虹はポケットの中に

再スタート
何度でも生まれ変わる
自分の音を探す旅

掌編  待ち合わせ

2014-08-06 20:42:04 | 日記
つたない掌編ですが書いてみたので・・・・


天気予報どおりの時間に雨は降りだした。
わかっていたけれど、傘を持たずに出たのは、
出がけにサトルとのメールで、待ち合わせ場所を
何処にするかで言い争いをしたせいもあるかも・・・
・・・言い訳にしかならないことは解っている
傘を持たないことを決めたのは自分。
誰のせいでもない雨・・・・
ショッピングモールの玄関で、
入るでもなく外に出るでもなく、中途半端な立ち位置で
雨に当らないように表通りの、横断歩道を
ぼんやりと見ているあたし・・・
サトルはあの横断歩道を渡って来るはず
少し遅れてくるのはいつものことだけど、今日は雨だ。
だいたいここの場所を指定したのはサトルだ。
「雨の中で女の子を待たせるなんて!」と、怒りが込み上げてきた
「カフェラテとかパンケーキとかアイスとか
イチゴたっぷりのショートケーキとか、ぜぇ~ったい
おごらせることにしたら、あたしの怒りは少し小さくなった
顔を上げると横断歩道の向こうにサトルが傘をさして立っていた
あいつ、傘をさしてるってことは雨が降り出してから
家を出たんだろう(その時点で待ち合わせの時間は過ぎている)
あたしの怒りがまた顔を出してきたけれど、
信号が変わった途端にサトルは猛ダッシュで走ってきたので
笑顔で迎えてあげよう(あたしって優しー)
サトルは息を切らしてあたしに「ちょっと遅れた?」などと平気で言う。
「ちょっとじゃなーい!」あたしはさっきまで考えていた、カフェラテとか
アイスとかパンケーキとかショートケーキとか、全部ぶちまけてやろうとしたら、
サトルは、「そんな、口を尖らせるなよ、傘、一本だから・・」と、ぐいと
手をつないであたしを傘の中に引き寄せた。そして言った
「見てごらんよ、屋根で、窓ガラスで、アスファルトの上で、きみの肩の上で
雨がうたっているよ
「手をつなごう、きみと一緒なら雨の日もうたって、あるいていけそうだから」
雨が強くなってきて、サトルはあたしの肩に手をやり、傘の中に引き寄せた
そしてそっと、指先であたしのまつ毛についた雨粒をぬぐったと思ったら
ふいにきつく抱きしめられた。その瞬間、サトルが「好きだよ」って・・・言った           

気が付くとあたしの中でカフェラテとかパンケーキとかアイスとか
イチゴたっぷりのショートケーキとか
怒りとか、全部雨に流れていた
「こんなに冷えて・・・、温かい飲みもの、ごちそうさせて」サトルが言った
あたしはサトルの腕の中から離れないように
サトルにしがみついていたら思わず口をついた
「許す。」
あたしは単純だ・・・・・

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