今日の女王サマ

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ちいさこべ

2005年07月25日 | 映画&本&音楽&TV
電車の中で山本周五郎の「ちいさこべ」を読みました。

火事で両親を亡くした大工の若棟梁茂次は、亡くなった両親の葬式より、この火事で一緒に亡くなった弟子の葬式を優先します。

焼け出された幼馴染のおりつも茂次の家に身を寄せますが、身寄りのない子供たち12~3人を集めて世話を焼いている様子。茂次は子供の面倒まで見るつもりはなく追い出す気でいたのですが、悪さをする子供たちのことを「町内の迷惑だ」と言われ、ヘソを曲げた茂次は成り行きで面倒を見ることになります。

その子供の中でも年かさの菊二がおりつにまとわりつき、おりつにはそれが男を感じさせて困惑します。しかし、ある夜、おりつの寝所に足音を忍ばせて入ってきた菊二は「おっかさん、おやすみなさい」と囁いて静かに部屋を出て行き、残されたおりつは自分の卑しさを恥じて涙を流すのです。
火事で焼け出された菊二が、おりつにまとわりついていたのは、死んだ母親の面影をおりつに見ていたんでしょうね。

電車の中で涙を流してしまいました。ウルウル程度ならごまかしもききますが、目頭からツツーッと流れてしまった。汗を拭くふりをして涙を拭きましたが、もうその場面を続けて読むことは出来ませんでした。

やせ我慢かもしれないけど、自分のスジを通す茂次はぶっきらぼうに見えて実は心の温かい人。常に自分のことより他人のことを優先する江戸っ子のカッコよさが小憎らしいほどです。

「ちいさこべ」でコレなら、泣けるといわれている「ちくしょう谷」ではどれほどの涙が出るんだろう。