて商ったそうです。それが代々続く大店の力だったそうです。

我々はちょっと知っていると「したり顔」で喋ってしまいます。その実、質問されると冷や汗をかくこと甚だしい場面があります。
また、自分を売り込もうとするあまり、時に背伸びしたり、前のめりになりがちです。

この語は語りすぎる孔子を老子が諭(さと)された場面で引かれた言葉だといいます。

学ぶことには貪欲である必要がありますが、一方で「まだまだ」という謙虚な気持ちを持って、ひけらかさずに内なる研鑽を重ねることを説いておられます。


この語の後に「君子盛德容貌若愚」(君子(くんし)は盛徳(せいとく)ありて容貌(ようぼう)愚(ぐ)なるが若(ごと)し)と続きます。

容貌だけは十分「愚なる若し」の私ですが、内に秘めた輝きを増すよう精進を思う私であります。




お知らせ

十月十日 齢仙寺 達磨忌

平成二十八丙申神無月


9月の言葉「我他彼此(がたひし)」

2016年09月01日 | 今月の言葉
台風10号が岩手県、北海道に大きな爪痕を残しました。
被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げると共に、
被災された皆様の、一刻も早い復旧・復興を祈念いたします。


さて、今月の言葉は「我他彼此(がたひし)」です。 日頃の身近な言葉を取り上げました。 宜しければご覧ください。

ご訪問感謝します。



 我他彼此(がたひし)
建物や家具の造りが悪くてきしんだり、人間関係が上手くいかない様を「がたぴしする」とか「がたびしする」といいます。
擬音語のようにも思えますが、語源は「我他彼此(がたひし)」という仏教語であるといいます。
「我他彼此の見(けん)」とは「我」と「他人」、「彼方(かなた)」と「此方(こちら)」は相対するものであり、同一ではないところから、「自分と他人とを区別する見方を持つこと」をいいます。

生活の中で、必ずしも身の回りの環境はいつも気持ち良いものばかりではありません。
友人が自分を理解してくれない、他人と意見が食い違い気まずくなる、などなど。
しかし、元来他人と私は違うもの。それを力づくで何とかしたいと思っても所詮は詮ないこと。
だからと言って相手を無視しても良い形には進みません。 なかなか難しいとは思いますが、「自分と他人は違っていて当たり前。違っているからすばらしい」と捉えてみませんか。
童謡詩人の「金子みすゞ」さんの「私と小鳥と鈴と」の終わりの部分に
「鈴と、小鳥と、それからわたし、みんなちがって、みんないい。」という句があります。
最後の「みんないい」。
この心境に学びたいものであります。


お知らせ 九月二十二日(秋分の日) 午前九時 秋季 彼岸会

平成二十八丙申長月


参考に「金子みすゞ」さんの「私と小鳥と鈴と」を掲出しておきます。
※没後五十年(1930(昭和5)年㋂10日没)と思いますが、二次的著作権の主張もあるようです。
問題が指摘されれば削除いたします。

「 私と小鳥と鈴と 」
              金子みすゞ
わたしが両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴はわたしのように、
たくさんなうたは知らないよ。

鈴と、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。