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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5月28日・中沢新一の参加

2024-05-28 | 思想
5月28日は、007号ジェイムズ・ボンド・シリーズを書いたイアン・フレミングが生まれた日(1908年)だが、宗教学者の中沢新一の誕生日でもある。

中沢新一は、1950年、山梨で生まれた。父親は民族学者の市会議員だった。
東京大学の大学院をへて、中沢は29歳のとき、ネパールへ渡り、チベット仏教の行者に師事し、瞑想の修行をし、チベット密教について学んだ。
帰国し、33歳のとき、チベットでの体験をもとに書いた評論的エッセイ『チベットのモーツァルト』を発表。一躍、新しいアカデミズムの寵児として脚光を浴び、さかんにテレビや雑誌に東条した。
30代後半には、当時マスコミに批判されていた新興宗教団体「オウム真理教」を宗教学の立場から弁護していたが、彼が45歳の年に、オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こし、ほかにも同教団による誘拐、拉致、監禁、殺人事件が明るみに出るよおよび、中沢も批判の矢面にさらされた。
アカデミズムの世界での活動のほか、近年ではエネルギー問題、政治問題についての発言、活動もする日本を代表する知性のひとりである。
著書に『バルセロナ、秘数3』『森のバロック』『ゲーテの耳』など。

『チベットのモーツァルト』のなかに、30歳の中沢新一がチベット密教の修行をしたときの体験が書かれていて、とても興味をひかれた。
マリワナやLSDなどのドラッグを使わずに、瞑想だけで意識の深層へ入っていこうとする修行で、これを「ポワ」と呼ぶ。
「『ポワ』は『意識を身体の外に送り出し、死の状態をコントロールする』ための激しいテクニックだ。」(中沢新一『チベットのモーツァルト』講談社学術文庫)
かつて、オウム真理教の内部では、暗殺指令を下すときに、
「あいつをポワしろ」
などと、隠語として使われていたようだけれど、それはさておき、このポワの修行をしているうちに、中沢の頭のてっぺんの肉がこんもりと盛り上がってきたと書いてあって、驚いた。ああ、やはり、精神的な修行も、いくところまでいくと、その影響を受けて肉体が変化したりするのだ、と。
もっと具体的にどのようにしたのか、などの解説をもっと読みたかったのだけれど、もともと著者は修行のインストラクターではなく、思想について語る宗教学者なので、話はちがう方向へそれていってしまう。

でも、こうやってみずから参加する、自分のからだで体験しながら考える、そういう学者はすてきである。
「男は考えるだけではいけない。行動だけでもいけない。考えつつ行動する」(『ジャイアント台風』中のジャイアント馬場のことば)
(2024年5月28日)



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