釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

論理の欠如による劣化

2021-01-29 19:17:39 | 社会
父親が犬が好きだったために、子供の頃から、犬はいつも家にいた。そのためか、自分も長じてからは、犬を飼うようになり、愛知県から今の岩手県の釜石へ引っ越したのも飼っていた犬たちのためであった。大型犬2匹と小型犬2匹の4頭の犬がいた。今はすべての犬がいなくなった。犬は人間よりもずっと寿命が短い。このほど米国科学アカデミー紀要PNASに「Dog domestication and the dual dispersal of people and dogs into the Americas(犬の家畜化とアメリカ大陸への人と犬の随伴拡散)」と題する英国ダラム大学Durham Universityの研究者たちによる論文が掲載された。論文によると、犬は、2万7000年~4万年前(後期旧石器時代)にオオカミの祖先から枝分かれしたが、2万3000年前にシベリアで家畜化され、1万5000万年前に人間と一緒にアメリカ大陸に進出したと言う。研究者たちは、シベリア、ベーリング海峡、北アメリカで見つかった古代人と犬の考古学的・遺伝学的調査を行った。人類は1万5000年以上前の氷河期に、ベーリング海峡がまだ地続きだったシベリアからベーリング”地峡"を通って北アメリカ大陸へ渡ったと考えられている。江戸時代に秋田孝季らが数10年の歳月をかけて資料を収集して完成された『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』などの、いわゆる和田家文書には、シベリアのバイカル湖のブリアート族の祖先がベーリング海峡を渡り北アメリカ大陸に渡ったこと、その一部がバイカル湖の故地を目指して、後に大筏で引き返し、現在の青森県に漂着したことなどが書かれている。漂着した人々が津保化族と呼ばれ、今もなお津軽には、子供を叱る言葉に「このツボケ」と罵る言葉が残っている。大筏には北アメリカ大陸の小型の馬も乗せられていたが、恐らく犬も伴っていただろう。北海道や東北の固有の犬の遺伝子も、北アメリカ大陸の古代の犬に見出された「A2b」と言う遺伝子のハプログループに属する可能性がある。日本の考古学者も現在の感染症専門家と同じく、極めて非科学的で、科学的な年代測定や発掘された古代人の人骨や動物の骨の遺伝子解析などがほとんどなされていない。亡くなった古田武彦氏は、自分が資料から考え出した仮説を実証するために、現地を訪れ、そこで新たに得られた資料から、仮説の補強を重ねる作業をおこない、「邪馬壹国」を論証し、和田家文書の資料性を説いた。論理や論証が如何なる分野でも基本である。しかし、日本と言う国は、これまでの歴史でも情緒的で、論理からはほど遠い対応をして来たことが、むしろ特徴的である。国を大きく揺るがす事態に直面した時ほど、その傾向が強い。太平洋戦争などはその顕著な例である。そして、今もまた新型コロナウイルス対応では、まさにそんな太平洋戦争時と同じような非論的対応に終始しており、泥沼に踏み込んでしまっている。論理性を欠くため、計画性が全くなく、場当たり的な対応が前面に出て、全てが後手後手である。検事出身の弁護士である郷原信郎氏は、自身のブログで、「菅内閣の感染症法改正の「迷走」、入院措置を“ブチ壊し”かねない」を書き、法的にも整合性を欠く感染症法改正について書き、本来であれば、内閣法制局の審査段階で、その不整合性が指摘されているはずだが、内閣があえてそれを排除した可能性を指摘している。本来、法的に入院しなければならないものが、罰金を払えば、入院しなくてもそれ以上は罰されないことになると言う「感染症法」の逸脱がむしろ発生するのだ。劣化した政治家の周りには劣化した専門家や官僚しかいなくなる。専門家や官僚の劣化はまさに論理の喪失である。感染の広がりを抑える名目で罰則を導入しようとしているが、その感染の広がりを助長しているのは、数少ない違反者ではなく、検査を制限し、十分な隔離・治療体制を準備して来なかった政府自身である。無症状・軽症者の早期診断を怠り、市中に潜伏させ、いつまでも感染を持続させているのだから。しかし、高齢の国会議員を抱える自民党本部では全職員のPCR検査を行うようだ。「管理職や国会議員との接触が多い職員は」すでに検査を終えている。今日の共同通信が伝えている。検査の拡大を批判しながら、自分だけは早々にPCR検査をした維新のリーダーもいた。
オナガガモ(雌)

ドル暴落予想

2021-01-28 19:17:56 | 経済
今冬は気温が例年より低いのが常態となっているため、今日のように気温がプラスの4度だと暖かくさえ感じてしまう。来週にはまた気温が下がるようだが、米国ではこの週末から週明けにかけて、中西部と北東部の州で大雪が予想されている。気温の低下はウイルスを活性化させる。日本ではあたかも緊急事態宣言で、感染者数が減少しているかのような数値の発表が続いているが、日本は特に検査数の増減に大きく左右される。国内では最大の人口を抱える東京都の数値は、日本全体の数値へも影響するが、現在、東京都は検査数は2~3日前のものを公表しており、同じ日に公表される感染者数とは、日付が異なっており、単純な陽性率は出せない。ここのところ国内でのワクチン接種予定の報道が続くが、仮にワクチンに一定効果があったにしても、今年の終わりの次の冬も新型コロナウイルス感染は続いているだろう。ワクチンにはまだまだ未知の部分が多い上、史上最大のワクチン接種プログラムも、これまでの日本の行政のあり方を考えれば、実施に混乱が発生するのは目に見えている。数や取り扱いにも注意を要する異例のワクチンでもある。恐らく東京都も政府も、オリンピックを意識して、十分に感染が抑制されないうちに緊急事態宣言を解除し、再び「GO TO 」トラベル事業の実施に向かうだろう。そもそも現在の緊急事態宣言なるもの自体が、その名に相応しくない内容でもある。それを補助する手段として、さらなる検査制限を行い、あたかも緊急事態宣言が効果を発しているかのように見せかけているに過ぎない。この姿勢こそがいつまでもウイルスを潜在させてしまうのだ。ウイルス感染の持続が、世界中で経済を悪化させ、政府や民間の債務を最大にしており、中央銀行は、悪化している経済を支える名目で、2008年のリーマン・ショックを遥かに超える金融緩和を行い、貧富の格差を拡大させ続けている。25日の米国経済情報通信社のBloombergは「The Dollar's Crash Is Only Just Beginning(ドル暴落は始まったばかり)」なる記事を載せた。執筆者は、以前、米国投資銀行モルガン・スタンレーのアジア会長をして、現在イェール大学の経済学者、スティーブン・ローチStephen S. Roach教授である。教授は昨年6月に米国メディアCNBCの「A dollar crash is virtually inevitable, Asia expert Stephen Roach warns(ドルの暴落は事実上避けられない、アジアの専門家スティーブン・ローチ氏は警告する)」なる記事で、35%のドルの暴落が避けられないと述べていた。理由は3つ挙げらていた。「史上最低水準にある貯蓄(対国民所得)」、「債務対GDP比率の急上昇」、「国際取引での経常赤字は史上最悪の見込み」である。そして、通貨は、弱い国内貯蓄を背景とした経常収支の過度な悪化のクッションとなるように出来ており、そのため、ドルの下落は不可避だと考えていると言うのだ。今回のBloombergではこの考えを踏襲しており、ドルは2021年末に3分の1に暴落するだろうとしている。米国通貨ドルの暴落は、世界中に悲惨な経済状態をもたらせる。株式をはじめとする資産バブルの崩壊だけでも計り知れない結果をもたらすが、その上ドルの暴落ともなれば、消費と輸入大国である米国に急激なインフレと金利上昇を招くばかりか、米国に世界から投じられた資金が、一気に価値を失う。日本や中国が保有する米国債も3分の1以上の価値を失うことになる。米国内の金利上昇は、米国政府や民間企業の債務不履行へと発展しかねない。その流れに日欧もが巻き込まれることになるだろう。
山茶花の蕾

ワクチン

2021-01-26 19:10:06 | 科学
現在の京都大学ウイルス・再生医科学研究所の朝長啓造教授は、2010年1月に世界的な科学誌NATUREに驚くべき論文を発表した。人類の遺伝子には、4000万年前の人類の祖先に感染したウイルスの遺伝子の一部が組み込まれていると言うのだ。1970年代に発見されたボルナウイルスで、動物の脳に感染しやすい。人の遺伝子にはすでにレトロウイルスの遺伝子が組み込まれていることは分かっていた。動物、植物、菌類などのエネルギー生産工場であるミトコンドリアも独自のDNAを持ち、やはり太古の時代に細胞内へ寄生した微生物由来のものだ。米国ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学MITの共同研究による「SARS-CoV-2 RNA reverse-transcribed and integrated into the human genome」なる先月公開された論文では、新型コロナウイルスのRNAが人の遺伝子に組み込まれる可能性が示唆されている。新型コロナウイルス感染からの回復後も長期に渡りウイルスRNAが放出されたり、再度PCR検査が陽性になることなどが多く報告されていることの説明になると言うものだ。米国スタンフォード大学出身で、AVM BiotechnologyのCEOを務めるテレサ・デイシャーTheresa Deisher博士は、外来のDNAが人や動物の細胞核に入り、遺伝子に挿入されるプロセスを研究しているが、モデルナのワクチンなどのmRNAもウイルスとほぼ同じ確率で人の遺伝子にコピーされる可能性があると述べている。1976年2月、米国ニュージャージー州の米軍基地で、19歳の二等兵が、訓練を休むほどではなかったが、訓練教官に対して疲労と体調不良を訴えた。二等兵はそれから24時間以内に死亡した。解剖の結果、死因は豚インフルエンザであることが判明した。同じ基地で、無症状ながら感染している兵士が500人以上いると分かり、医師たちは危機感を募らせた。大統領は巨費を投じて、短期間でワクチンを開発させ、8ヶ月後の10月には集団予防接種が開始された。しかし、2カ月足らずで神経麻痺を伴うギラン・バレー症候群を500人が発症し、30人以上が死亡した。4000万人の米国人が予防接種を受けていたが、結局、予防接種は中止され、感染も拡大しなかった。感染による死者は最初の1人だけで、ワクチンによる死者の方が多かった。ワクチンの場合は、薬による副作用に相当する副反応と有害事象の二つが、短期、中期、長期に発生する可能性がある。日本では、1948年から翌年にかけて、ジフテリアの予防接種で、製造企業のミスが原因で924人に健康被害が及び83人が死亡した。1989年から1993年にかけて、はしか・おたふく風邪・風疹(MMR)ワクチンの接種で、多くの子供が無菌性髄膜炎に感染し、約1800人の被害者が出た。このため、1994年の改正予防接種法では、定期接種に課せられた「義務接種」が「努力義務」へと変更された。薬は病を負う人が使うが、ワクチンは目的の感染症を予防するために健康な人が使う。いずれもが安全性が最優先される。しかし、現在の新型コロナウイルス感染症では、本来5~10年かけて開発されるべきワクチンを極めて短期間に開発している。しかも、遺伝子操作による初めてのワクチンが主流で、極めて安全性が無視された開発となっている。米国ファイザー社のmRNAワクチンなどはわずか170人での有効率95%が唱えられている。以前書いたように、この有効率なるものがまた常識的な有効率とは全く異なる概念である。ワクチンを接種しないで感染した人が162人で、ワクチンを接種したが感染した人が8人であった。(170ー8)/170=0.953となり、ここから95%が導かれている。何人ワクチンを接種し、そのうち何人が感染したかではないのだ。何人ワクチンを接種したかは関係ない。つまり極端な場合、この例では8人しかワクチンを接種せず、その8人が全て感染しても、有効率は95%である。何れにしても、この新型コロナウイルスに対するワクチンに関しては、あまりにも異常が多過ぎる。日本での唯一の国産の旧来手法の不活化ワクチンは、今年の終わりか来年はじめになりそうだが、これもまた、開発期間としては異例に短いものであることは変わりない。
鈴懸(プラタナス)

PCR検査のさらなる抑制

2021-01-25 19:15:03 | 社会
昨日、超優等生であるニュージランドで2か月ぶりに新型コロナウイルスの感染者が確認されたと保健当局が発表した。感染していた56歳の女性は、スペインとオランダを中心に欧州で4か月間過ごした後、昨年12月30日に帰国し、今月12日までオークランドにある隔離用のホテルに滞在し、その間2回の検査では陰性であった。13日にホテルを出てから、夫と共にノースランド地方を数日間旅行し、ウイルスを人に感染させる恐れがある時期に約30か所を訪れていた。検査を受ける数日前から症状があり、隔離を終えた10日後に陽性と判定されている。この女性は南アフリカで最初に見つかった変異種に感染していた。フランスのAFP通信によれば、ニュージーランドで帰国者が隔離施設を出た後に新型コロナウイルス感染症を発症したのは、これで2度目で、1度目は、昨年8月にインドから帰国した男性が、隔離施設で2回の陰性判定を受け、隔離期間を終えた5日後に発症していた。中国でも2週間の隔離期間後に発症した例があるため、今では、中国は海外からの帰国者・渡航者ともに隔離期間が3週間となった。ニュージランドの今回のケースでは、隔離中か、隔離後かに感染した可能性もあり、当局が調査しているようだ。欧州のドイツは現在の第2波のピークを先月18日の3万1553人で越え、減少しつつあるが、外出制限措置に反対する極右勢力への支持が高いザクセン州などのドイツ東部では感染が続き、死者も続出している。日本での感染は米国と同じく緊急事態宣言が実施された今月8日がピークで、以後感染者数が減少している。東京都は前日の7日がピークで以後、減少している。東京も日本全体も緊急事態宣言により、いかにも感染拡大が抑えられているように見える。しかし、感染数の減少と検査数の減少が同時に起きている。厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部はその8日付けで、各(都道府県・保健所設置市・特別区)衛生主管部(局)宛てに、事務連絡として「新型コロナウイルス感染症に関する保健所体制の整備と感染拡大期における優先度を踏まえた保健所業務の実施ついて」を配布している。東京都などは感染者の急増で、医療逼迫・医療危機に瀕していたばかりでなく、まさに保健所などの業務崩壊にも瀕していた。国はそれを避けるために業務を重症感染者に絞り込むように通達したのだ。従って、この通達を機に、PCR検査なども無症状や軽症の者には行わず、症状の重い人を優先して行うよう方針転換している。全てを行政が取り仕切るためには、保健所などの負担を軽減せざるを得ない状況にまでなっていた。感染者の追跡も減らし、現在の保健所などの人員でこなせる範囲の業務に縮小せざるを得なくなった。それまで以前以上に無症状、軽症感染者が見逃される環境になっているのが現在である。検査数の減少で、あたかも感染者数が減少したかのような印象を与え、緊急事態宣言が有効であるような印象を与えている。3月にもオリンピック開催の可否決定を迫られている政府は、それまでに何としても感染が終息している「実績」を作らざるを得ない。期待したワクチンによる「集団免疫」はとてもオリンピックまでには間に合わない。無症状や軽症からの急変を放置してでも東京都は政府同様オリンピック 開催のために、コロナ終息の「実績」を作りたいのだ。23日の毎日新聞は、自宅で療養したり、入院先などが決まらず自宅で待機したりしている間に亡くなった人が続出していることを報じ、「もはや病院だけがコロナの主戦場ではない」と東京都医師会幹部が語ったことを伝えている。日本のコロナ対策の問題は当初から無症状・軽症感染者を市中に潜伏させてしまうことであったが、最も感染者の多い東京都でその潜伏傾向をさらに人為的に高めている。これで感染が終息する訳がない。危惧されるのは、こうした市中に潜伏する感染者の体内で、ウイルスの変異が生じることである。
キンクロハジロ(雄3羽)

検査体制の充実だけが抑え込みを実現出来る

2021-01-23 19:13:10 | 科学
英国BBCは昨日「Coronavirus: UK variant 'may be more deadly'」なる記事で、英国首相が記者会見で、感染力が強いとされた英国型の変異種は、致死率も高い可能性があると述べたことを伝えた。英国では今月5日からロックダウンに入っており、そのため、8日をピークに毎日の感染者は減少傾向にあるが、それでもなお1日に4万人を超える新規感染者が出ている。しかも死者数は時差もあり増え続けており、昨日は1日で1401人となっている。英国首相は、変異種による感染後の死亡率が通常のウイルスと比較して30%高いとしたが、これに対して、WHOの疫学者、マリア・バンケルコフMaria Van Kerkhove氏は、ウイルスの感染速度が上昇し、感染が増えれば、入院も増え、医療体制が崩壊する。そうなれば死亡率も上昇するとして、変異ウイルスが致死率が高いとする首相の見解を否定している。もっとも、同氏は昨年6月、無症状感染者による新型コロナウイルス感染が「非常にまれ」だと発言して、英国ロンドン大学大学院の臨床疫学のリアム・スミースLiam Smeeth教授など、科学者から批判され、、「誤解」があったと釈明している人でもある。英国と同じく8日にピークを迎え、その後は新規感染者が減少傾向を示す米国も昨日は1日で19万2065人の新規感染者数で、昨日1日の死者数は3886人である。今月20日の米国NATIONAL GEOGRAPHIC誌はオンラインで「How good is COVID-19 testing in the U.S. right now?」なる記事を公開している。記事よれば、米国では昨年1月19日に、ワシントン州シアトル地域の救急クリニックを訪れた、中国武漢市から米国へ戻って来た男性が米国の最初の感染者であった。以来、米国ではこれまでに新型コロナ検査が3億件近く実施された。「Testing is a key component of an effective response to a respiratory disease such as COVID-19.(検査は、新型コロナウイルス感染症のような呼吸器感染症に対する効果的な反応の重要な要素である)」。これだけの件数の検査をおこなっていても、米国での検査は十分ではないようだ。当初は検査結果が出るまでに4日もかかり、圧倒的に検査数が制限されたため、日本同様に有症者に限定して検査をせざるを得なかった。検査が増えてはいるが、アリゾナ州立大学の生物医学的診断学マーラ・アスピノール教授は、なんとか間に合っている程度だと言い、現在は1カ月に約2億5000万件の新型コロナ検査が実施可能な体制だが、4月には検査能力が3倍以上に拡大し、1カ月に7億5000万件以上の検査が出来る可能性があると言う。1月7日に米国の医学雑誌に感染例の59%は無症状の感染者からのものとの発表があり、一般市民を対象にもっと幅広く検査を行うことで感染防止効果を高められるとある。新しい米国の政権では検査の拡大のために500億ドル(約5兆2000億円)の予算が準備された。米国の新大統領は、就任早々戦争時に制定された国防生産法を発令したが、何故、その中に検査キットの増産なども入れなかったのだろう。川崎重工業が検査機器大手のシスメックスなどとともに開発したロボットPCR検査装置は80分で結果が判明し、空港検疫に利用されるようだが、2018年にノーベル賞を受賞した京都大学本庶佑名誉教授は、TV番組で、「神戸の会社で開発されている自動PCR検査システムを搭載したトレーラーなら、12時間で2,500件、1,000台用意すれば1日250万件の検査が可能だ。1台1億円ほどなので、1,000億円で実現できる。無症状感染者の隔離によって、宿泊先のホテルや、食事を届ける飲食業界、生産者にもプラスになる」と述べている。日本で早々と全自動PCR検査装置を開発した千葉県のベンチャー企業プレシジョン・システム・サイエンスの装置は、当初、欧州中心に使われたが、昨年8月からは日本でも設置されるようになり、昨年末の段階で国内の受注残が100台以上だと言う。本当にオリンピックがやりたいのであれば、早くこうした検査機器を全国に導入すべきであった。早期発見・早期隔離・早期治療を達成するための最初の要がPCR検査しかないのだから。検査体制の充実が遅れれば遅れるほど、重症者を増やし、医療崩壊も招き、無駄な死者を出すことになる。「上級国民」は別なのだろうが。
内陸の冬景色

大量通貨発行が続いて行く

2021-01-22 19:20:40 | 経済
新型コロナウイルスの新規感染が米国では、減少傾向になった。今日のブルームバーグによれば「46の州で新規感染者数が減少し、そのうち42州では7日間平均が前週に比べ10%余り低下した」。そして今日のロイターによれば、中国では「中国本土で新たに確認された新型コロナ感染者は103人で、前日の144人からやや減少した。」「中国が確認された症例に分類していない無症状感染者の数は119人で、前日の113人からやや増加した。」とある。黒竜江省の省都ハルビン市のタイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと現地開発ゾーンの合弁会社が所有する食肉加工工場での47人のクラスターや、吉林省19人、上海6人、北京3人などの発生が見られている。来月迎える中国の春節(旧正月)では、交通機関の予約者が延べ人数で17億人にもなると言う。移動先での2週間の隔離が発表されたため、キャンセルが多く出る可能性はあるが、移動が大きく国内で発生するため、来月は中国で、さらに感染が拡大する可能性はあるだろう。20日に77人の新規感染者が出た香港も今週末から、九竜地区の一部で、初めて数万人単位の住民を対象としたロックダウンに入るようだ。昨日、新しく就任した米国大統領は、新型コロナウイルス対策強化のために、ワクチンの供給加速やウイルス検査の拡大のほか、マスクなどの必需品の生産量を増やすため、戦争中に制定された国防生産法(DPA)発動を含んだ10件の大統領令を発した。新大統領は、財務長官に元FRB議長のジャネット・イエレンJanet Yellen氏を指名した。今日のロイター日本語版は「焦点:イエレン氏の「大きな行動」発言に透ける、政府債務論の変容」なる記事を配した。何が変容したのか。米国だけでなく、世界的にも政府債務の多さ、特に国民総生産GDPとの比率が問題にされて来たが、19日行われた上院財政委員会の指名承認公聴会で、「イエレン氏が上院で訴えたのは、債務の水準をいったん忘れ、利払い額と財政支出がもたらすリターンにこそ目を向けてほしいという点だった。」米国政府にはすでに約26兆9000億ドルもの債務があるが、新大統領はさらに1兆9000億ドルの追加経済対策案を出しており、イエレン氏はそれを「大きな行動こそが賢明」だとして、支持した。しかし、「公聴会で共和党の財政規律重視派のジョン・スーン上院議員は、昨年に新型コロナ対策で3兆5000億ドル強の財政資金が投じられた上に、また支出しようとしていることについて「果たしてわれわれはいつ、財政が崩壊し始める地点に達するのか。私にとってそれが本当に心配なのだが、与野党の誰も、もはやまじめにそれを話そうとしない」と発言した。」とある。ただ、イエレン氏は公聴会で、企業や富裕層対象の増税の可能性にも触れている。新大統領が属する民主党では、現代金融理論MMT(Modern Monetary Theory)が支持されている。政府と中央銀行FRBが統合されたものと見れば、政府発行の国債は中央銀行が保有することで、インフレさえ回避出来れば、問題なく政府は国債を発行し続けることが可能だとする考えである。中央銀行の金融緩和は富裕者が一層富裕になると言う格差を拡大させたが、MMT支持者は、それによりすべての人に、無料の授業料、無料の育児、保証された基本収入(guaranteed basic income)、積極的な気候変動対策やメディケアに資金を提供できると主張している。米国は現在、債務対GDP比率が約130%だが、日本のそれは250%を超えるが、問題は発生していないとも主張している。本当に、日本では今後も問題は発生しないのだろうか。この30年、日本は経済成長も果たせていない。日本は景気対策として、政府が毎年のように財政支出を続けて来たが、景気はほとんど低迷状態を続けて来た。中央銀行が何年もの間、超低金利や大量通貨発行を行い、世の中の経済を刺激しようとして来たが、ほとんどその効果は出ていない。これを経済では、「流動性の罠」と呼ぶ。金利が一定レベル以下になると、中央銀行が金融緩和で世の中に流したマネーは、健全な投資に回されず、リスクのある株式などの投機回ると言うものだ。まさに日本の「失なわれた30年」がその「流動性の罠」に落ち込んでいた30年であった。米国は斜陽化しているとは言え、覇権国家である。大量通貨発行を今後さらに拡大させれば、ドルへの信認を失う可能性が高い。米国の国債の半分近くは日本と異なり海外が保有している。日本の国債以上に不安定な基盤に乗っている。他国より金利を少しでも高く保つことで、世界から資金を集め、世界が米国へ投資するためにドル買いが行われる環境を維持して来た。ドルが買われれば、ドル高を維持出来る。高いドルは消費大国でもある米国には有利である。多くのものを海外から買えることを意味する。今、そのドルが下がりつつあり、10年米国国債の金利もじわじわと上昇して来ている。コロナ禍は日米政府に大量通貨発行の口実を与えてくれた。将来の「返済」など眼中にはない。それで本当に大丈夫なのか。

ワクチンだけでは終息しない

2021-01-21 19:12:18 | 科学
大阪市立大学大学院の公衆衛生学福島若葉教授によると、2013年から2017年までの6歳未満のインフルエンザ予防接種の有効率は41%~63%であった。教授によれば、ワクチンの有効率が正しく理解されていないようで、「有効率70%」とは、「100人にワクチンを打ったら70人に効く」という解釈は間違いで、「接種なし」の者の発病率を「1」 とすると「接種あり」の者の発病率が 「0.3」 に なる場合、その差「0.7」をパーセンで表したものである。米国製薬大手ファイザーとドイツのバイオ医薬ベンチャーのビオンテックが共同開発したワクチンは有効率95%と言う驚異的な数値が発表されている。同じく米国のバイオ医薬大手のモデルナのワクチンも94.5%と言う驚異的な数値である。1月14日に米国CNNが報じた中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発したワクチンの有効率は「当初よりも大幅に低い50.38%だった」。「当初発表された78%を大幅に下回る」。ブラジルのブタンタン研究所とサンパウロ州の発表で、「全体で50.38%の有効率を達成し、軽度の症状については有効率78%、中程度から重症の症状については100%だった。いずれも世界保健機関(WHO)が定める50%以上の基準を満たしたとしている。」とある。中国シノバックのワクチンは従来手法の不活化ワクチンである。世界で最も早く、しかも急速にワクチン接種を実施したイスラエルはファイザーのワクチンを使った。12月16日から開始しているので、1ヶ月は経った。しかし、昨日の1日の新規感染者は1万0213人で、死者は101人とこれまでで最大となっている。19日の英国The Guardianは「Single Covid vaccine dose in Israel 'less effective than we thought'」なる記事で、イスラエルのコロナ対策を指揮するナフマン・アッシュNachman Ash教授が「単回投与は「私たちが思っていたよりも効果が低く」、ファイザーが示唆したよりも低いようだと述べた。」と報じている。ファイザーは単回投与が約52%有効であるとしていた。イスラエルでは新しい感染症の30%から40%が英国の変異種と見られている。18日には3ヶ月ぶりに陽性率が10%を超えている。世界五大医学雑誌の一つであるThe British Medical JournalのOpinionで、メリーランド大学准教授で同誌の副編集長のピーター・ドシPeter Doshi氏は、「Pfizer and Moderna’s “95% effective” vaccines—we need more details and the raw data」として、ファイザーとモデルナの95%の有効率に対して資料不足を指摘している。ファイザーは、170人のPCRで確認された新型コロナウイルス感染の症例を報告し、そのうちワクチン群とプラセボ群はそれぞれ8人と162人であった。これが有効率95%の根拠とされている。しかし、PCR検査では陰性であったが、新型コロナウイルス感染の症状を示した症例が合計3410例いて、そのうちワクチン群で1594例発生したのに対し、プラセボ群では1816例であったが、ファイザーはこれらの症例を排除した。新型コロナウイルス感染症状の発症に対するワクチンの有効性を概算すれば、19%でしかない。ワクチン接種から7日以内に発生した症例を取り除いたとしても、有効率は29%でしかない。同氏はこの疑問を解消するためにはデータのさらなる開示が必要だと訴えている。しかも治験の裁定についても、モデルナでは審査委員会の4人のメンバーが、モデルナ以外の大学関連の医師であったが、ファイザーでは3人の委員全てがファイザーの職員であった。感染力の強い英国タイプの変異種はすでに日本だけでなく、世界の多くの国に広がっているが、英国タイプ以上に脅威となる可能性があるのが南アフリカタイプの変異種である。今月4日のロイター通信は、「英国の科学者らは4日、南アで見つかり世界各地に感染が拡大している変異種について、新型コロナワクチンが効かない可能性への懸念を示した。」ことを報じたが、今日のロイター通信は「南アフリカで検出された新型コロナウイルス変異種「501Y.V2」には、感染後に回復した人の血液を使用する「回復期血漿療法」による抗体が効かないことが分かった。」と報じている。「専門誌に公表された論文で」、「スパイクタンパク質を標的とする現行のワクチンの効果が限定される可能性があるとした。」とある。「南アフリカで検出された新型コロナウイルス変異種「501Y.V2」」は「人の細胞に結合しやすく、感染力が従来種よりも強いことが生物学的に確認され」ている。
山茶花

基本を怠ったつけを払わされる各国

2021-01-20 19:17:30 | 社会
米国ではついに新型コロナウイルス感染による累計死者数が40万人を超えた。来月中旬までに50万人を超える可能性があると言われる。米国でも英国タイプの変異ウイルスが3月までに感染拡大することも言われている。昨年の米国人の寿命は1.13年短くなって77.48歳になったと推定されている。英国も昨日公表された死者数は1610人で、1日としては最多となり、累計では9万人を超えた。昨年11月に店舗営業などの制限措置を始めたドイツも第2波が続き、都市封鎖、ロックダウンを2月14日まで再延長すると発表した。公共交通機関の利用や買い物には新たに「医療用マスク」の着用を義務化せざるを得なくなった。通常マスクでは感染が防止出来ないことを自覚したようだ。(通常マスクに徹する介護施設や一般医療機関で何故クラスターが発生するのかを考えれば、通常マスクに期待は出来ないことぐらいは容易に分かる)ドイツの累計感染者は200万人を突破し、累計死者は4万7000人を超えている。日本は昨日、初めて1日の死者数が100人を超えたが、Google予測では、2月14日には1日で610人が予測されており、減少は見られず、増え続ける予想となっている。世界最大の人口を擁し、国土も広い中国では、武漢市のような急激な感染拡大は治まっているが、散発的には国内の2〜3箇所で感染が続いている。超優等生であった台湾でも、12日に新型コロナ患者の治療を担当する30代の男性医師の感染が明らかになり、昨日までに同じ病院で計9人の感染となった。累計868人の感染、7人の死亡である。中国や台湾では日本で言う旧正月、春節が2月11日から1週間あり、人の移動が危惧されている。すでに200万人がワクチンを接種した英国も感染拡大が続いているが、米国カリフォルニア州サンディエゴの病院でモデルナModernaの新型コロナウイルス感染症予防ワクチンmRNA-1273を接種した10人弱が重度アレルギー反応を呈したために、同州では一時、同じひとまとめ分のワクチンの使用を停止した。米国製薬企業のモデルナもファイザーもともにmRNAワクチンだが、RNAは不安定なため、RNAをシャボン玉のような薄い脂肪質で包んで体内の細胞まで運ぶ仕組みになっている。細胞に到達すればそのシャボン玉が割れてRNAが出てくるようにしなければならない高度の技術である。モデルナはその薄い脂肪質を開発したベンチャー企業の特許を買ったためにワクチンが高価になったが、-20度で保存出来るワクチンとなった。ファイザーは自社開発したため、安価だが保存に-70度の保冷庫が必要になった。日本でも早ければ来月末からワクチン接種が開始されるが、接種有効期間がわずか10日間しかなく、多くの人に接種するには、かなり蜜なスケジュールとなる。重篤な副反応が出なければいいが。ワクチンに関しては、当分静観するつもりでいる。接種するとすれば、遺伝子操作のものではなく不活化ワクチンにしたい。消防庁では、患者の搬送先が決まるまでに病院への照会が4回以上あったケースなどを「搬送が困難な事例」として、全国の52の消防機関から毎週、報告されている。それによると、今月11日から17日までの1週間では3317件と、前の週から610件増え、去年4月に調査を始めてから最多となっている。消防庁は、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、病床が逼迫していることが背景にあるとしている。今日の読売新聞オンラインは「【独自】東京都内14の特定機能病院、重症者受け入れに偏り…8病院は3人未満」なる記事を報じた。「都は重症者用として6床以上の確保を求めてきたが、1日平均6人以上を受け入れているのは2病院にとどまり、8病院は3人より少なかった。」。1000の病床と1000の医師がいる東京大学は重傷者は1名も引き受けていないようだ。東京都の専門アドバイザーの所属する国立国際医療センターすら1名程度の重症者しか受けいれていない。米国では基幹病院はコロナ患者を100人200人単位で受け入れている。厚生労働省で次官待遇の医務技監を務め、昨年のコロナ対策の実質的な「指揮官」であった鈴木康裕氏は、15日のFNNプライムオンラインで、これほどの大きな騒ぎになるとは思っていなかったこと、PCR能力を強化すべきだったことなどを「反省」している。日本は幸い2002年~2003年のSARSは免れたが、2009年には新型インフルエンザと言う感染症への対応経験はある。ここでも幸いなことに1997年の新型インフルエンザ感染は免れた。この1997年の新型インフルエンザでは、アジアを中心に世界各地で800人以上の感染が報告されが、その半数以上が死亡しているのだ。海外からの渡航者がずっと少なかった時代が幸いしたのだろう。2009年は豚インフルエンザ の変異による新型インフルエンザであり、1997年は鳥インフルエンザの変異による新型インフルエンザであった。現在、日本では昨年から、その鳥インフルエンザが大きく広がり続けており、過去183万羽の殺処分が最多であったが、それを遥かに超える600万羽もの殺処分が今回行われている。厚生労働省はこうしたアジアの感染症に何も学んで来なかったと言うことだろう。同じFNNプライムオンラインで、17日には、厚生労働大臣がなお「PCR検査は費用対効果がよくない」などと、検査には消極的な姿勢を見せている。「アメリカは2億回ほど検査を行っているはずだが、あのような状況。」と述べているが、米国の検査の実質を見ていない。以前にも書いたように、医療ガバナンス研究所の調べでは、1人の感染者を見出すための検査数では、主要国では米国は最低で日本より少ない。検査への政府の無理解が続く限り、感染抑制など望むべくもない。いつまでも無症状感染者を見逃すことになる。そしてまた、新たな変異種に遭遇することになるのだろう。

無症状感染者対策こそが基本

2021-01-19 19:10:45 | 社会
今朝起きるとまた少し雪が積もっていた。今日の釜石の気温の変化は、午前0時にプラス3度であったが、以後は日中も含めて、気温が下がり続ける変わった日になった。午前8時に−1度に下がり、昼の午後0時には-2.6度、夕方には-3.2度である。アフリカのアルジェリアでは10日に気温が下がり、13日には氷点下にもなっている。サハラ砂漠ではこの日に雪が降り、ラクダたちが雪の降った砂漠で休んでいたようだ。現首相の補佐は、首相と同じく周囲を脅して動かす国土交通省出身の補佐官と公安・警察出身の二人の官僚だけで、出てくる政策は、自己利益の追求と排除と罰則だけである。聞く耳を持たず、感染拡大を効果的に抑制する政策を打ち出せず、結局は経済も人の命も犠牲にしてしまっている。前政権も酷かったが、さらに酷い政権である。コロナ対策の分科会も最悪の分科会であるが、その分科会の意見すら聞こうとしないようだ。この組み合わせである限り、日本の新型コロナ対策には何ら期待が出来そうにない。巨額政府債務と言う財政に大きな問題を抱える日本で、せめても感染を早期に終息させて、経済対策に正面から取り組まねばならない時に、後手後手となる対策しか打ち出せない政権である。NHKによれば、厚生労働省はようやく医療機関と介護施設に対して、定期的に抗原検査を行い、感染者を早期に発見し集団感染を防ぐ方策を決めたようだ。抗原検査は精度がPCR検査より落ちるが、結果が早く出る利点はある。北海道旭川市の基幹病院を含めた二つの病院のクラスターは多くの犠牲者を出したが、現在、埼玉県の病院でもさらに大きなクラスターが発生している。病院の関係者は、東京新聞に対して、「初期の段階でこうした対策を取り、全職員のPCR検査をして無症状感染者を発見できていれば、ここまで感染は広がらなかったのではないか」と述べている。この病院では昨日で、感染者数は、医療従事者ら職員165人と患者148人で、このうち患者31人が死亡している。医療機関や高齢者施設での検査の必要性も昨年の春の時点ですでに分かっていたことだが、これもまたあまりにも遅過ぎる対応である。本当に多くの無駄な犠牲者を生んでいる。16日のCNNは、米国CDC疾病対策センターの研究者グループが、新型コロナウイルスの全ての感染事例の約59%で感染源が無症状者になっている可能性があるとする新たな調査結果を発表した、と伝えている。静岡県では海外に滞在歴がなく感染者との接触も確認されていない3人が英国タイプの変異ウイルスに感染していることが判明した。英国タイプの感染力の強い変異ウイルスの市中感染が明らかになった。想像はついていたが。静岡県だけで3人もいる、しかも無作為で検体の遺伝情報を解析したもので、恐らく、すでに変異ウイルスは全国に拡散しているだろう。政府だけでなく、東京都や大阪府、神奈川県などの大都市を抱える都府県も明かな知事の怠慢である。パフォーマンスだけが前面に出され、重要な感染対策や医療体制の準備を怠った。大阪府などは人口比では最悪の死亡率である。すでに昨春段階で医療危機が叫ばれており、夏の感染拡大もあった。何故に今になって慌てるのか。民間医療機関が協力しないなどと言う非難の矛先が間違った方向に向かう事態まで招いている。元産経新聞ロンドン支局長の木村正人氏の取材で、東京の医療従事者は「都内の病院では酸素吸入が必要なコロナ患者にしか入院は認められていないのが現状だ」と打ち明け、大阪の病院関係者は「今起きているのはまさに医療崩壊だ。コロナに感染してICUに入るのも、入院するのも、ホテルで療養するのも何もかも敷居が上がり、自宅療養が増えている。酸素吸入が少し必要な程度なら若い人は入院させてもらえない」と証言している。神奈川県では、また待機中の人が急変し亡くなっている。いつまでこう言うことを繰り返すのか。15日のロイター日本語版は、アングルで「昨秋までの成功で準備不足、強烈なコロナ第3波」を載せている。「昨秋まで新型コロナウイルスの感染者数を比較的低く抑えてきた。しかし、感染拡大が緩やかだったことが検査体制の拡充と病床の整備を遅らせ、十分な準備が整わないまま第3波を迎える要因になったと、公衆衛生当局の専門家や医師、専門家は指摘する。」とある。検査も「厚生労働省の開示資料によると、1日当たりのPCR検査数は約5万5000件と、能力の半分以下にとどまる。」状態のままである。米国や中国の1日100万件以上と比べると情けないほどの数字である。昨日のAFPフランス語版「La Chine confine 3 millions d’habitants supplémentaires(中国はさらに300万人の住民を閉じ込めている)」によると、中国保健省は月曜日に再び109人の新規感染者を報告し、その3分の1近くが北朝鮮と国境を接する吉林省で発生しており、そのため300万人がいるその地域を封鎖した。今日の上海発のロイターでは、今日は新たに118人の感染者が報告されたようで、そのうち106人が国内感染で、43人は吉林省で、35人は北京に隣接する河北省であった。ただし、中国が確認された症例に分類していない無症状感染者の数は91人で、前日の115人から減少した、とある。河北省は中国の中枢である北京に隣接しており、北京への感染を防ぐため、現在も河北省で約1250万人が封鎖対象となっている。Googleの今日の日本の予測では、来週1度ピークを迎えた後に、一度減少するが、来月上旬には再び増加に転じる予想となっている。来週ピーク時は1万3627人の1日の新規感染者数となっている。死者は2月14日の予測日まで増え続ける一方である。
今日の昼の雪

「2021年はどうやら「最悪の年」になりそうだ」

2021-01-18 19:09:39 | 経済
現政権はある意味では前政権以上に意にそぐわない者は排除する傾向が強いようだ。就任後わずか3ヶ月半で首席首相補佐官を更迭し、後手後手のコロナ対策の責任を押し付けている。感染症法改正や特措法改正でも、感染症をあぶり出して早期発見する方向とは真逆になる可能性のある罰則ありきである。しかも、入院出来ない人たちで溢れる状況で、入院拒否者の罰則を設けると言うのは、その思考力さえ疑いたくなる。仮に法が成立しても、現状では入院拒否者を入院させるだけの病床すらないのだから。共通テストでは、静かで喋ることもない試験会場で、マスクにどれほどの感染防止が有効なのか、何らデータもなく、さらには、今、あえて受験生たちを集める必要があるのか、全てが棚上げされて、「排除」が優先された。「上」の姿勢がまさにそのままトリクルダウンされる。PCR検査に難癖を付けて、検査を制限し続けることで、国が自ら感染を広げて来た。誰が考えても分かる移動促進である「GO TO」のおまけまである。コロナ禍にあって唯一、日本がワクチン接種で遅れていることが皮肉なことに救いである。遺伝子操作のはじめての米国製ワクチンでは、ノルウェーで29人、米国でも55人が接種後に亡くなっている。亡くなった10人以上の死因を調べたノルウェー政府は、ワクチンとの因果関係があると表明している。多くが高齢者であるが、まさに守られるべき高齢者が、守るべきワクチンで命を落とした。政府が予定するワクチン接種の行程は治験そのものである。感染が拡大してから政府が強権を振るうのは日本に限らない。ドイツなどは感染予防の制限措置を守らない人を収容する刑務所が作られるほどだ。主要国は全て感染症の基本を辿らず、感染を拡大させた後でロックダウンを行う、いわば猛スピードになるまでアクセルを踏み、突然急ブレーキをかけて、同乗者に衝撃を与えているようなものだ。ロックダウンは経済をも大きく落ち込ませており、米国の次期政権の国家経済会議委員長に就任する予定の資産運用会社ブラックロックの幹部ブライアン・ディーズBrian Deese氏は、昨日、米経済が「急降下」していると警告している。次期政権は1兆9000億ドル(約197兆円)規模の経済対策を打ち出している。その一方で、「米富裕層、かつてないほど豊かに-コロナ禍で貧富の差さらに広がる」をブルームバーグが伝えている。慶應義塾大学大学院小幡績准教授は一昨日の東洋経済ONLINEの「2021年はどうやら「最悪の年」になりそうだ いよいよ「バブル崩壊」の可能性が高まってきた」で、コロナについて「なぜ、アジアが欧米、南米に比べてましなのかは、理由はいまのところはっきりしない。だが、少なくとも日本は、その恵まれた状況にもかかわらず、無駄に感染を拡大し、無駄に犠牲者を出している。それは、政治、政策の混乱というよりは稚拙さであり、悲観的な見通しを持たざるを得ない。」とし、「私は、株価暴落は2022年または2023年と思っていた。下手をすると日本の財政破綻懸念台頭のほうが先ではないかと恐れていた。 しかし、違った。株価は今年暴落する。」と書いている。米国も昨年、経済対策に中央銀行の印刷する大量通貨に依存した。低迷する企業は超低金利に依存して債務を積み上げた。大手金融機関はニューヨークを逃げ出し、フロリダ州へ移転した。ニューヨークやロサンゼルスの地価が急落している。不動産関連企業や不動産を担保にして借入れを行った企業が窮地に陥り、貸し付けを行った金融機関も追い込まれている。元々、金融機関は長期の超低金利の中で利ざやが薄く、利益が圧縮されていた。米国の次期政権の中央銀行依存のさらなる「経済対策」は、株価を一度はさらに押し上げるかも知れないが、終息が見えない米国の感染拡大の中では、実体経済との乖離がますます大きくなるばかりで、バブル崩壊時の爆風を巨大にするだけである。