昨年発表された、全国の公立小中学校の耐震調査結果によると、耐震化率は全国平均73.3％と前年より6.3ポイント上昇。岩手県も6.5ポイント増の73.1％と、文科省が調査を始めた2002年から順調に数字を伸ばしている。
だが、着目すべきは耐震化率の高さよりも、耐震性が不十分だったり、耐震診断を実施しない施設が依然多くある現状だろう。
そうした建物は県内では４８４棟。震度６強の地震で倒壊する危険性が高いものが７４棟もある。全国的に、進み具合に地域格差が大きいのも特徴。
要因として＜財政力の差＞が指摘されるが、学校の安全がカネ次第という状況にあるとすれば、到底見過できない。『地震大国』といわれる日本で、学校耐震化は努力目標ではなく必要条件だ。文科省指導の関連法改正により、学校施設の補強や改築に対する国庫補助は従来の２分の１から３分の２に拡充されているが、それも３年が最後。この間、自治体財政は厳しさを増す一方だ。
『東日本大震災』の例を見て判るように、地震災害の突発性は言うに及ばない。
マニフェスト（政権公約）の実行で国民の不信感を買った鳩山由紀夫前首相だが、公立小中学校を中心とした学校施設の耐震化や老朽化対策では、昨年度予算の予備費を活用して早期に実施するよう指示した経緯がある。
以前、国民の間に議論がくすぶる子供手当や高校無償化など、他の事業に比較しても耐震化の緊急性は高い。引き続き強力な支援が必要だ。
学校の耐震化は、他の施設以上に事業費がかさむ。建築物の強さを示す構造耐震化指標値で、国交省は法冷に従い０．６未満の建物を「危険」として言うのに対し、学校施設は住民の避難所となることから、文科省は０．７未満に基準を上げて耐震化を求めているからだ。
国交省は関連法を根拠に、小中学校は２階建て以上、高校は３階建て以上で延べ各１０００平方メートル以上を対象とするのに対し、文科省は２００平方メートル以上の学校施設を対象とする点も異なる。
岩手県は、防災部局が主管する「地震・津波対策アクションプログラム」を発表したが、土台となったのは０７年に県土整備部が策定下耐震改修促進計画。各施設の耐震化は学校を含め国交省基準によっている。
目標年度まで県立学校は１００％を目指す一方、私立学校や市町村の小中学校は７０％台に設定。財政規模などを勘案したにしろ、これまでは『カネ次第』を県が容認するようにみえる。
耐震化を促進する文科省の『安全・安心な学校作り交付金』が、財政的に余裕のある自治体によって他の目的に活用された実態もある。地域によっては、耐震化診断の専門家をなかなか確保できない場合もあると聞く。
国も県も、今後は耐震化が進まない地域に重点を絞り、「１００％」を目指して地域事情に応じたきめ細かい支援を強化してほしい。
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