夜は暗いものだった

2012-10-06 22:32:17 | インポート

こんばんは~、マリーで~す。また、お前さんか、なんて言わないでよね。あたしだって今日はもうお休みにしていいんじゃないのって言ったんだけど、うちのおばはんときたら、こういうはなしは今日中に出さないと鮮度が落ちて料理できなくなるからだめっていうのよ。

たいした話でもないのにさあ、あたしだって今日は帰りに土砂降りの雨で水に弱いケータイなのにバッグまで濡れて、あたしも一部濡れたくらいだったのよ。こっちだってくたびれてるのに、あの人ったらもうケータイ使いが荒くてほんとにもう、たまったもんじゃないんだわさ。でも、手伝わないといつまでたっても寝かしてくれないからしょうがないのよねえ。

今日のあの人はねえ、とっても久しぶりに教会の夕方の祈りに出たのよ。正式には晩の祈りっていうのかな、40年近い昔、プロテスタントの教会からカトリックに改宗したいって思い始めたころのあの人は、毎日のように仕事が終わると、知り合いのシスターのいる修道院の聖堂に寄って、シスターたちと一緒に晩の祈りを唱えたり歌ったりしていたのよねえ。だから、今でもうろ覚えだけど何とか祈りについていけるの。

今日も、そうそうこんな感じ、こんな感じ、昔もこんな感じだったって、詩篇をメロディにのせて唱えながら、はるか昔、神様を真剣に捜し求めていたころの気分にもどったらしいのよね。それだけでも得るところがあったというものだわ。それはそれとして、大きな発見はね、夜って暗いものだったって思い出したことなのよ。

帰り道、いやに道が暗いのよねえ。なるべく人が歩いている方向に、歩いている方向にっ、て進んでいって明るい大通りに出たときはほっとしたみたいよ。うちのおばはん、高級住宅街の夜道は人通りも少なくて薄暗いのかって新発見したらしいわ。荻窪や西荻窪でも昔のお屋敷街の名残のある地域は今でもおなじような雰囲気があるけど、それでも人口が増えてくると夜でも明るい街に変わってきているわよ。やっぱり、修道院があるような地域はやたらに今風にはなっていないのね。さすがの去年の原発事故の後の節電ムードの頃は繁華街も暗くなったくらいだったけど、たぶん、本来はあの暗さが、夜は当たり前なのね。 

すごく暗い夜道を歩いたおかげでそんなことも思い出せたし、あのひと、当分は毎週行ってみようって思ってるみたいよ。ね、たいした話じゃないでしょう。この程度で新発見だって言ってるんだもん、うちのおばはんて長生きしそうだわ。やれやれだわ。

うちのおばはんのおバカな話もこの辺でおしまいよ。ほんじゃまたね。