ぷよウリとプラモ日記【ときたまエアロ】+HIROSHIMA

完全にブログタイトルが有名無実化。
【ときたまエアロ】を追加していますが、本当に「ときたま」? そして広島へ単身赴任!

官僚たちの夏【城山三郎】

2011-05-22 12:02:42 | BOOK
城山シリーズです。



高度成長期の日本を支えてきた、官僚、キャリアと呼ばれる
男たちの仕事ぶり・哲学が描かれています。
ワシ的にいうと、官僚=「大蔵」「財務」「金融」と考えてしまいますが、
ここでの舞台は「通産省」です。そういまの経済産業省。

戦後からの奇跡的な復興を影で支えた通産官僚。
欧米からの自由主義圧力から国内産業を保護し、育成を優先させ日本を
世界トップクラスの工業国へ引き上げたのは、通産省の功績であることは
疑いのない事実。
「ノトーリアス・ミティ」と諸外国から酷評されていることがその証左。

この小説は「風越」という実力者を中心に、まさに国内産業保護と貿易自由化との
ぶつかり合いという激動の時代の中での、裏方である官僚の世界の話が進んでいきます。

「夏」というのは、ストーリーで随所にでてくる夏のシーンだけではなく、
まさに、通産官僚が幅広く活躍したこの時代を「盛夏」と看做してしるのでしょう。

事務次官まで上り詰めた「風越」であったが、部下の急逝や、政治・業界団体の反目等、ラストにかけて本人の想いとは違う方向へ、時代は流れていきます。
ラストシーンが「冬」の場面であるのは、まさに時代の流れ、通産官僚にとって活躍できた「夏」から、育成された国内産業が保護を必要としなくなり自由化へ突き進む時代をあらわしていることは印象的です。

男くさい、人間味あふれるストーリーで、官僚、政治家、業界団体等とのダイナミックな闘いが随所に出てきており、非常に興味を持って読めた一冊です。

ちなみに
ワシの属する業界、所管官庁は、このずっとずっと後に、このような時代を迎えます。
保護主義の代名詞みたいな業界さんですからね。
ちなみに、この主人公「風越」曰く、ウチの業界団体との交渉場面で、「背広を着た火星人にの群れにからかられている」だそうです。
当時はまったく自由化とは対極の位置にいたのでしょうね。
興味あるシーンでした。






落日燃ゆ【城山三郎】

2011-05-04 09:47:02 | BOOK


これを読むまで広田弘毅なる人物のことを、首相経験者でA級戦犯ぐらいにしか、知りませんでした。
(テレビドラマも見たことありません)

この小説は城山三郎の代表作になるもので、広田弘毅が悲劇の人として描かれています。

筋の通った外交官であったが、日本が戦時体制に移行するなか、時代の流れに巻き込まれ、本人の意図せぬまま裏役から表舞台へ登場することとなります。
この時代は、軍人が非常に幅を利かすなか、「背広を着たやつ」広田が軍部を抑えつつ諸外国との交渉に努めますが、軍部の暴走を抑えきれずずるずる戦争に嵌まり込む様子が描かれています。
広田は非常に筋の通った外交官であり、戦争回避に最後まで奔走する様子や、終戦後に何一つ弁明をしない姿は、本当に「A級戦犯」として処刑されるべき人物だったのか?
東京裁判はなんだったのか?と考えるきっかけとなります。

ぶれない思考、周りを見渡せる目。
文中にでてくる「50年早く生まれすぎた」とありますが、今のこの時代を考えると、「100年早く生まれすぎた」のかもしれません。
なかなか、硬派な内容でした。


・・・・・・・
ちなみに、広田自身がこのような人物だったかどうかは、さまざまな意見があるようです。
軍部を抑えられなかったのか、無作為に追認していたのか。。。

いずれにせよ、日本の「戦前・戦中・戦後史」はわれわれ日本人としてよく知っておきたいものです。



亜玖夢博士の経済入門/橘玲

2011-03-21 23:07:25 | BOOK


この人の本は面白いねぇ。
「マネーローンダリング」には感銘しましたが、今回は
深い知識とユーモアを融合させて、とっつきにくい経済学の考え方を
解説してくれます。

テーマは5つ
●行動経済学
●囚人のジレンマ(ゲームの理論)
●ネットワーク経済学
●社会心理学
●ゲーデルの不完全性定理

これらの内容を、アングラなドラマ仕立てにしてリアルに
解説されています。

多重債務者、ヤクザの縄張り争い、学校でのいじめ、マルチ等の
ちょっとブラックなネタをちょっと変わったコミカルな登場人物を
操って、上記のテーマが理解しやすく書かれています。

表紙・挿絵はちょっと小ばかにした雰囲気で、内容もドタバタしていますが、
その奥底に流れるしっかりとした理論は、さすがと感じいってしまいます。

さくっと読めて深い知識が得られるお勧めの1冊です。

競争と公平感・市場経済の本当のメリット/大竹文雄

2011-02-15 00:05:22 | BOOK
週刊ダイヤモンド 2010年のベスト経済書の第1位です。

冒頭に「日本が資本主義国の中で例外的に市場経済への拒否感が強い」と
くるので、非常に期待して読みましたが、どうも市場経済というより、
労働経済の話でした。
そう、競争とは労働に対する規制強化への反対を意味してるんですね。
労働面から切った目線は面白かったのですが、個人的には市場経済の
ことが書かれていると期待して買ったもんですから、ちょっと期待外れ。
(中身がダメとか的外れという意味じゃないよ。もっとマクロ的なものを
期待していただけ)

つーか、大竹氏は労働経済学で有名な方だそうで、最初にちゃんと調べて
買えばよかったよね。。。

ま、一つの知識として参考にします。




問題 解決力/ 飯久保 廣嗣

2010-08-28 12:36:12 | BOOK
インバスケット研修の下準備で勉強しました。

論理的な思考技術の指南書です。
日経ビジネス人文庫なんでリーズナブル且つ
コンパクトで読みやすいのでお薦めです。

内容は簡単に言うと、世の中に発生する問題に対し
行き当たりばったりや、思いつき、思考停止の状態で
解決しようとして失敗する事例を戒め、判りやすく
問題解決を指南しています。
まさに、副題「仕事の鬼ほど失敗ばかりする理由」の
とおりの内容です。

人間の頭の使い方の4つに分類しその中で15の道具を使って
解決するというものです。

<4つの思考領域>
Ⅰ.数々の問題を把握すべき状況
 =どんな問題があるのか、どれから処理すべきなのか
Ⅱ.原因を究明すべき状況
 =なぜ、問題があるのか、どう対処すべきか
Ⅲ.選択や決定をすべき状況
 =どの選択肢を選ぶのが、最も望ましいのか
Ⅳ.リスク対応が求められる状況
 =環境変化を踏まえ、将来の危険や不安にどう備えるのか

このⅠ~Ⅳの思考領域を分解したのが、以下の15の思考道具です。

<15の思考道具>
①問題の課題化
②分離・分解
③優先順位
④判断基準    ・・・以上Ⅰ
⑤分析課題
⑥情報収集
⑦原因の検証
⑧対策      ・・・以上Ⅱ
⑨決定事項
⑩選択肢
⑪マイナス要因  ・・・以上Ⅲ
⑫重大領域
⑬具体的な問題現象
⑭予防対策
⑮発生時対策   ・・・以上Ⅳ

この思考道具について、事例に照らし合わせて
丁寧に説明がなされています。

最後に「例題」がありますので、定着状況確認に
ご利用できます。


    

日本の黒い霧/松本清張

2010-07-05 00:26:40 | BOOK
学校の社会科ではさらっとしか触れない戦後史を清張が深く切り込んだ作品。1960年に文芸春秋に掲載された内容の文庫化です。
戦後のGHQ支配時代に発生した不可解な事件に対し、清張がタブーに踏み込み事実を調査し推理しています。
GHQの謀略だけでなく、過激化する労働勢力や保守勢力の闘争が描かれ、戦後の混乱の状況が生々しく伝わってきます。

現在の政治で活躍する方々の源流もこの本から読み取れるので、非常に興味深く読めました。

個人的には、この作品でも戦後の混乱の状況のごく一部しか伝え切れていないように思っています。
戦後の混乱期に力をもった上記の勢力以外にも、朝鮮や中国(共産党・国民党)なんかの勢力の影響も大きかったのでしょうが、あまり伝えられるものがありません。

よくも悪しくも、これらの影響が現在の社会に深く根付いているものですが、やはりこのような形で広く知らしめられるべきことなのじゃないのかなぁと思います。

~おわり~


マネーロンダリング入門/橘玲

2010-05-09 19:23:57 | BOOK
先日エントリーした五菱会のマネロン話の絡みです。
マネロンのみならず、国際金融詐欺、ドル基軸のポイント、
過去の国際事件の解説等、国際的な資金のポイントを上手く説明しています。

「マネロン入門」の題の割には、各章の一体感がない感じですが、それぞれの
章については、より深くかつ判りやすく解説しており、興味深い内容でした。

特にバチカンとBCCI(Bank of credit and commerce international)の話は
知らなかったことなので、へぇーって感じでした。
BCCIはワシが入社した時に破綻して、結構問題になったことは知っていましたが、
こんな背景は知りませんでした。。。

ベイジン 上・下 /真山仁

2010-04-23 00:45:04 | BOOK
文庫本化されて面白そうなので、
図書館で借りてきました。

「ハゲタカ」の真山仁の中国を舞台にした経済小説です。

中国の見栄と政治腐敗、権謀術数の渦中にいる共産党エリートと、
原子力発電所の建設の日本人エキスパートの男と男のドラマです。
日本と中国のお国柄の違い、原子力発電所建設という難事業に取り組む姿、
北京オリンピックを前に国威高揚にかける中国政府上層部とそお事業を
食い物にする利権集団。。。

経済小説ならではのあっさり感はありますが、非常に状況をリアルに
表現しています。

「毎夜生まれ、毎夜消えていくもの」
この「希望」というものに向かって、相反する二人がそれぞれのやり方で協力していく。。。
なかなかおもしろいので上下巻とも速攻で読破です。


ノンフィクション

2010-04-16 23:04:55 | BOOK
と銀行~三菱東京UFJ゛汚れ役〟の黒い回顧録/森功

世間を賑わせた三和の事件です。
さすがノンフィクションだけあって、鋭く踏み込んでいます。
バブルの残滓なんでしょう。この事件の報道されていることとは
別の側面を見た気がしました。
利権に群がるオモテとウラの人物。これらが協力して蠢いていたのが
まさにバブル時代だったんでしょうね。
大阪界隈の地上げの話とか、行政も絡んで進められたことなんか、
ホント知らなかったことが多く書かれていました。
たしかにマスコミ報道では、この巨魁が諸悪の根源で銀行が被害者の
ようになっていましたが、ここに出てくる「汚れ役」の元行員は
決してこの巨魁を非難はしておらず、この本でも、まさに銀行と
この巨魁が持ちつ持たれつの協力関係であったことにクローズアップ
しています。

あのミドリ色の銀行は、業績は急伸していましたが、当時から相当
えげつないとよく言われていましたが、これを読むと、あ~あ、なんとなく
判るって感じです。
行員の方みんながそういう訳ではないでしょうけどね。。。

タブーに踏み込んだ興味深いノンフィクションでした。。。


資本主義は嫌いですか/竹森俊平

2010-04-10 02:43:08 | BOOK
経済書です。ちょっと堅め。

3部構成で第1部は、
サブプライム問題に焦点をあて、資本主義に潜む危うさ、
リスク、不確実性の存在を解き明かし、バブル発生の
メカニズムと功罪を説いています。

2部では、サブプライム問題が発生する2年前での
学会ですでに、この状態を認識し、危険性を指摘する人物が
いたということ、その論説とそのディベートの様子が
記載されています。

3部では、今回の危機の本質的な問題、「流動性」について
述べられています。
流動性は過剰になるとバブル、ショートするとマーケット危機と
非常に重要なものですが、面白いのは昨今の時価会計がその
変動幅を拡大させた原因のひとつに挙げられていることです。

ちょっと前まで、時価会計こそグローバルスタンダードだったんですが、
ここでは、危機の要素のひとつに成り下がっています。

全体を通じて、資本主義を批判するような論調ではなく、
共産主義や社会主義であっても危機を回避し得ないとしています。

要は、資本主義は全能ではなく、資本主義に潜む危険性・不確実性を
よく認識して制御していかないということを述べられています。


表面的な事象だけでなく、古典経済書の論拠等を用いて、現状を分析
されており、深い洞察がなされていると思います。