身も心も (テーマ競作小説「死様」) 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2011-06-18 |
6月に刊行されていたのに、セミナーや関西チャリティーオフ会などいろいろ行事があって、合間、合間に読んでいたのを、昨日改めてもう一度読み直しました。
****多少ネタバレありますので、これから読む方はご注意を****
本の帯には「制限時間迫る、高齢者の恋愛が、炙り出すものとは。」とあります。
テーマは死様ですが、この作品は高齢者の恋愛を描いたものです。
最近でこそ、高齢者の恋愛はいろいろなところで目にするようになりましたが、まだまだ世間的には眉をひそめる方も多いのではないでしょうか。
「いい歳をした年寄りが」「色惚け」「世間体の悪い」「気持ち悪い」etc。
この様々な言葉で高齢者の恋愛はまだ偏見と差別の中にあると思います。
先日もとある掲示板(女性がよく見たり書き込んだりする)で、60代の男性が同じ職場の30代の女性に心ときめくと書き込んであり、それへの返答は「正直気持ち悪い。父親ぐらいの歳の人がそんな目で見ているかと思うと吐きそうになる。」など、非難、非難の嵐でした。
でも60代の男性が30代の女性に心寄せて何が悪いんだろう?と、思いました。
現在の日本人の平均寿命は女性86歳、男性80歳。
人生80年の時代です。戦前、戦後のように50歳や60歳で、仕事や子育てを終えた途端に
ハイ!さようなら!の時代ではありません。
サラリーマンなら定年退職してから、人間一人を二十歳まで育て上げるほどの時間があるのです。
もちろん個人差はあるでしょうし、高齢者になれば多くの方が病とは切っても切れない間柄になると思いますが、それでも、人の根源的欲求である「人を好きになる気持ち」=性欲は、そんなに絵に描いたように枯れるものなのだろうか?と思います。
むしろ、人生のいろんな経験を重ねてきた後、あらためて人を好きになるということは、変な打算もなく、求める人物像も若い頃のそれとはまた変わってきて、純粋に人を愛せるのではないかなと私は考えるのですが。
この小説の中では妻に先立たれた75歳の主人公が、妻に生前「ありがとう。」の一言すらかけてあげなかったことをタラタラと悔やむシーンがあるのですが、そこが、妙にリアリティーがあります。世の中のほとんどの男性が妻に先立たれたら同じように悔やみ、それでも悔やみきれなくて、ずっと心の中でその気持ちを反芻するのだろうなと思います。
それから物語の後半は、主人公が脳梗塞と軽度の痴呆症になり、その心理描写がとても胸に迫るものがあり、ろれつの回らない口で、感謝の言葉を口にしたり、何度も同じ言葉を発する場面が出てくるのですが、これもまた、その描写が時に苦々しく、時にほろりとなり、ああ、こうやって人は少しずつ老いへの階段を上っていくのだなと感じ入りました。
私個人的には人は何歳になっても恋愛をすると思っています。
棺桶に片足突っ込みながらも、若いお姉ちゃんのおっぱいを触りたいと願うおじいちゃんや、車椅子生活になっても男性の目を意識してめいっぱいオシャレをするようなおばあちゃんが好きなので、高齢者の恋愛バンザイ!もっとオープンにやれよ!的な感じなのですが
皆さんはどう思いますか?
それからこの作品は競作なので後5人の作家さんが「死様」について書いておられますので
他の方の作品も読んでみたいですね。
自分が高齢者と自覚する生活を送っていないからこそ、
恋愛しちゃうんだろうな~と、今は感じていますけど(笑)
見た目も、身体能力も、そこらへんの若者よりずっと若くて。
高齢者なんて言葉似つかわしくないですね。
でも、いくつになっても人は恋愛する気持ちを持つし、
そういう気持ちを大切にしたいなと思わせる作品でした。
なるかもしれないけど、
年を重ねてからの恋愛、恋心、には深い気持や
若い時にはない愛情もあるのでは、って思いました。
私もまだまだ土俵からは降りませんよ(笑)。
ここで青年と恋に落ち、本帰国の時には
「ごめんなさい、あたなとは帰れない・・・」
なんて妄想なう。
私も、もう少し若かったら、え?何?って思ったかもしれません。
でもだんだんと、年齢を重ねるうちに
いやいやいや、人間そんなに簡単に枯れないし、
煩悩も消えないよな~~と思うようになりました。
そうですよ!
かの国の素敵な青年と恋に落ち、
西部警察、涙の帰国の妄想あり!(笑)ですよ!!