釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

世界最大の新空港

2017-11-30 19:13:39 | 社会
世界の人の動きの指標の一つは空港の旅客数である。カナダのモントリオールに本部を置くAirports Council International国際空港協議会によると、世界1179空港の2016年の旅客数は全世界で5.6%増、国際線旅客数は6.6%増、郵便を含む貨物は3.3%増、国際貨物は4.3%増、航空機の離発着は2.3%増となった。また、 2016年の年間旅客数では、米国ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港が1億417万人で世界最大であった。2位が北京首都国際空港となっており、3位ドバイ国際空港、4位ロサンゼルス国際空港、5位が羽田空港と続いている。20位内では日本の空港は羽田だけであるが、中国関係では8位香港国際空港、9位上海浦東国際空港、15位広州白雲国際空港が含まれている。その他アジア・中東では14位イスタンブール・アタテュルク国際空港、17位シンガポール・チャンギ国際空港、19位ソウル・仁川国際空港、20位バンコク・スワンナプーム国際空港となっている。今年7月米国の経済・金融情報配信社のブルームバーグBloombergは「Singapore and Hong Kong's Airport Dominance Is Under Threat(シンガポールと香港の空港優位は脅威にさらされている)」と言う記事を載せた。アジアではこれまで旅客機の途中給油空港として脚光を浴びて来た香港とシンガポールだが、1兆ドルに及ぶ世界の空港投資のうち半分がアジアに投資されており、中でも129億ドル規模の中国の新空港が開港し、中国の首都が世界最大級のハブ機能を持つことになる。2016年旅客数ベースで年間旅客数2位の北京首都国際空港は北京オリンピック前に改修を受けた。それでも航空機の発着数が増えて手狭になり、現在、中国では世界最大の空港建設計画が進められている。2014年から建設が始まり、2019年に開港する予定で、2004年に建築界で最も栄誉あるプリッカー賞を受賞したイラク出身の建築家ザハ・ハディドによる設計である。滑走路7本を有し、「星のイメージ」で5方向に中央からヒトデの触手のようにターミナルが伸びており、中央部を経て全てのターミナルが等距離に位置する。6つのターミナルのうち5つには全部で75ヶ所のゲートが設置され、カプセルホテルなども含まれる。北京の南46kmに建設されている新空港は、中国の「一帯一路」計画に沿った高速道路や高速鉄道などがアクセスされる。完成すると、世界最大の空港となると見込まれている。空港の旅客数はその国の経済規模を概ね表している。中国は名目GDPでは世界第2位であり、購買力平価では、すでに米国を追い越し、第1位となっている。中国も他の経済大国と同じく、大きな負債を民間部門が抱えており、いずれは金融危機に見舞われるだろうが、その後の回復を経て、IMF世界通貨基金が予想するように正真正銘の世界一の経済大国となるだろう。米国はロシアやイラン、一部は中国に対しても経済封鎖を行っているが、米国の経済封鎖は経済の壁であり、その壁は内と外を隔てる。そして、壁があれば、封鎖をされた国々はむしろ互いに手を取り合って、米国から経済的に独立したシステムを構築しようとする。現実に石油を始め、地下資源の取引などがドル以外の通貨で行われ始めている。現在の米国は世界に800もの軍事基地を展開しており、その維持に膨大なコストを要しており、軍事的にも経済的にも敵対行動を強めるほどに、逆に米国の覇権を弱体化させている。もはやかっての米国の影は消えている。

日本のエネルギー

2017-11-29 19:20:40 | 社会
日本は世界第5位のエネルギー消費国であるが、国際エネルギー機関IEAの「World energy balances (2017)」によれば、日本のエネルギー自給率は、原子力を除いて、わずか7%である。ドイツは37.1%、フランス53.8%、英国66.9%、米国88.3%であり、ノルウェーなど742.7%と言う驚異的な自給率である。2016年での再生エネルギーは全発電量の15%であり、そのうち太陽光は4.8%となっている。英国の石油大手であるBPは今年1月に、原油市場における供給余剰感が2050年まで続く可能性があると発表した。2015年から2035年までの20年間に累計で原油需要は約7000億バレルになる見込みだが、現時点で技術的に採掘可能な原油の埋蔵量は中東や旧ソ連、北米を中心に2兆6000億バレルあり、十分な余力がある。原油価格は2014年以後低下し、現在はほぼ半分の価格になっている。このためサウジアラビア始め産油国は収益が悪化し、供給量を減らして価格を維持する協定を結んでいる。化石燃料は二酸化炭素を排出するとして、再生エネルギーや自動車の電化が進められている。再生エネルギーでは太陽光を利用したソーラーパネルが普及し、日常生活の中でもしばしば目にするようになった。電化はあくまで二酸化炭素の抑制のためであり、化石燃料、特に石油が不要になるわけではない。太陽光発電機や充電池の部品は石油から造られる。2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入されてから、ソーラーパネルが普及し、2009年には5kWの太陽光発電を設置する場合、350万円近くかかっていたものが、今では150万円まで低下しているようだ。ソーラーパネルは容易に太陽光が取り込めるために建物の屋根に取り付けられることが多いが、旭硝子は透明な窓ガラスの中にパネルを貼った製品を出している。ただこの窓ガラスの太陽光発電は、ガラスをよく見ると、中に張り巡らされた線が見える。英国のケンブリッジ大学が開発したガラスは色素増感型太陽電池を取り付けて、ガラスの透明性を保持している。色素増感型太陽電池としては世界最高効率になる14.3%を達成している。太陽光の長波長成分や家の照明などを吸収して、発電される。ちなみに、一般的な屋根に設置されるソーラーパネルでは変換効率は20%である。屋根に設置されるソーラーパネルにしろ、窓ガラスタイプにしろ、問題はパネルの材料となる半導体の価格になる。現在は固定価格買取制度と言う、いわば補助金があることで普及が進んでいる。補助制度をなくすにはどうしても高効率化と半導体の低価格が必要となる。

「アベノミクスとは何か」

2017-11-28 19:13:38 | 経済
日本経済新聞は今月21日、「アベノミクスとは何か」と題する記事を載せた。「アベノミクス」の本質とは一体何なのだろうか。」と問い、「こと「経済政策」について言えば、要するに財政と金融政策のアクセルを目いっぱい踏む。これがアベノミクスの本質である。」と書いている。デフレ解消のために「2年で2%の物価上昇」と言う目標を掲げて、いわゆる異次元の金融緩和を2013年に開始した。「しかし5年経っても当初の目標「2年で2%の物価上昇」は達成される見込みがない。 にもかかわらず日本経済は、安倍政権誕生の直前12年11月を谷として、以来今年9月まで58カ月間、景気拡張が続いている。長さの上では1960年代後半の「いざなぎ景気」を越えた。物価はマネーをいくら増やしても上がらなかったが、景気は回復し、人手不足の完全雇用になった。 文字どおり「異次元」の金融緩和は確実に財政規律を緩めた。20年に基礎的財政収支を黒字化するという財政再建目標は、あっさり先延ばしされた。」「伸びきった財政と金融政策で、来たるべき景気後退にどのように対処するのか。それは「ポスト・アベノミクスで宜しく」、では無責任ではないか。」と訴えている。昨年3月まで日本銀行審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授によれば、「そもそも金融緩和とは、景気後退局面に民間の活動が弱るため、中央銀行が低金利によって需要を拡大して助けること。景気が今のようによくなれば、当然金融緩和は縮小していくのが本来。」と言われる。賃金の上がらない庶民には「いざなぎ景気」を超える景気拡大など実感を得られないが、株式や債券、大都市部の不動産などは高騰しており、巨大輸出企業は最高益を得ている。本来景気後退期に実施される金融緩和を、景気が長期に持続しているならば、何故、継続し続けているのか。EUの中央銀行ECBや米国の中央銀行FRBは金融緩和を手仕舞いしようとしている中で、日本銀行だけが金融緩和を持続させている。日本銀行の金融緩和はそもそも景気の浮揚とは何も関係ない。まさしく政府の財政赤字を支えるための金融緩和である。マネタイゼーションと言われる、中央銀行が国債を引受け、政府の財政赤字を埋めることが目的である。日本銀行が政府の発行した国債を買い取ることで、国債金利を下げ、政府負担を軽減させている。しかし、負担が軽減された政府は財政を立て直ししようともせず、むしろ財政を拡大させ、政府債務をさらに積み上げている。まさに日本経済新聞が指摘する通り、「無責任」そのものである。日本銀行のこうした異常な金融緩和はいつまでもは続けられない。早稲田大学の岩村充教授は、「出口を語らない日銀を注視する人々が、日銀は出口を語らないのではなく、実は語ることができないらしい、日銀はゼロ金利と国債引き受け同然の政府債務ファイナンスを永遠に続けるだろう、そう思い始めたとき、日本の危機が始まる。」と最近の週刊エコノミストで語っている。ひとたび「景気」が悪化すれば、日本銀行がその時こそ実施しなければならない金融緩和の余地が、アクセルを踏み過ぎているため、残されていない。超低金利の長期持続により、市中金融機関の利益は圧迫され、大銀行のリストラや地方銀行の合併が進んでいる。預金者の預金も本来得られる利息が得られず確実に減価している。

自己価値を脅かす漠然とした予感

2017-11-27 19:15:29 | 文化
釜石の朝6時はまだ多少薄暗さが残る。飼っていた犬が死んでからは、甲子川沿いの朝のウォーキングが習慣になった。気温は0度近いので、首にマフラーを巻き、手袋をしていないと、途中で辛くなる。いつも決まった川の位置に白鷺やカモたちがいる。せせらぎの音を聴いていると、癒される。遠くに見える愛染山も山頂付近はすっかり雪を被った。毎日ウォーキングをやっていると、必ずと言っていいほど決まった人とすれ違う。互いに軽く挨拶を交わす。歩きながら周辺の山々を見ていると、山の木々の葉の色の移り変わりや落葉の様子が分かる。 人は様々な理由で不安にとらわれることがある。不安にとらわれると、睡眠さえ妨げられることがある。心理学では不安は「自己価値を脅かすような破局や危険の漠然とした予感」と言うそうだ。まさに「漠然」としているが故に、解決のしようがないのが不安である。それがために、眠れぬ夜を過ごさざるを得なくなることさえある。「自己価値を脅かす」と言う時の「自己価値」とはすなおに考えれば、そのまま「自己」の価値と言うことになる。単純に自分自身とも言えるのかも知れない。人はたった一人で孤島に生きているわけではないから、あくまで一般的には社会的存在である。つまり、他人との関係の中で、自分と言うものが明確になる。高齢者の病への不安も、病を通していつ訪れるかも知れない死への不安、あるいは、あくまで病を負った状態での社会的生活に対する不安と言うことになる。自分以外の他者との関係が絶たれたり、関係そのものに不安を抱く。他者は家族の一員であったり、全くの他人であることもある。先でどうなるのかはっきりしないことが不安を駆り立てる。不安自体は現在のものだが、それを引き起こしているものは未来に属することになる。将来がどうなるのか分からないことが不安の正体なのだろう。あるいはそれを今の自分ではどうにも解決のしようがないことが不安と言う感情を惹き起こさせると言えるのかも知れない。自分が無力であることを認識させられることが不安を引き起こすと言うことだろう。自分が決め、自分で実行可能な場合には、決して不安は生じない。不安は漠然としているため、強烈なストレスではないが、あくまでマイナスの感情であり、むしろ長く心のストレスとして持続する。それは先で明確な形が現れて初めて何らかの解消に繋がるのかも知れない。


インフレにならない理由

2017-11-25 19:15:03 | 経済
企業が産み出した新たな価値のうちどれだけが賃金に回されるかを表しているのが労働分配率である。簡単に言えば労働者の取り分である。この労働分配率は1980年以後、世界的にも低下傾向になっているが、日本ではこの30年で20%も低下しており、アベノミックス以後はさらに低下している。企業寄りの日本経済新聞すら、2016年9月3日には「労働分配率66.1% 低水準に 昨年度、内部留保は最高 」と題する記事を載せたくらいだ。新たな富は企業に多く残され、労働者へは減らせて来た。一方で、日本や欧米、中国の中央銀行は通貨を増刷した。米国FRBが4.4兆ドル(484兆円)、欧州ECB4.4兆ドル(484兆円)、中国人民銀行が4.7兆ドル(517兆円)、日銀が4.5兆ドル(495兆円)である。これまでの経済学では、中央銀行の通貨の増刷は、インフレを招くとされて来た。日本円の増刷は円の価値を下げると言うことだ。しかし、現実にはインフレは起きていない。新たに産み出された富が企業に多く残され、実質賃金が低下すれば、消費は増えない。増えない消費ではインフレは起きにくい。さらに、増刷された通貨は株式や債券、不動産などの資産バブルに向かい、日本の超低金利がより金利の高い米国への投資に向かわせたために、増刷された通貨は国外へ出てしまった。これにより、国内ではインフレはさらに起きない。日本銀行の異次元緩和前の2012年末の日本の対外資産は661兆円であったが、今年10月には1000兆円を突破した。5年間で約2倍である。日本銀行の増刷による溢れた資金はより金利の高い米国へ流れた。日本銀行は超低金利により、日本の政府債務と日米の株式や債券を支えている。金融危機で実行される中央銀行の通貨の増刷や低金利が、金融危機が過ぎても継続されて来た。そのため巨大な資産バブルを生み出している。世界的な労働分配率の低下は、消費の増加に繋がらないため、製造産業は設備投資は最小限に絞っている。物が売りにくい状況で、企業は業績をよく見せるためにも自社の株が上がるように自社株買いにも走る。現在の特に米国の資産バブルは歴史始まって以来の規模に膨らんでいる。にもかかわらず、一部の警告を無視して、楽観主義がまかり通り続けているのが、今の経済状態だ。いずれ遠くない時期に巨大なバブルは世界の経済を破壊するほどの崩壊を見せるだろう。資産を買い入れている日本銀行や年金基金、ゆうちょなどの政府系金融機関も当然巨大な損失を抱えることになる。

地球の自転速度と大地震

2017-11-24 19:18:27 | 科学
地球はそれ自身が1日で回転している。いわゆる地球の自転である。さらに地球は自転しながら、太陽の周りを1年かけて回っている。公転と呼ばれるものだ。地上にいて止まっているように見えても、実際にはかなりのスピードで回る地球に「乗車」しているだけである。半径が最大になる赤道上では、自転のスピードは時速1674Kmにもなる。音速ではマッハ1.37になる。もっとも、日本の緯度だと時速1350km前後だが。これが公転速度となると、時速では10万7280kmと言う途方もないスピードになる。音速に換算するとマッハ 87.58となる。自転により現在は1日が24時間とされているが、恐竜が生きていた時代には1日は22.5時間だったそうだ。今月20日付けの米誌Forbesは「Earth's Rotation Is Mysteriously Slowing Down: Experts Predict Uptick In 2018 Earthquakes(地球の回転は不可思議な減速をしている:専門家は2018年の地震の増加を予測)」と題する記事を載せている。現在の地球物理学ではミリ秒単位まで正確に地球の回転速度が計算出来る。地質学研究者たちが1900年以後のM7.0を超える地震を分析したところ、およそ32年ごとに世界中の重要な地震の数が増えていた。彼らはそれを多くの世界的な歴史的データセットと比較し、地震の増加と強い相関関係を示したものは1つしか見つからなかった。それは地球の回転の減速であった。25〜30年おきに、地球の回転が減速し始め、地震の直前にその減速が起きていた。回転の減速は5年間持続していた。地球の自転の減速は2014年から観測されており、2018年がこれまで通りであれば、最後の減速の年となる。過去1世紀の傾向から、地質学者たちは通常15〜20の大きな地震(M 7.0以上)があるが、地球の回転の減速の5年目には平均で25-30の大地震があり得ると考えている。ただ、何故自転速度の減速が大きな地震をもたらすのかは分かっていない。また、地球の自転の減速が何故起きるのかも分かっていない。一つの説としては、地球表面の地殻の下にあるマントルは通常は対流しているが、一時的に地殻に固着することで、流れが中断され、地球の磁場を変え、地球の回転に一時的な問題を生み出すのではないかと考えられている。2004年12月26日にインドネシアのスマトラ島沖で、M9.1の巨大地震が発生し、インドネシアだけで23万人近い犠牲者を出したが、この地震の後、NASAのゴダードスペースセンターとジェット推進研究所が調べたところ、地球の自転速度はわずかに速まっていた(1日あたり約100万分の3秒)。このことから、地球の自転速度と地震の関係は、自転速度の減速後に大きな地震が発生し、その地震の後は、自転速度は速くなるのかも知れない。
今日の八幡神社前の紅葉の大樹

中東の要であるサウジアラビア

2017-11-23 19:10:42 | 社会
サウジアラビアは世界最大の石油産出国であり、国の収入の大半を石油に頼って来た。しかし、石油は2014年6月に1バレル当たり約100ドルから約39ドルまで急落し、巨額の財政赤字を抱え、公共支出の大幅な削減を迫られた。さらに人口の半数以上の若者の急増があるために、2003年〜2013年の石油ブーム時と同じくらいに雇用の場を確保する必要がる。2015年1月経済開発評議会の議長に就任した国防大臣でもあった若干29歳のムハンマド・ビン・サルマーン王子は、「今後20年間で石油依存から脱却する」とした。非公開であった国営石油大手サウジ・アラムコの株式の5%を公開することにした。これにより2兆ドル以上の資産を手に入れることが可能となる。一方、日本ではあまり報じられなかったが、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件の15年目となる昨年9月28日、米国議会はバラク・オバマ大統領の唯一の拒否権を覆して、「テロ行為の支援者に対する正義法案(Justice Against Sponsors of Terrorism Act: JASTA)」を可決した。国際法では、外国国家が他の国の民事裁判権に服することが免除されるが、この法案の可決で、外国国家を相手取って提訴することが可能になった。9/11テロに関する調査委員会の最終報告書のうち28ページは未公開になっており、サウジアラビア政府が関与した疑いが持たれている。テロ事件の犠牲者や家族がサウジアラビアを訴えることが可能となる。2016年4月15日の The New York Timesは「Saudi Arabia Warns of Economic Fallout if Congress Passes 9/11 Bill(議会が9/11の法案を可決した場合、サウジアラビアは経済的余波を警告)」と題する記事で、サウジアラビは、JASTA法案を議会が可決すれば、保有する米国の財務省証券(国債)やその他の資産、最大7,500億ドルを売却すると警告した、ことを報じている。中国は世界最大の石油輸入国であるが、サウジアラビはその中国に、ドルではなく中国の通貨である「元」での取引を持ちかけられた。しかし、サウジアラビは今のところそれに応じていない。そのため、中国は現在、輸入量の25%以上を占めていたサウジアラビアからの石油を15%以下に減らし、産出量第2位のロシアからの石油輸入を5%から15%以上に拡大している。中東は対イスラエル問題、イスラム教内の派閥争いに加え、米国のペトロダラー防衛のための戦争など錯綜している。しかし、現在、若きサルマーン王子は中東の中心国として、これまでの歴史的な流れを変えようとしている。中露への接近と国内の革新である。国内での基盤は若いゆえにまだ十分とは言えない。また、米国は王子の動きを快くは思っていないだろう。サウジアラビアには米軍基地もある。若き王子の舵取りは容易ではないはずだ。

2億6000万年以上前の木の化石

2017-11-22 19:15:29 | 自然
7億年前の地球にはゴンドワナ大陸と言われる超大陸が存在した。地球上の陸地が一つに繋がった。2億9900万〜2億5100万年前の超大陸ゴンドワナは、面積が最も大きくなった時期になる。現在の南極、南米大陸、アフリカ大陸、インド、オーストラリア、アラビア半島を含むゴンドワナは当時、過酷な環境にあった。南の大部分は氷冠に覆われ、太陽が沈まない夏と真っ暗闇な冬が絶え間なく繰り返されていた。北部の方は強烈な暑さで、季節の変化が大きかった。ところが、2億5200万年前に地球史上最大の大量絶滅が起きている。陸でも海でも生物の90%がほぼ同時に絶滅した。6500万年前の恐竜の絶滅より規模が大きかった。この年代に堆積した岩盤の分析から、地上の自然火災が広がり、森林が焼け付くされたことははっきりしているが、海中も低酸素状態となっており、いまだに本来の原因は分かっていない。超大陸の分裂の原因とされるスーパープルームなどの火山性の活動によるものか、小惑星や彗星の衝突によるものなどが考えられている。ただ今のところ小惑星や彗星の衝突の証拠は見出されていない。地表から2900Km下のマントルから超巨大マグマ塊が上昇したものをスーパープルームと言う。現在でもアフリカ大陸の下と南太平洋にスーパープルームが存在するとされる。米国米ウィスコンシン大学の研究者たちは2016年11月から2017年1月にかけて南極大陸の堆積岩を調査した。2億6000万年前より古い木の化石をいくつか見つけた。南極大陸はその頃はずっと温暖で湿潤であった。深い森に覆われ、極地の過酷な環境に耐えられる限られた種が生態系を形成していたと考えられる。木の化石の内部からは、微生物や菌類の化石まで見つかっている。米国のイエローストーン国立公園には化石の森があるが、これは生きた木が火山物質の下に埋もれて化石化したもと言われ、今回採取された木の化石とよく似ていると言う。今回採取した植物たちは、季節の移行に数カ月かかる現代の植物と異なり、季節変化に素早く対応しており、1カ月以内に対応していた可能性さえあると考えられるようだ。太古の木は4〜5カ月の真っ暗な冬と4〜5カ月の太陽が沈まない夏に素早く適応していた。

米国内の金本位制回帰

2017-11-21 19:13:09 | 社会
世界の主要国の中央銀行が揃って金融緩和により、通貨を増刷した。通貨の増刷は通貨の価値を低下させる。米国のいくつかの州政府は、中央銀行であるFRBの裏付けのないドル増刷に不安を抱き始めた。米国では1879年から続いた金本位制を1933年と1971年の2度離脱している。1929年ウォール街の株式暴落で世界恐慌に発展した。米国では預金者の取り付け騒ぎにより銀行倒産が増加し、金(きん)の海外流出が危機的な状況となった。フランクリン・ルーズベルト大統領は、1933年4月5日、ニューディール政策に先立って、大統領令を発した。アメリカ市民が保有する金を政府に対して1トロイオンス(31.1g)20.67ドルで強制的に拠出させ、更に、金による支払いを求める全ての民間契約を無効化すると言うものだ。金本位制下では政府が保有する金の量の範囲でしか政府は通貨を発行出来ない。この時、米国政府には限られた金しか残されていなかった。そのため米国政府は、金本位制を停止し、ニューディール政策などの財政支出を行うためには、裏付けなく通貨を発行せざるを得なくなる。しかし、第二次世界大戦中に英国に代わり大国となった米国は1944年に連合国通貨金融会議を開き、米国ドルを貿易の基軸通貨とし、1トロイオンス35ドルで金と交換可能な固定為替相場制を取り決めた。いわゆるブレトン・ウッズ協定である。戦後、米国とソ連の冷戦が勃発し、米国はベトナム戦争の泥沼に入り込み、多大の戦費を要した。これに不安を抱いた欧州をはじめとする諸国はドルを金と交換することを求めた。再び金の流出に見舞われた米国は1971年再びドルと金の交換を停止せざるを得なくなる。ニクソン・ショックである。以来、米国はFRBにより、裏付けなくドルが印刷されるようになった。世界一の大国に他国も従わざるを得ず、為替も変動相場制に移行した。裏付けなく発行された通貨は、時を経て経済規模が拡大するに従い通貨量が増えて行く。通貨量が増えれば、通貨ドルの価値は下がって行く。現在、1トロイオンス1270ドル以上となっている。この値すら、FRBの要請で投資銀行を通じて、金価格は先物取引で抑え込まれているのが現状だ。金価格の上昇はドルの価値の低下をあからさまにするからだ。裏付けを失ったドルの基軸通貨としての地位を守るため、米国は1974年にサウジアラビアと密約を交わし、世界の石油取引をドルで行うとした。ペトロ・ダラーの開始である。米国憲法は建国当初から金銀を法定通貨として認めている。2011年には、2008年のリーマンショックとその後のFRBの金融緩和(ドル増刷)への不安から3州が金・銀を法定通貨としており、その後もそうした州が増え続け、2015年にはユタ、ミネソタ、テネシーなど19州が法定通貨としている。そして、今月初めにはテキサス州が金塊保管庫の運用に動き出した。この保管庫は個人、法人、市、郡、政府機関に対して安全な場所を提供するだけでなく、他国に対しても金や貴金属補完の安全な場所を提供する。誰もがこの保管庫に金・銀を預け、他社との決済を電子的に処理出来ると言うものだ。こうした動きは他の州にも波及するだけでなく、サウジアラビアのロシアや中国との石油取引でドル以外の通貨が使われる動きなど、ドル離れが加速している。
旧居の紅葉

凋落のループ

2017-11-20 19:18:57 | 社会
昨日はこの時期初めて雪が降った。夜半には庭木に白く雪が載っていた。今朝は庭の水槽も氷が張り、路面にも薄い氷が見られた。遠野では日中も氷点下になっていたようだ。気温が一気に下がったので、八幡神社前の大樹の紅葉が先週より進んでいないか、昼休みに行って見たが、あまり変わらなかった。この大樹は例年12月初めまで見られる。甲子川では遡上する鮭が増えて来ていた。 今年8月に人事院は国家公務員給与・賞与の引き上げを4年連続勧告している。人事院によると日本の地方公務員は274万人、国家公務員は58万人となっている。一方、民間は労働人口6600万人のうち一部上場企業(2000社)に勤務する人は、300万人である。90%の人は非上場の中小企業勤務と自営業である。9月に国税庁が発表した民間給与実態統計調査では、平均給与は422万円であるが、正規雇用では487万円で、非正規雇用では172万円となっている。平均給与は2008年のリーマンショック後の2009年から低迷が続いている。しかし、国家・地方合わせた公務員の平均給与は700万円と、一部上場企業と同等である。同等であるばかりか、医療費の補助・休業補償、共済年金の保険支払い補助などを含めれば、実質給与は1000万円となる。2006年に国会議員互助年金が廃止されたが、今またこの復活の動きが出ている。10年以上の議員在職で受給資格が得られ、最低でも年額412万円が支給される。7月に財務省は昨年度の国の一般会計決算概要を発表しているが、税収入は55兆4686億円で、前年度より8167億円減となっている。減収のうち4985億円は法人税である。上場企業は軒並み最高益を更新し続け、内部留保は400兆円を突破している。消費税は増税し、法人税を下げ、上場企業は最高益を更新しても、法人税は減少し、賃金も増えず、内部留保だけが積み上がる。国も地方自治体も債務が巨額になっているにもかかわらず、職員給与は厚遇であり、上場企業は最高益を上げても税を払わない。国や地方自治体の収入は税金であり、税金が増えなければ、債務はさらに積み上がる。これを解消するためには、経済成長により税収を増加させるしかない。しかし、経済成長の基本は今や先進国では「消費」が柱となっている。先進国がいずれも低調な経済成長しか出来ない理由は、中間層の減少による。中間層の減少が消費の減少に直結している。企業はコスト削減や円安で利益を得ても、消費が見込めないために利益を設備投資や人件費に回さず、内部留保に回す。この悪循環に陥っている。小泉政権で顕著になった新自由主義が非正規雇用の拡大や中間職の削減と言う安易なコスト削減をもたらし、経済成長に重要な消費を抑えさせてしまった。さらには企業の高収益も政府や日本銀行による円安誘導により得られたもので、決して企業努力によるものではない。むしろ安易な利益獲得のために企業のモラルは悲惨な状態になってしまった。5年、10年先を見据えた企業戦略も見られない。国も地方も、大企業も指導者の質の低下が著しい。税制難を抱えた点も含め、まさに幕末の江戸幕府の様相と言えるだろう。
鮭の遡上防止柵で休む青鷺と海鵜