紙の月 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2012-03-15
「紙の月」角田光代著、読んでみました。これ、ドラマを先に見て、あら~、原田知世って全然昔と雰囲気変わらず、いい歳の重ね方しているわね~と思っていましたら、どんどんストーリー展開が面白くなってきたので、思わず原作本も購入してしまった次第です。
41歳の専業主婦の主人公が銀行パートの仕事をするようになり、1億円も横領して海外逃亡する話です。ざっくりと。
まあ、実際にはそんな話はありえんやろ~とか思うのですが、これが読み進めるうちに妙にリアルに感じられるからこの角田光代という人の筆致が素晴らしいのだと思います。
まずは、子どものいない主婦が子どもを持つか持たないかで充分に夫と話をしたいのに、のらりくらりとはぐらかす夫の態度にイラッとする箇所に感情移入。パートに出始めてからもちょいちょいこの夫と言う人物が主人公をチクチクしたりする箇所があるのですが、そのチクチクがやがてザラリとした感触に変わっていって、そして、ついには何かを渇望するようになる心理変化がとても上手く描かれています。
後は裕福ではあるけれど、基本的に孤独な老人たち(主人公が受け持つ顧客)や、何かと問題を抱えながら主人公に思いを馳せる同級生達の日常、元彼のエピソードが横軸になっていてこの物語を立体的に浮かび上がらせているのが印象的でした。
これは男性が読んでもあまり面白くないかも知れませんね、ひょっとしたら。
「私がこの世に生まれてきた意味は一体何なんだろう?」とか
「この世界に本当に私は必要とされているのだろうか?」などという疑問を持ったことのない人の方が大半だと思いますが、特に女性は主人公の考えること、感じることに共感できる部分が多いと思います。
後、「お金は怖い」と言う人もいますが、私はお金が怖いのではなく、お金によって得られる(ような気分になる)万能感(この言葉はドラマの中でも非常に印象的でした)
の方がずっと怖いと思いました。人間なんて難しいこと考えているような顔をして暮らしていますけど、札束さえあればどんどんドーパミンが放出される単純な生き物なんだなと思いましたですよ。
久しぶりにお勧めの一冊です♪
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