2007年度作品。スペイン=メキシコ映画。
孤児院で育ったラウラは、30年後閉鎖された孤児院を買取り、障害を持つ子供たちのためのホームを再建するため、夫の息子のシモンと移り住む。そこでシモンは空想上の友だちを作るようになり、ラウラは不安を覚えていく。ホームのオープンを控えたパーティの日、シモンが忽然と姿を消す。怪しい老女の訪問、屋敷の中の何者かのいる気配…胸騒ぎを覚えたラウラは我が子の行方を捜すのだったが…。
監督はこれが長編デビューのJ・A・バヨナ。
出演はベレン・ルエダ。フェルナンド・カヨ ら。
特筆すべきはやはり映画内の雰囲気だろう。
内容がホラー風味のダークファンタジーということもあって、見ていてぞわりとさせられ、どことなくこわいのである。
驚かせてびくっとさせることで、恐怖心を煽ろうというホラー映画にありがちな演出がなされていて、少しいらつくことはあるけれど、それでもこの映画を見て、こわいな、と部分部分で素直に思うことができた。
個人的には、中盤の心霊実験が特に印象に残っている。
そのシーンには、不気味な雰囲気と、感覚的に不安にさせるような空気が流れており、ああ、これはこわいなと感じることができて、なかなか楽しい。
それに、次に何かとんでもなくこわいシーンが来るんじゃないか、と身構えてしまうような演出があったのも良かった。
たとえば、日本で言うところのだるまさんが転んだのシーンや、行方不明の子どもを見つけて抱えあげた後のシーンなどは、次にどんな恐ろしい光景が待ち受けているのだろうと期待させるような部分があって、わくわくさせられる。
結果的には肩透かしだったが、そのシーンのときには、シートに座りながら、じっと体を硬くしてスクリーンに見入ってしまった。そんな感情を観客に抱かせただけでもすばらしいことだと思う。
ストーリーに関しては、いくつかつっこみたい面はある。
整合性という観点では、ベニグナの行動など意味がわからない。家に忍び込むほどの行動を彼女は取っているのに、その行動はあまりに中途半端過ぎないだろうか。それにご都合主義的な展開があまりに多すぎて結構萎える。
だがオチに関しては、してやられた感はあった。ホラーな雰囲気の中に、リアルを紛れ込ませるという演出の上手さには感心することしきり。そしてそこから立ち上がる悲劇は強く心に残るものがある。
いくつか欠点はあるが、映画の雰囲気とラストの展開により、良質の映画になりえていると感じた。個人的には好みだ。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます