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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月10日・ジャン・カルヴァンの回心

2024-07-10 | 思想
7月10日は、『失われた時を求めて』の作家、マルセル・プルースト(1871年)が生まれた日だが、宗教改革者のジャン・カルヴァンの誕生日でもある。

ジャン・カルヴァンは、1509年、フランス北東部のノワイヨンで生まれた。父親はカトリック教会の司教書記で、ジャンは4人きょうだいのいちばん上だった。
彼は14歳でパリ大学に遊学し、福音主義を訴えたルターの宗教改革思想に触れた。そして24歳のころ「とつぜんの回心」を経験した。具体的にどんな体験かはよくわからないらしいが、この以来、彼は福音主義者のプロテスタントになった。
25歳のころ、プロテスタントに対する弾圧がきびしくなり、カルヴァンはスイスのバーゼルに逃げた。
27歳になる年に、バーゼルで代表作『キリスト教綱要』を発表。ジュネーヴで宗教改革運動に関わったが、市当局によって追放され、ストラスブールへ引っ越した。
32歳のころ、ふたたびジュネーヴに戻り、市長に就任。教会法を制定して教会の改革をおこない、長い期間ジュネーヴに君臨した後、1564年5月に没した。54歳だった。

カルヴァンは、人間にはそれぞれ、あらかじめ神によって予定された運命があって、永遠の生命を与えられる者と、永遠の断罪が下される者との二つに分けられていて、そこに人間の力が入る余地などない、人間はただ神に対する感謝に努めなくてはならない、という予定説を主張した。

また彼は、人間の職業は神のお召しであり、人間にできる唯一のことは、神の恩恵である職業に励むことである。商売を通じて隣人愛を実現することは可能である。として、商人が利潤を追求し、富を蓄積することを認めた。この資本主義の利潤追求の積極的な承認は、ルターとは異なる点で、このため、カルヴァンが改革を断交したジュネーヴ以外のヨーロッパの地域でも、商人たちはカルヴァンの考えを歓迎し、ネーデルランド(オランダ)、ドイツ、フランス、ハガリー、ポーランド、スコットランド、そして移民が大西洋を渡って上陸した北米に広まった。そしてさらに宣教師の活躍によって、インドネシア、韓国、ナイジェリアにおいても強い勢力をもつようになった。

資本主義の利潤追求を善とする、というか、もうお金のことしか頭にない感さえある現代の日本人も、カルヴァン派に、商売の部分だけ、すこし似ている。でも、人間はみんな神にそむいたアダムの子孫であるから、全的に堕落しているという前提の考え方や、絶対的な主権をもつ神に人間は感謝し、賛美しなくてはならないとする謙虚な考え方は、一般の日本人には縁遠い考え方であろう。現代日本人のほとんどは、カルヴァンの前に引きだされたら、火あぶりの刑を言い渡されるにちがいない。

それにしても、カルヴァンの人生を振り返ると、24歳の「とつぜんの回心」がすべての出発点であり、エネルギーの源となったわけで、人間「これだ」と思いこむことが大事で、そういうものをつかむと、信じられないような力が出るのだとわかる。
(2024年7月10日)



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