2005年度作品。韓国映画。
海の上に浮かぶ船で暮らす老人と少女。老人は17歳が近付く少女と結婚しようと考えるが、一人の青年の登場が二人の生活に嵐を引き起こす。
監督は「魚と寝る女」「うつせみ」のキム・ギドク。
出演は「清風明月」のチョン・ソンファン。「サマリア」のハン・ヨルム ら。
キム・ギドクの作品が僕は好きだ。理解できない部分も多いけれど、強い印象を必ず後に残す。そして今回もそんなギドクらしさが存分に溢れた仕上がりになっている。
この映画の中で印象的なのはやはりヒロインのハン・ヨルムだろう。
濃密にただようエロス、そして妖艶としか表現しようのないエロスの中に漂う若干の狂気を見事に表現している。特に笑顔で弓を引くシーンの恐ろしさはすさまじい。そして老人の嫉妬を煽るような行動やその時に見せる表情の変化がゾクゾクするものがある。
今回も人物にセリフがない分、彼女のまとっている雰囲気が前面に出てきて、映画を引き締めていたように思う。女優の存在と、画面から伝わるギドクの美意識とがうまくマッチしていて、優れた相乗効果をもたらしていたのが心に残る。
さて、本作最大のインパクトは何と言ってもラストにある。
映画のストーリーは自体はいたってシンプルだったはずだ。しかしラストで想像しえない展開へと突き進んでいる。
そこで描かれているはエロスの極みだ。つうかこれでR指定が付かないことに逆に驚くくらいである。
しかしそのメタファーに満ちた展開が完全には理解しきれない。意味はわかるけれど、理由がわからないのだ。もちろんそれに関して自分なりの結論は出ているのだけど、煙に巻かれているような気分に陥る。
しかしそのわからなさがたまらないから不思議なものだ。完全にこの作品は僕のツボにはまったのである。
キム・ギドクの魅力は、ストーリーを越えた雰囲気の中にあるのだろう。
それゆえにギドクは厄介なのだ。それは言語化するのが難しいものだからだ。しかしそれゆえに僕はギドク作品を愛し、この作品を傑作と呼ぶのに一切のためらいを持たない。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
キム・ギドクの映画って、暗いし、倒錯してるし、主人公があんまり喋らないし、ときどき残酷だし、基本的に意味わかんないしで、もう、大好きです!!
個人的には『うつせみ』が一番好きなんですが、『弓』もすごいですね。すっかり魅了されました。ヒロインの誘うような笑みと赤い唇がなんともエロチック。あと、全体的に寓話っぽい雰囲気ですね。
ラストは私もびっくりでした。あの最後の弓占いと関係してるのかなぁ? おそらく二人の最後は占いで予見されていて、あれが彼らにできる精一杯の愛情表現だったんじゃないかと思いました。
あと、最後に老人の深い愛情を感じました(←それまではただのエロじじいだと思ってた)。これは理屈抜きの傑作ですね。
翻訳者さんの言うとおり、暗いし、意味はわからないし、不快にもなる。
なのに、惹かれる。困ったものです。
『うつせみ』もおもしろい作品ですよね。ちょっとふしぎな感じのラストがおもしろい。
もちろん『弓』も好き。
ラストはやっぱり愛情表現ですよね。倒錯しているけれど、あれはあれで愛情かなって気がします。
弓占いのことは僕は考えていなかったので、そういう見方もあるな、って思いました。新鮮です。
ところでキム・ギドクの次回作がオダギリジョー主演で公開されます。「悲夢」というタイトルです。http://www.hi-mu.jp/
僕は確実に見に行く予定。楽しみです。
あとチェックしてるのはゲバラの2部作。ゲバラ大好きなので、今抱えてる仕事が終わったら速攻で見に行きます!!
ゲバラに関して知っていることは多くないけれど、この映画はおもしろそうで、かっこ良さそう。
僕も近々見る予定です。
にしても、本読むのめっちゃ早いですね~。感心してしまう。。宮部みゆきさんは、私も一時期ハマって、『模倣犯』まで追いかけました。その後の作品は読んでないんですが、どの作品も読み応えありますよね。個人的には『火車』が好きです。
しかしキューバまで行くってすっごい行動的ですね。本は読んでも、普通そこまでできる人はいませんもの。徹底してるっていうか、そこまでいくと何かマジで感動的ですらあります。
本を読むのは全然速くなくって、多分普通です。感想をまとめて書いて、一日一本って決めて更新しているだけです。
量を読んではいないけど、宮部みゆきって、いい作家ですよね。『模倣犯』も本当におもしろくて、去年か一昨年だか読んだ本の中では上位クラスの作品でした。『火車』は10年くらい前に読みました。これもおもしろかったですね。個人的には『理由』も好きです。