元インドネシア代表監督、スリランカ代表監督(野中寿人- 66番の部屋)

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インドネシア野球 2011年回想

2011年12月31日 22時00分00秒 | インドネシア代表ナショナルチーム(国際大会など)
年の瀬にちなみ、2011年の回想と題して、インドネシア国内の野球、そしてインドネシアとして参戦する野球国際大会を振り返ってみたいと思います。



まず、インドネシア国内についてですが、2011年についてはASIANシーゲームス(東南アジア競技大会)があったため、クラブチームなどの国内トーナメントは開催されず、唯一開催されたのはインドネシア国体の予選大会のみでした。

このインドネシア国体予選では、やはり東ジャワ州代表チームが決勝に進出したことが大きなポイントに挙げられます。来年の9月に開催されるインドネシア国体の本戦で、東ジャワ州代表チームが王者ジャカルタ特別州代表チームを破ってインドネシア野球の歴史を変えられるかどうか?また、他州が進出して来るのか?
・・・どのような展開になるかが非常に楽しみなところです。

おそらく、決勝大会に出場する8州の代表チームは2012年の1月もしくは3月から強化練習を開始すると思いますので、しっかりとしたプログラムで選手を育成し、チーム編成に至ってもらいたいものです。



次に2011年のインドネシア代表ナショナルチームの総評を記してみますが、やはり2011年については思う様な向上が示されずに終わってしまったというのが本音です。

その裏付けとしては、11月に行われたASIANシーゲームス(東南アジア競技大会)で、タイ代表との延長10回7-5での勝利が確固とした証拠に挙げられます。上辺だけを見れば、タイ代表に勝ち、決勝進出を果たしているので「成功」と見なす方が居ると思いますが、それは大きな間違いです。

白倉キャサダー投手が抜けたタイ代表に対しては、普通に勝たねば駄目だと言うことです。
タイ代表も昨年のアジアカップ、アジア大会などの各国際大会を新生タイ代表として経験を積んできた成長度合いが鮮明に見られます。しかし、野球の試合で80%以上の比重を占める投手力についてはカバーしきれないという現実がタイ代表の実情なのです。

一方、10ヶ月弱の強化練習期間を設けたにも関わらず、成長をしているようで、実際にはしていなかったインドネシア代表・・・この結果が延長10回に現れています。したがって、2011年のインドネシア代表の実力は、白倉キャサダー投手の抜けたタイ代表と互角でしかないと言うことが、今大会で歴然としてしまった訳です。

過去、白倉キャサダー投手在籍時での対戦と今大会での対戦を比べてみましょう。
インドネシア代表は、過去2試合でタイ代表への失点は5点から6点です。
ただ、この失点内容はインドネシア代表にとっては最悪なコンディションでの失点になります。2007年アジアンSEAゲームスでの開幕第1戦は2年間の国際大会から遠ざかっていたブランクからいきなりの試合という部分から自エラーにて自滅を招き、そして2009年のアジア選手権大会成田ラウンドでは、チームの精神状態が連盟関係者による外部的圧迫による要因から、選手達は士気面を潰されていた状況での結果です。しかし2試合とも中盤までは1点差で食いらいついて行けたことが挙げられます。加えて得点は1点平均です。これは白倉キャサダー投手の突起した投球術によるものです。

でわ、今回の大会はどうでしょう?
延長10回で結果的に7点を奪っていますが、この勝利は延長戦突入からの特別ルール適応(ランナーを置いて攻撃を開始するルール)によるものです。白倉キャサダー投手不在のタイ代表の投手陣を考えた場合、延長に縺れ込みこと事態、打撃力の向上がなされていないことが実証されています。また、失点についても5点を献上している訳で、この部分についても投手陣の向上が非常に低いのが数字で現れています。

大会以前の段階より述べて来た様に、今大会でのインドネシア代表のポジションは、白倉キャサダー投手不在から、最悪でも2位という「安全シート/指定席として確定されていた」状態であった訳です。更には、地元開催の利点からも優勝も非常に高い確率として望めたはずです。2009年までの育成で選手個々には、今大会で優勝を獲れるだけの実力は既に備わっていました。

よって・・・
「タイ代表に勝利して喜んで良いのは選手達のみ」
「タイ代表に延長に縺れ込まれたことに対しての反省と、次年度への課題を浮き彫りにした首脳陣と組織」
・・・になるのです。
安全シートだった指定席の2位/銀メダルは当然の話しで、ましてギリギリのところで2位/銀メダルに入れた訳ですから、首脳陣と組織は決して喜べないのです。もし仮に、喜ぶのであれば基本的な思考回路の修正が必要になります。

補足説明として統括の失敗と述べた理由は次の通りです。
@10ヶ月弱という長ロングスパンの強化練習期間における、練習メニュー構成と、その目的・目標が不明確だった
@強化練習メニュー内の第1目的に入れ込んだのは「動作の矯正」になり、この習得に数ヶ月間を費やしたが、結局、選手達は個々の元の動作に戻ってしい時間的に足踏みを踏んでしまった
@強化練習内にジムトレーニングを否定して取り込まなかったがゆえに身体的なパワーUPがなされなかった
@強化練習期間中において戦略・戦術等のミーティングを行なってなかった
@対戦する各代表国チームの特徴や各データについて大会時まで入手していなかった
@新規加入の日本人監督の仕事上、代表チームの統括が3足の草鞋状態(?)で、インドネシア滞在の期間が全体の強練習期間の40%程度だった
以上が大まかな部分でのチーム編成及びチーム統括の失敗の原因に挙げられます。

加えて、今大会は今後のインドネシア野球の向上性にも大きな疑問を残した大会だったと察しています。これは、世代交代における部分で、タイ代表やフィリピン代表にも言えることですが、こと2011年の強練練習において、若手の育成がなされていないインドネシア代表にとっては非常に深刻さを増しています。

「フィリピン代表」「インドネシア代表」「タイ代表」という東南アジア上位3カ国にとっては、今後、若手の育成がどうなるかがランキングに大きく関わってきます。若手育成の投手部門に焦点を絞ってみると、やはり投手層の厚いフィリピン代表が優勢さを保持し、インドネシア代表については、エフェンディー、アクバール以下の若手投手が育ってきていないマイナス面がモロに露出してしまいます。そう言った意味からも2年後のアジアンSEAゲームスに向けての課題は計りなく大きいものとなるのです。

全ての面を総合し、2年後のミャンマー開催での第27回アジアンSEAゲームスでの3国の試合が非常に楽しみです。それぞれの母国でもないという部分からも真の実力が見られることでしょう。

そして、もう1点、最後に、2012年春に第10回アジアカップが開催される見込みです。
2つのグループに分けての開催という話になっていますが、はっきりした内容については近々分かることと思います。しかし2011年のインドネシア代表の実力を見る限り、西アジア王者のパキスタン代表には歯が立たないでしょう。また、香港などの伏兵も控えています。この部分については早急なるインドネシア代表チームの建て直しが必要になります。時間的な見解からも2012年の第10回アジアカップ参戦におけるインドネシア代表のチーム編成は非常に困難な展開になると判断します。

以上、2011年インドネシア野球の回想になります。

2012年の反省と改正材料とし、インドネシア野球の発展と向上に期待します。
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