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生活保護費 不正なくし必要な人に

2008年10月10日 | スクラップ
2008年10月08日 社説




 厚生労働省のまとめによると、二〇〇七年度(速報値)に生活保護費を不正に受給した件数は前年度に比べ千三百件増えて約一万六千件、金額は約九十二億円に上ることが分かった。

 生活保護は失職したり、病気やけがなどで仕事に就けず、暮らしが立ち行かなくなった人を支援する命綱である。

 困窮の程度に応じ、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するもので、本当に必要とされる人に支給される「セーフティーネット」といってもいい。

 それを収入があることを隠して生活扶助を受けたり、本来受給できない住宅扶助を不正に受ける人が後を絶たないというのである。

 不正受給の手口と件数はこうだ。

 まず、働いて得た収入をまったく申告しない事例が約八千九百件(全体の56%)。次に多いのが各種の年金収入を申告しない事例で約二千百件(13%)、約千八百件(12%)が収入の過少申告―だ。

 ケースワーカーが定期的に訪問しても、給与証明を改ざんしていたら不正に気づかない。不正受給者はそう考えていたのかもしれない。

 言うまでもないが、生活保護費の財源は税金である。

 本当に生活保護を必要とする人たちが受給できないのでは制度の趣旨に反するだけでなく、納税者の気持ちも踏みにじることになる。

 〇七年度には悪質なケースとして十二件を告発したが、生活保護を必要とする人を守るためにも厳正な対応を求めたい。

 生活保護は生活扶助、住宅扶助、医療扶助などが対象で、費用は国が四分の三、地方が四分の一を負担。〇八年度の予算は約二兆円である。

 支給するかどうかは、自治体が独自に判断するという。

 生活保護世帯はバブル崩壊後の一九九二年度から増加し、〇五年度に百万を突破した後も増え続けている。沖縄の場合、今年の五月時点で一万六千二百七世帯。保護費は二十七億六千九百四十一万円だ。

 保護世帯が増えたのは、六十五歳以上の高齢者世帯の増加に加えて、不況の深刻化が拍車を掛けているのは確かだ。働いても一向に収入が増えない「ワーキングプア」と呼ばれる貧困層の増加も要因とみていい。

 米サブプライムローン問題に端を発した今回の金融不況の成り行き次第では、さらに失業者が増え、生活保護世帯が増加する可能性もある。

 不正受給の数が増えたのは、福祉事務所が税務署と一緒になって受給世帯の状況をきちんと調べた結果だ。

 北海道滝川市で〇七年度から今年にかけて二億四千万円を不正に受け取った悪質な事例を考えれば、厳しい調査は欠かせない。

 ただ、精査したために受給制限や受給打ち切りにつながるようなことがあってはなるまい。

 厳格にすることで、本来保護を受けられる人たちが申請を取りやめる恐れもあるからだ。行政側はその点にも十分に気を配る必要がある。




沖縄タイムス
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