2012年度作品。韓国映画。
天涯孤独の借金取り立て屋と、彼の前に現れた母を名乗る女性との交流が導く思いがけない真実を、二転三転する物語の中に描いたサスペンス。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。監督は「うつせみ」で同映画祭監督賞を受賞したキム・ギドク。出演はテレビドラマ『ピアノ』のチョ・ミンス、「マルチュク青春通り」のイ・ジョンジン。
キム・ギドクと言うと、良い意味で変態だというイメージがある。
僕は初期の作品しか見たことはないが、
「魚と寝る女」はラストの女の行動の異常さに引くし、
「悪い男」は恋愛観が屈折しているし、
「弓」のじいさんは文字通りの変態ロリコンだし、
「うつせみ」の最後はいい意味で、んな関係あるか、って内容だ。
それ以外でも、「サマリア」のようにいくらかの変化球を投げるパターンが多い気がする。
本作の「嘆きのピエタ」も普通の映画というよりも変化球系の映画とは思う。
しかし結末自体は至って普通であると感じた。そのせいで肩透かしを食った感はある。
だがそこはさすがギドク。普通であっても、きっちり内容は面白いのである。
これぞまさにキム・ギドクの力量だろう。
主人公は借金の回収を行なうチンピラだ。
この男がギドク作品らしく、実に暴力的だ。金を回収するためなら、相手を障害者にすることも辞さない。おかげで相手からは悪魔と罵られ恨まれる始末だ。
そんな彼の前に、母親だと名乗る女が現れる。
男はそれを疑うが、やがて彼女が本当に自分の母親なのだと信じるようになり、彼女に甘えるように接していく。
その設定を見たときは、つくりすぎだな、とは感じた。
だが、そんな女の行動にはちゃんとした理由があるのである。
その理由があまりにまっとうすぎて、ちょっとだけがっかりしたことは否定しない。
まっとうであることに、がっかりするのも筋違いなのだが、ギドクという監督に対する僕の良い意味での偏見だと言っておこう。
それはそれとして、主人公の母に甘える姿を見ていると、孤児だった彼は、母の愛に飢えていたことはわかる。
彼はとても暴力的な男だが、無条件で自分を包み込んでくれる母性に対し、あこがれのようなものはあったらしい。
だからいい大人なのに、子どものような態度を取る。
そしてそんな主人公の依存心こそが、女の本当の目的であることが後半になるにつれてわかってくる。
しかし主人公の男もかわいそうである。
女も、あの男はかわいそうだと叫んでいるけれど、環境もあり、彼はあそこまで冷酷にならざるをえなかったのだろう。
失うものがなかったから、たぶん暴力的にもなれたのだ。
だが守りたい者ができたことで彼は弱くなった。
そう考えると、人というものは、ある意味とても悲しいものだな、と思う。
そして真実を知ったときの彼の絶望を思うと、それもまた悲しいことだと思う。
復讐というものは実に陰惨だ。
ともあれ、人の感情と弱さがひしひしと伝わる作品であった。
ギドクのベストではないが、これもまたすてきな作品の一つである。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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