今月25日、長野県北部でM5.2の地震があった。内閣府では海溝型地震である南海トラフ巨大地震や相模トラフによる首都直下型地震を、その被害の大きさから重視している。今回の長野県での地震は全長150Kmに及ぶ糸魚川ー静岡構造線断層帯で起きている。政府の地震調査研究推進本部の主要断層の長期評価では、この糸魚川ー静岡構造線断層帯での地震の発生確率では最大M8.1の地震が30~40%の確率で発生するとしている。1億3000年前、日本列島の原型はアジア大陸の東端にあり、大陸が乗るユーラシアプレートに太平洋側のイザナギプレートが押し寄せ、これにより、日本列島の原型が南北に横ずれした。この横ずれの境界が現在の、九州から四国北部を経て紀伊半島を横断し、伊勢湾を横切り、天竜川に沿って北上して、長野県諏訪湖付近で糸魚川―静岡構造線と交わる、全長1000Km以上の中央構造線である。2500万年前に日本列島の原型はアジアから離れ始めたが、この時、中央部が二つに折られる形で離れ始めた。2000万年前に日本海が広がり、南北に別れた日本列島の原型の間には日本海と太平洋を結ぶ海が存在した。500万年前になり、フィリピン海プレートが伊豆半島を伴って日本列島に近付き、300万年前に南北に別れていた日本列島が圧縮され、東日本側に続く海底が隆起し、現在の中央地溝帯フォッサマグナが形成された。この西端が糸魚川ー静岡構造線断層帯である。日本列島の原型がアジア大陸の東端で形成された後、大きく移動しているため、列島には途方も無い数の断層が形成された。確認されているものだけで20000とも言われるが、未知の地下の断層がまだまだ隠れている。日本列島の形成過程でこれだけ複雑な移動があったのは、それを引き起こしたプレート自体の複雑さがある。ユーラシアプレートと北米プレートに対して、太平洋プレートやフィリピン海プレートが潜り込む。その圧力が断層や地下のマグマに及ぶ。プレートが潜り込んでいるいるところが海溝やトラフと呼ばれている。直接的な圧力がかかるところだ。その圧力が歪みを生み、歪の解消される動きが地震となる。2011年の東北地方太平洋沖地震は、太平洋プレートによる歪の一部を解消したにすぎない。またフィリピン海プレートプレートによる歪みも解消されないまま存在する。糸魚川ー静岡構造線断層帯はまさに北米プレートとユーラシアプレートの境界だとされている。長野県北部では東日本大震災の翌日にM6.7、 2014年11月にも同じくM6.7の地震があった。江戸時代の記録では、1714年3月に同じ地域で直下型地震が起きている。死者や家屋の倒壊が多くあり、善光寺の石灯籠はほとんど倒れている。2011年の震災の後の10月13日に行われた静岡市での日本地震学会では、神戸大学の石橋克彦名誉教授が、「四国沖にかけての「南海トラフ」と中部地方を縦断する「糸魚川~静岡構造線断層帯」が連動し、M9クラスの巨大地震が起こる可能性がある」と発表されている。石橋名誉教授のGPS測定結果からの分析は現在有力となって来たアムールプレート説によっている。これまでユーラシアプレートとされて来た満州、朝鮮半島、西日本、沿海地方を含んだ地域が独立したプレートであると考えられるようになって来た。東海、東南海、南海の3つの想定震源域では、アムールプレートの下にフィリピン海プレートが潜り込んでおり、3領域で地震が連動して起こるとアムールプレート東端の糸魚川~静岡構造線断層帯のうち、長野県松本市~静岡市の部分でも地震が起きる恐れがあると言うものだ。震源域の長さは東日本大震災の500Kmを上回る700KmになるM9の巨大地震である。
獨逸菖蒲(どいつあやめ)