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七夕である。
織姫と彦星の、年に一度のデートの日である。
だが、彦星がなかなか来ないので、織姫は浮かぬ顔である。 |
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「年に一度しか会えない上に、時間にルーズだなんて……」 |
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「いっそ別れたほうがいいのかしら……」
歴史的カップル、破綻の危機である。 |
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そこへ現れたのが、見るからにタチの悪い若者である。
「へっへっへ……」 |
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「な、何よあんた?」 |
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「お嬢さん、一人かい?」 |
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ずかずかと上がり込む若者。
「お嬢さん、俺と遊ぼうぜ!」 |
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「や、やめてよ! 警察呼ぶわよ!」 |
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いいタイミングで、彦星が来た。
「こらっ、何をやっとるか!」 |
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「うっ、男がいたのか」 |
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「とっとと失せろ、クソカス野郎!」 |
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タチの悪い若者は、尻尾を巻いて逃げ去った。
「織姫よ、大丈夫かい」
「ありがとう彦星さん、助かったわ」 |
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「やっぱり彦星さんって、頼りになるわねえ」
織姫はしみじみ、そう思ったのだった……。 |
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「ふふっ。それほどでもないさ」 |
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―― こうして、破綻の危機は回避された。 |
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織姫と彦星は、今年もイチャイチャ過ごしたのである。 |
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だが、後刻 ――
「へっへっへ。彦星のだんな、うまくいきましたね」 |
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「うむ。中々の演技だったぞ」 |
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「また来年も頼むぞ」
「へっへっへ、お任せ下さい」 |