失踪譚 05

2009年02月03日 15時07分00秒 | B地点 おかか

 

承前


以下すべて、02月03日(節分)の写真である。

前夜に引き続き、おかか先生が元気な姿を見せてくれたので、私は安堵した。
それはいいが、この日も、おむは来なかった。
顔見知りの人が通る度に、私は事情を説明し、おむを見かけたかどうか尋ねてみたが、目撃証言は得られなかった。
ボランティアさんは、私などよりも更に広汎かつ綿密に、様々な可能性を追い、深甚な知見を操り、公的機関や私的人脈を駆使して、おむの行方を探ってくれたが、やはりこの日(03日)は見付からなかった。
聞いたところでは、この「B地点」のあたりも、急に騒がしくなってきたらしい。いつもの場所に居た猫が移動したり、いままで居なかった新顔が流入してきたり。
どうも猫たちは、その神秘的な知覚と感覚で、「春」が来たことを一斉に知り、一斉に活動し始めたらしい。 ―― あたかも、桜が咲く時はどの木も一斉に咲くように。

去勢されているとはいうものの、おむもまた、その神秘の力で、「春」を感じ取ったのだろう。そして、どこかへ出かけたのだろう。

この日の翌日、すなわち04日に、私は心を残しながらも当地を離れたが、夕刻、旅の空の下で、ボランティアさんからの電話により、おむが帰って来たことを知った。奇しくも「立春」であった。

さて! その際に聞いたところでは、今度はおかか先生の姿が見当たらないとのこと。

一泊して05日に帰った私は、翌06日と、引き続き07日の両日、「B地点」を訪れてみた。実際、おむには会えたけれども、おかか先生にはまだ会えない。(これをしたためている「今」は、07日の夜である。)

おかか先生まで「失踪」したとは言わないが、「いつもの時間にいつもの場所に居る」という冬の生活様式が脱ぎ捨てられた、ということだけは確かである。

おかか先生は、高齢だと推定されるとはいえ、未去勢であるから、発情した可能性はある。否、寧ろ、それが自然であり、そうあるべきなのだろう。

実際、昨年の春も、恋をしていたようだ。今年もまた、「春」に目覚めて、「男の旅」に出たのかもしれない。少なくとも、「いつもの時間に、いつもの場所に」は居ない以上、活発に活動しているのであろう。

私としては、今はただ、おかか先生が無事にまた姿を見せてくれることを祈るばかりである。


※ 追記 ※
おかか先生の帰還の物語はこちら