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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6/3・アレン・ギンズバーグへの共感

2013-06-03 | 文学
6月3日は、 難解をもって知られる映画「去年マリエンバートで」の監督、アラン・レネが生まれた日(1922年)だが、米国の詩人、アレン・ギンズバーグの誕生日でもある。
自分は1960年代の米国史が専門だったので、60年代を学ぶ準備として、その前の1950年代のビートニクの世代についても勉強した。ビートニクとは、カフェでジャズを聴きながら、人生を憂い、倦怠している当時の若者たちといったイメージだが、その代表的詩人が、このアレン・ギンズバーグだった。

アーウィン・アレン・ギンズバーグは、1926年、米国ニュージャージー州ニューアークで生まれた。父親はロシアからのユダヤ系移民で、高校教師で、詩人だった。
貧しい環境で育ったアレンは、ニューヨークのコロンビア大学に入学。学生時代に、ビートニク作家のケルアックやバロウズらと知り合った。
大学卒業後、彼はカリフォルニア大学の大学院に入るが、そこをドロップアウトし、放浪と詩作の生活に入った。
30歳のとき、詩集『吠える』を発表。超現実主義的なイメージで、人間疎外を生み出す米国社会を告発するこの詩集により、一躍ビートニク世代のヒーローとなった。
麻薬使用による精神拡大(サイケデリック)を追求し、36歳のころには、インドへ渡り、ヴァラナシで半年ほど暮らし、ヒンドゥー教に深く親しんだ。反戦運動、公民権運動にも従事し、また英国などで詩の朗読会や芸術イベントを開催した後、1997年4月、肝臓ガンによりニューヨークのイーストヴィレッジで没。70歳だった。

彼の自由詩は、ユーモアと風刺に満ちていて、楽しい。たとえば、代表作の『吠える』のなかの詩「カリフォルニアのスーパーマーケット」の一節はこんな感じである。
「ぼくは見かけた、ウォルト・ホイットマン──子どももいない寂しい年寄りの漁り屋のあなたが、冷蔵ケースの肉をあちこち突っつきながら、店員たちに色目を使っているのを。
ぼくには聞こえた、店員のひとりひとりにあなたが訊ねているのが──ポークチョップを殺したのは誰か。バナナの代金は。君はぼくの天使かい。」(川本皓嗣訳『アメリカ名詩選』岩波文庫)

彼の詩集は、『吠える』と『アメリカの没落』を自分はすこし読んだ。
ギンズバーグは、ホイットマンの宇宙的に大きな、自由な構えで、ヘンリー・ミラーや、ボブ・ディラン、あるいはカート・ヴォネガットといった現代的、かつ原始的な巨人たちに通じる世界観を詩にして歌った人だと思う。

ギンズバーグは言っている。
「きみ自身の内なる月の光が照らすところにしたがいたまえ。狂気を隠してはいけない」
(Follow your inner moonlight; don't hide the madness. Allen Ginsberg)
これはサイケデリックなことばであり、またクエーカー的な真理を告げることばでもあって、そういう意味で、自分などは二倍、共感する。
(2013年6月3日)



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