私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「ジャーヘッド」

2006-02-18 20:48:41 | 映画(さ行)


1991年勃発した湾岸戦争、戦場に赴いた兵士たちの真の姿を描く。
監督は「アメリカン・ビューティ」のサム・メンデス。
出演は「デイ・アフター・トゥモロウ」のジェイク・ギレンホールら。


戦争映画だが、戦場シーンよりも、戦争が起こらない状況を描いているという点で新鮮だ。

主人公たちは砂漠の真ん中で、6ヶ月も駐留することを余儀なくされるのだが、そこでの男たちの姿はアホそのものだ。やはり男は下ネタがメインになってくるのかな、と苦笑しながら思う。
けれど、さすがに半年近くも駐留していれば、そういう心境になるのもわかったりする。海兵隊に入ったのに、何もできず、恋人には逃げられてしまう。そんな状況では心が殺伐するし、どこかでストレスを発散したくなるのは無理もない。
しかもようやく戦争が始まったと思っても、主人公は最終的には何の役目を果たすこともできずに終ってしまう。ある意味、悲劇だろう。

だが本当に悲劇的で問題なのは、彼らがまったく戦争と無縁だったというわけではないことにある。
彼らが歩いている道中では黒焦げになったアラブ人の死体を見ることになるし、味方がヘリで銃撃を受けたりもする。油田に放火されるというある種、終末的な風景を見せ付けられ、確実に戦争という傷を心の中に残している。
そして、そんな風景を彼は味わっているにも関わらず、彼は最後まで何もすることができなかったのだ。それってものすごい絶望的なことでは無いだろうか。じゃあ、自分は何のためにここに来たのだろう、という話である。そこには消化不良で、自分でもうまく折り合いのつけられない思いが湧くばかりだ。

近代の戦争はハイテクになり、白兵も狙撃手も入り込む余地は残されていない。にもかかわらず、兵隊は戦場に行かねばならず、戦争という現実を見詰めなければならない。
その惨めなくらいの現実と、鬱屈を描いた佳作である。一見の価値はあるだろう。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『マルドゥック・スクランブ... | トップ | 「シャイニング」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(さ行)」カテゴリの最新記事