釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

山の神再考

2009-05-23 07:01:55 | 歴史
日本各地には霊峰とされる主に高い山がいくつもある。ただ東北にはさほど高くない山でも山の神が祀られている。山の神は農民のそれと、猟師や木こり、炭焼きのいわゆる山の民のそれでやや異なっているようだ。農民にとっての山の神は稲の時期になると田の神になると言う。収穫が終わると神様は再び山に戻る。どちらかと言うと農民にとっての山の神の実体は祖霊だという説が有力だそうだ。一方山の民にとっての山の神は産土神であり、山そのものを守護する神である。いずれも古来山の神は女神とされ、特に山の民の山の神は祭礼の12月12日(12日の日)は山に入ることが禁じられている。山の神がこの日は木の数を数える日だと言われている。釜石では鉱山にも独自の山の神が祀られているが他でも鉱山の山の神はまた独自のもののようだ。もともと山の神の信仰は古神道である巨石信仰の磐座(いわくら)とも関連があるものと思われる。山の神が巨石のあるところで祀られていることが多い。また山の神の祀られているところには必ず鉄剣がおかれているがこれは以前にも記したようにやはり若手の匠の方が指摘されたように密教の不動明王の降魔剣(ごうまけんー悪を祓う剣)から来ているようだ。かって修験者は真言宗系の当山派と、天台宗系の本山派があり、それぞれ拠点となる寺を持っているが、各地の霊山そのものを拠点とする国峰修験もあり、修験者つまり山伏は仏教、特に密教の影響を受けている。修験道は奈良時代に始まると言うが、山の神はそれ以前から存在したはずであり、縄文時代の巨石信仰が基盤になっているものと思われる。特に岩手の山は岩盤が多く、うっそうと茂る木々の間をよく見ると巨石が佇んでいたりすることがよくある。東北は関東以南に比べ開発がされなかったおかげでかえって古来から受け継がれて来たものがたくさん残っている。


山裾の民家で見かけた白の藤の花