ローカル線を追う

身近なローカル線を点景に、沿線の風景を撮影しています。

遠州地方を湘南色が走る

2018年06月23日 | 天竜浜名湖鉄道

                   静岡新聞の記事から転載です

                  今朝の「大自在」欄に掲載された記事です。長いですが全文を載せます。

                  梅雨の合間の曇り空。くすんだ景色に濃い緑が映える。湖西市の新所原駅を出た自走式

                  車両は、じきに緑の森にのみ込まれた。行く手には単線レールがまっすぐ延びている。

                  ▼カーブを抜け、奥浜名湖が見えてきた。トンネルに差し掛かり、警笛がヒユッと鳴る。

                  出口には万華鏡をのぞいたように木々の緑が揺らいで見える。

                  ▼遠州地方の内陸を巡り、掛川市と湖西市を結ぶ天竜浜名湖鉄道。全線開通は1940年。国防上

                  の理由から東海道の迂回路「二俣線」として開設された。国鉄改革で廃止が決まったが、沿線の

                  声を背景に87年、第三セクターとして再出発した。

                  ▼経営環境は厳しく、老朽化も進む。ただ、沿線を舞台にした大河ドラマ効果などにより2017年度は

                  乗客数が上向いた。海外からのツアーコースに組み込まれ、「インスタ映え」を求めて若者が訪ねて

                  くるようにもなった。自然と暮らしが織りなす豊かな素材が新たな集客につながり始めたようだ。

                  ▼天竜川に架かる有形文化財の鉄橋を渡って2駅目。本社がある天竜二俣駅では蒸気機関車が走った

                  頃の施設が今も使われる。浜松市から磐田市、森町を経て掛川市へ。風景は里山から田んぼに変わり、

              サイクリストが「田園滑走路」と呼ぶ約3キロの直線道路が並行する。

                  ▼終点の掛川駅が近づき、車内は高校生や勤め帰りの人たちで混み始めた。天浜線が「生活の足」

                  なのだと改めて知る。車窓の向こうものどかな田園から街中の景色に変わり、ゆっくりと日常に

                              巻き戻される。たまには遠回りもいい。余韻の中で、旅は終わった。    

                                   

                     天浜線本社横の車両基地です。       



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