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趣味いろいろ。2014/9に別ブログを合体したので、渾然一体となってしまいました(笑)

ミュンヘン(ネタバレ)

2006-02-24 22:55:51 | 映画
いちおう冒頭でもネタバレとお断りしておきますが,最後のあのネタはさすがに伏字としておきますので,後でテレビででも,ちょっとでも観る気のある方は,そこだけはお読みにならない方が賢明かと思います。(笑)

この映画は,今年のアカデミー賞候補にもなっています。テーマは非常に重く,普段このジャンルはあまり観ないのですが,実は仕事上の関連でイスラエル人の知り合いがいるという事,トロイを観てエリック・バナに興味を持ったという事,監督はスピルバーグであり,音楽はスピルバーグ映画やその他数多くの映画,SWやハリポタの音楽で名高い,ジョン・ウィリアムズ,という辺りから,観てみる事にしました。

ただ,何故かイスラエル人には決して評価高くないんですよね。

まずは,イエメン歌謡で幕開け。う~~んイスラエルだ~という雰囲気がいきなり盛り上がります。(私はイエメン歌謡をルーツに持つ,イスラエルの超美人歌姫だった故オフラ・ハザのファンだったんですよ~)音楽は全般的にとてもよかったです。音楽が印象に残っている映画の多くはジョン・ウィリアムズなのですが,さすがだなあと思いました。

そしてまず,発端となったミュンヘン事件。折りしもトリノオリンピック真っ只中ですが,そもそも国同士の戦争に代わる物という役割を持っているはずのオリンピックで,武装テロリストが丸腰の選手を殺すなんて,ちょっと,単に許しがたいと言うだけでは済まされないほどの怒りを感じますね。

イスラエルのメイア首相,迫力ありました。(汗) 何気ないおばあちゃんのような方なのですが,眼光の鋭さが印象的でした。

主人公のアヴナーは,世界最強の諜報機関と恐れられるモサドのメンバーです。彼は,メイア首相の身辺警護の経験がある事から暗殺団のリーダーに抜擢。でも彼は,そんな恐ろしい組織のメンバーとは思えないような,普通の若い旦那さんです。この奥さんがまた,明るくて逞しい人です。奥さんの強さが,全編通じて救いでしたね。

エリック・バナは,トロイからの肉体をキープしていますね。やたらと服を脱いだシーンが多かったのがちょっとミソ(笑)です。元々はコメディアンだというのが信じられない素晴らしい演技力ですね。でもたまには彼のコメディアンな面も見てみたいなあ。シリアスな物しか観た事ありません。日本でも,コメディアンでありながら,シリアスドラマで抜群の演技力を見せる人は多いですが,笑いはあらゆる表現力を鍛える為には有効なのでしょうか。

舞台は,イスラエルからヨーロッパ。いろいろな言語が飛び交い,英語もいろいろなアクセントが飛び交いました。字幕が英語になったり,英語以外の時には字幕なしだったりとかもしましたねぇ。ちなみに字幕翻訳は例のあの人ではありませんでした。(まあ無理でしょう) エリック・バナはオージー訛りを出さず,少しはイスラエルぽい訛りをしようとしていた,かな。私もホンモノのイスラエルアクセント英語を聞いた事ありますが,俳優さん達の中には,かなりそれっぽい発音をされていた人もいました。

各国の建物を見るのは,この映画の密かな楽しみでした。ヨーロッパの建物は重厚で,レバノンの建物も独特な雰囲気。おかしかったのは,ギリシャのボロアパートです。ここまで汚いアパートがあるかって。しかし「パパ」と呼ばれる謎のレジスタンス組織のリーダーの農場は,中でも1番きれいでした。

さて,話の方ですが。。。
主人公はミュンヘン事件を起こした11人のアラブ人の暗殺を請け負い,その仕事の様子を淡々と進めていきます。仕事は表面的には成功裏に進んでいきますが,主人公はだんだんと心理的に追い詰められていきます。映画が長く,話の奇想天外さはありませんが,意外にも長くて辛いという気にはなりませんでした。それはおそらく,主人公達の誠実さが,そうさせるんでしょうかね。その途上で会う人々,敵方である人達との一瞬の触れ合いが,辛いんですよね。アヴナーと一瞬同じ部屋に同居したPLOのテロリストが,彼に(エルサレムは)何もないのにどこがいいと訊かれて,何もないがそれが全てだという意味の事を言っていました。これはご存知の方も多いと思いますが,キングダム・オブ・ヘブンでサラディンが言ったのと全く同じ。そんなに長い時間を隔てても,この問題は根本的に何も変わっていないという事です。

そして彼らが仕事を進めるその裏では,1970年代に世間を騒がせたアラブ人ゲリラの事件が報じられて行きます。実は,彼らの起こした事件は,アヴナー達がミュンヘン事件の犯人達を暗殺した事による報復だったとしています。(この辺りがイスラエル人を怒らせた原因でしょうか)スピルバーグは,この時イスラエルがした事を,決して正しいとは言いません。そこはさすがだと思いました。

結局アヴナーは,最後にテロリストのリーダーは残したものの,大方仕事は成功し,家族とブルックリンに住む事になったようです。ラストで,公園で彼に次の仕事を依頼しようとするイスラエルの高官との話が物別れに終わり,高官が立ち去る時,私はこの映画最大の恐怖を見ました。カメラが引いてバックに現れたNYの高層ビル群の中に,何とあの世界貿易センタービルが2本,くっきりと見えていたのです。これはもう明らかに,CGを駆使して,わざとそうしたに違いありません。やがてそこへ話が繋がるという事ですか。。。いや~,この映画を観た甲斐があったと思いました。(汗)


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