私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「うつせみ」

2006-05-07 18:37:05 | 映画(あ行)
2004年度作品。
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作。空き家を転々とする男女の旅を描く。
監督は「魚と寝る女」のキム・ギドク。
出演は元ミスコリアのイ・スンヨン、ジェヒら。


ギドクの作品は難解で、毎回観終った後にわかったような、わからないような印象を受ける作品が多かった。だけど、この作品はオチがしっかりあるせいか、ギドク作品の中では極めてわかりやすい構造になっている。

ストーリーは留守になっている家を狙っては一晩そこに住み着く青年とドメスティックバイオレンスを受ける女性との交流を描いている。二人が心を通わせあっていることはわかるし、ラストも男性が女性の所に向かうであろうことは容易に想像がつく。
しかしあのオチはさすがに想像がつかなかった。してやられた気分である。

ラストに向かうまでにこの作品にはいくつもの暴力が描かれている。加えて青年を迎え撃つ夫の方は戦う気満々で、血みどろの悲惨な結末が待っているのだろう、という予感を抱くのは自然なことだろう。
そこをあのようにはずすとはなかなかに巧妙である。ユーモアがあって(実際映画館で小さな笑いがこぼれていた)、皮肉にも溢れている。加えて少し突っ込みたくなる。すばらしい発想だ。
加えてそういう選択をした主人公の動機も映画の内容から何となくは想像がついてプロットという観点からも無理は感じさせない。

全体的に若干物足りなさは残るものの、このラストために好印象な一本となった。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

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