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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月9日・ディーン・クーンツの作法

2024-07-09 | 文学
7月9日は、ミュージシャン、細野晴臣(ほそのはるおみ)が生まれた日(1947年)だが、作家、ディーン・クーンツの誕生日でもある。スティーブン・キングなどと並ぶ、米国の飛ぶように売れるベストセラー作家である。

ディーン・レイ・クーンツは、1945年、米国ペンシルベニア州エヴェレットで生まれた。彼の父親はアルコール依存症で、息子を虐待し、よく殴りつけた。
8歳のころ、画用紙に短編小説を書いて、カラーイラストを描いた表紙を付け、ホチキスでとめ、5セントの奉仕価格で売っていたという小説マニア少年だたディーンは、 ペンシルヴェニア大学に入学した。
大学では三つの創作コースを受講したが、大学3年生のとき、雑誌が主催した全国的な大学創作コンクールに、創作コースをとった学生全員が参加しなくてはいけなくなった。
クーンツは『子猫たち』という短編を書き、それに応募した。それはショッキングな結末にいたるサスペンス小説だったが、入選5作品のなかに入った。さらにこの小説は雑誌に掲載され、はじめての原稿料収入をクーンツにもたらした。
大学卒業後、高校教師をしながら、小説を書きつづけ、23歳のとき、SF小説『スター・クエスト』でデビュー。35歳のとき、サイコサスペンス『ウィスパーズ』がベストセラーとなり、作家活動に入った。以後『ファントム』『ストレンジャーズ』『ライトニング』『ウォッチャーズ』『ミッドナイト』など、ベストセラーを書いた。

ディーン・クーンツの小説はすこし読んでいる。さすが、ショッピングモールに置かれる作家で、読みはじめたら止まらない、すごい作家である。
クーンツの『ベストセラー小説の書き方』も読んだ。具体的でわかりやすい点もさることながら、この本自体、読み出したら止められないように書いてある点がみごとである。

まだクーンツ作品を読んでいない方には、彼の処女短編『子猫たち』をおすすめしたい。小さな少女と子猫の話なのだけれど、壮絶な展開を見せる。文庫本の『ストレンジハイウェイ3 嵐の夜』に入っている。処女作にはその作家のすべてがあるとよく言われる通り、信頼と裏切り、信仰の狂気的側面、宗教や科学に見せかけた悪意、弱者の皮肉な勝利といったクーンツの傾向が詰まっている。

クーンツは、プロットを考えてから書く作家で、『ベストセラー小説の書き方』のなかで、作家はプロットが固まるまで書きだすべきでないと主張している。登場人物にまかせて筋を展開していくなど、馬鹿げている、と。
これは書き手によるようだ。たしかに三島由紀夫は最後の一行が決まるまで書きださなかったクーンツタイプだけれど、泉鏡花などは反対で、登場人物の性格設定ができたら、あとは人物の動くにまかせると言っていた。レイモンド・チャンドラーも、自分はとにかく一度書いてみないと、どういう筋になるのかわからないと言っている。
クーンツは職人肌の、まさにプロフェッショナルと呼ぶにふさわしい作家である。
(2024年7月9日)



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