1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月2日・三島海雲の慎み

2024-07-02 | ビジネス
7月2日は、一年のちょうどまん中の日。この一年折り返し点の日は、ヘルマン・ヘッセが生まれた日(1877年)でもあり、三島海雲(みしまかいうん)誕生日でもある。カルピスの創業者である。

三島海雲は、1878年、大阪府の下萱野村で生まれた。父親は浄土真宗の住職だった。
13歳で得度した海雲は、英語教師などをへて、27歳のころ、中国大陸へ渡った。当時は日露戦争が終わったばかりで、南満州鉄道株式会社が設立され、大陸進出が加速しだしたころだった。
三島は、軍部用の馬を調達するため、現在のモンゴルへ行き、現地の人々と接触した。そのとき現地で病に倒れ、死にかけたところを、現地の人にすすめられて乳酸を飲みつづけて回復した。
大陸での事業に失敗した三島は、37歳のころ帰国した。
帰国後は酸乳、乳酸菌飲料の製品開発に取り組み、39歳のとき、カルピスの前身となるラクトー株式会社を設立。
発酵クリームや、乳酸菌入りの脱脂乳、乳酸菌入りのキャラメルなどを開発、販売。しかし、なかなか売れなかった。
41歳のとき、世界で初めての乳酸菌飲料の大量生産に成功。カルピスとして発売。「初恋の味」のキャッチフレーズとともに、カルピスは大好評を博した。
89歳のとき、三島海雲記念財団を設立した後、1974年12月で没した。96歳だった。

「カルピス」という名前は、サンスクリット語の仏教語からきているらしい。三島の商売の根本には、仏教思想があって、それがカルピスにもしみわたっている。
三島はこう訓話したそうだ。
「人の短を道(い)うなかれ、己の長を説くなかれ。人に施しては慎んで、念(おも)うなかれ。施を受けては慎んで、忘るるなかれ」
「人間は正直であらねばならない。売る品物も正直でなくてはならない。ハチミツを通じて健康を売るのだから、いいものを正直に正しく売りなさい」

1991年のある日、立ち寄ったコンビニで、たまたまカルピスウォーターという缶入り飲料を見つけた。試して買って飲んでみた。すると、これがおいしくて、驚いた。
もともとカルピスは原液を薄めて作るもので、子どもの時分からいろいろな濃さのカルピスを作ってきたけれど、この味は出せないと感服した。
それから1週間続けて、毎日1本、買って飲みつづけた。知り合いの女の子にそのことを話したら、彼女は言った。わたしとおんなじ。
そのころ、証券会社の女性が言った。
「いま、カルピスの株、上がっています。カルピスウォーターのおかげで」

カルピス。あの味の底に、創業者、三島の命拾いした体験や仏教思想があるのだと思うと、また味わい深いものがある。
(2024年7月2日)



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