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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月21日・ライプニッツの頭脳

2019-06-21 | 思想
6月21日には、哲学者ジャン=ポール・サルトルが生まれた日(1905年)だが、万能の天才ライプニッツの誕生日でもある(ユリウス暦による)。

ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツは、1646年、独国のライプツィヒで生まれた。父親は倫理哲学の大学教授だった。父親はゴットフリートが6歳のときに没し、息子は母親に教育を受けて育った。彼は父親が残した膨大な蔵書を、7歳から読みはじめた。多岐の分野にわたる蔵書の多くはラテン語で書かれていたが、12歳のころにはなんの苦もなく読めるようになっていたという。
神童として知られたライプニッツは、15歳の年に、ライプツィヒ大学に入学し、哲学を専攻した。後に法学も修めたが、学者にはならず、官吏、外交官の道を選んだ。哲学や数学、論理学、形而上学など、幅広い分野で著作をしつつ、マインツ、ハノーヴァーなどの宮廷に仕えた。ヨーロッパを広く行き来し、ニュートンやスピノザとも親交があり、微積分法の発見については、ニュートンと、その第一発見者の名誉を争った。
晩年には貴族に列せられたが、政治的な後ろ楯を失い、冷遇され、1716年11月、70歳のとき、ハノーファーで没した。葬儀は近しいものだけでひっそりとおこなわれ、没後50年以上、彼の墓には墓碑銘がなかったという。

ライプニッツは「単子論」で有名である。宇宙のすべては、モナド(単子)という最小単位のものが集まってできている。モナドは、物質の最小単位であるアトム(原子)とはちがう。モナドは、生命や精神の原理をも含む概念である。そういうところから話を進めて、ライプニッツは、宇宙や神といった大きな存在まで、この世にあるものすべてを定義づけ、体系づけていく。この考えにとても親しみを感じる。

論理学の分野では、ラッセルやホワイトヘッドが、数式のように論理を処理する記号論理学を体系化したが、それも、もともとはライプニッツのアイディアだった。

人類史上で、誰がいちばん頭がよかったか? 回答として、アリストテレス、ダ・ヴィンチ、ゲーテ、ニュートン、アインシュタインなど、いろいろな案が浮かぶけれど、正答はやはりライプニッツだろうか。なんとなれば、ほかの偉人たちの頭脳がおおよそこれくらいかなと推し量られるのに対して、ライプニッツのはいまだ誰にも見当がつけられないほど大きいから。
ライプニッツは、自分の多岐にわたる研究を、ひとつの大きな学問体系にまとめようとしたかったようだが、多忙のため、まとめきれなかった。で、書きかけのまま未完となった著作が多く、また、18世紀からずっと刊行が続けられている彼の全集は、現在いまだに刊行中で、まだ知られていない著作が山のようにあって、ライプニッツの全貌は、いまだ誰にもわからないのである。

ライプニッツが生きた時代、とくに哲学や科学の分野では、英仏が先行していて、独国は後進国扱いされていた。それで余計に、周囲に理解者がなく、苦しんだ面もあるようだ。彼を評価したのは、同国の学者より、むしろフランスの学者たちだった。
ライプニッツが、このインターネット時代に生きていたら、どんなことをしでかしただろうか、と想像すると、楽しくなる。
(2019年6月21日)



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