今、東北の銀行に求められるものは何か・・・・・
300億円・・・・。
今年9月、宮城の仙台銀行に注入された公的資金の額の大きさが波紋を広げている。
これまで、公的資金の注入額というのは、概ね15年以内の返済がメドであり、収益力の逆算から見えてくることが多かったのです。
ところが、今回、この公式は当てはまらなくなったのです。
仙台銀行の最近の業績は芳しくなく、返済期限はなんと25年以内、じつに四半世紀という長いスパンを見込んでいるのです。
ここから、うかがえるのは、仙台銀行の役割です。
金融庁は「復興専門銀行」と位置づけているのです。実際、「(返済期限の)本則は15年以内だが、今回はまず自己資本の必要分だけ考え、期限ありきでは考えなかった」と説明している。
震災特例によって、今回の公的資金注入では経営責任は問われないことになっていますが、国の資本が入っている以上、自由度は縛られるのです。
その一方で、地域経済にとっては朗報もあるのです。
仙台銀行は、巨額の資本注入により貸倒引当金を積めるだけ積んで、今後に備えることができたのです。
震災後、約5ヶ月間で100億円に上ったという被災者への新規貸し付けについても、さらに積極的に取り組めるはずです。
「あとは仙台銀行が初心を忘れずに、与えられた責務をまっとうするすることができるかだ・・・」。
金融当局からはそんな釘を刺す声が聞こえてくる。
一方、その他の地方銀行を見渡すと、その動きはいかにも鈍い。
茨城県の筑波銀行が仙台銀行と同時期に公的資金の注入を受けただけ。今の時期こそスピード感が必要なだけに、肝心の東北の地銀は、原発事故の影響がそうとう及んでいるはずの福島県を含め、揃って沈黙を守っている。
4月に早々と公的資金の申請検討を表明して業界を驚かせた東北最大の七十七銀行も、その後、音沙汰はないままだ。
「いくら責任を問わないといっても、これまでの経緯を見ると地銀が信じるわけはない。強面の金融庁が経営に口だししてくるのではと恐れている。」とある日本銀行幹部は冷ややか。
問題は、地銀が萎縮することで、被災地に十分にカネが行き渡っていないのではと見られる点です。
事実、この地域の経営者のあいだからは、銀行の対応について不満の声が上がっている。
ある中小企業経営者は「震災後すぐ、利息も据え置いてもらえるよう金融機関に頼みに行ったが、受け入れてもらえなかった。仕方がないので、自宅の地震保険金を利払いに充てているが、本当なら再建のために使いたい」とため息をつく。
同様のケースは珍しくなく、「銀行は『地域と共に』とか、『地域経済を復興させよう』などど格好のいいことを言っているが、結局、儲からないところには貸さない。」(中小企業関係者)と怒りは収まらない。
それもこれも、国の経営介入を過剰に恐れるあまりに地域への金融機能を放棄しているのであれば、地銀を名乗る資格はないだろう。
(出典 週刊ダイヤモンド 2011/11/5)