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釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで17年6ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「ゾルタン・ポズサー :ポートフォリオの20%をコモディティに投資、2023年末までにQEを予想」

2023-01-27 19:10:56 | 経済
2023年1月9日、カナダの経済情報メディアNXTmineが掲載した記事、「Zoltan Pozsar: Put 20% Of Portfolio In Commodities, QE Expected By End of 2023(ゾルタン・ポズサー :ポートフォリオの20%をコモディティに投資、2023年末までにQEを予想) Capping his “war” series in his latest analyst note, Credit Suisse contributor Zoltan Pozsar highlighted that the real “hot war”(クレディ・スイスのアナリスト、ゾルタン・ポズサーは、最新のアナリストノートで「戦争」シリーズを総括し、真の「熱い戦争」が起きていることを強調した)」

クレディ・スイスのアナリスト、ゾルタン・ポズサーは、最新のアナリストノートで「戦争」シリーズの締めくくりとして、地政学における真の「熱い戦争」の脅威は、経済秩序を揺るがすことを意図した最後のピースであり、投資家がポートフォリオ(投資資産の組み合わせ)を整理する際に考慮すべきものであると強調した。

ポズサーは、2022年の地政学的変化とそれが世界秩序に与える影響について、「ブレトンウッズBretton Woods III 」(最下記参照)の仮説に基づき、次のようにまとめた。

「G7によるロシアへの金融封鎖、ロシアによるEUへのエネルギー封鎖、米国による中国への技術封鎖、 中国の対台湾海上封鎖、米国のインフレ抑制法によるEUのEV分野への『封鎖』、中国の人民元建て石油・ガス販売請求の増加によるOPEC+全体への『挟み撃ち』」だと著者は指摘している。

戦争と金利に関する第1回で、ポズサーは、「経済戦争がインフレを理解する正しい文脈であるならば、欧米の中央銀行にはインフレ退治の良いオプションはないだろう 」と理論的に述べている。

次の戦争と産業政策に関するものでは、西側諸国が「文明の大危機」に勝つために産業政策を刷新すべきであると指摘し、兵器の再武装、ソースの再ショアリング、在庫の再蓄積、エネルギー網の再配線などを挙げた。


戦争と商品逼迫について、ポズサーは、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)とGCC(湾岸協力会議)諸国の間で、中国が東アジアでの影響力を強め、人民元決済を賢く求め、ペトロダラーに深刻な脅威となっていると解説した。

そして、戦争と通貨の国家戦略について、著者はさらに、世界経済の脱ドル化の可能性を狙って打ち出されるさまざまな通貨の手法を解説し、次のように述べている。
「世界は二つに割れている。通貨制度も同様だ。ドルは岐路に立たされている。」

ポズサーは、「戦争と平和」と名付けた最新の発信で、2023年はまだ「熱い戦争」の芽生えを特徴とする地政学的な変化に満ちていると考えていることを伝えた。BRICSの拡大、FX取引(外国為替取引)におけるドルの役割を低下させる中央銀行デジタル通貨プロジェクト(CBDC)の人気の高まりなど、いくつか列挙している。

「金融と財政の対応は、あくまで自然や地政学への対応であり、地政学が複雑化する中で、投資家は2023年においても非線形リスクの脅威に留意すべきです」と著者は指摘している。

ポズサーは生意気にも、小説『戦争と平和』の著者、レオ(レフ)・トルストイの言葉を引用した。トルストイは、彼の別の著書『神の国はあなたの中にある』の中で、「最も難しいテーマも、最も頭の鈍い人間には、そのテーマについてすでに何の考えも形成していなければ、説明することが出来る。しかし、最も簡単なことも、最も知的な人間には、目の前に置かれたものを疑いなく、すでに知っていると固く確信している場合には、明らかにすることが出来ないのだ」と書いている。

「金融とは、未来を割り引くことであり、金融では個人的なことは言えない」とポズサーは付け加えた。

ポズサーは、戦争が深く個人的なものであることは認めながらも、「自分のポートフォリオに関して、どちらかの側に立つことで客観性や判断が鈍ることはない」とし、投資家は「心を開いていなければ、金銭的な抑圧を受けることになる」とも付け加えた。

2023年のQE

ポズサーは、「熱い戦争」がいかに投資シーンを不安定にするかを説明するために、「貨幣の4つの価格」を振り返った。これは、彼がブレトンウッズIII モデルで、世界経済における商品という実質領域の重要性の高まりを考慮し、拡張したものである。

「お金の最初の3つの価格(つまり額面、金利、FX(外国為替取引))が安定するためには、4つ目の価格(物価水準)が絶対に安定しなければならない 」とポズサーは説明する。

しかし、著者が示したように、2022年の物価水準は不安定で、インフレ率は 「目標を上回り、桁外れ 」になっている。

「それが2022年の話だ:値上げなし;値上げ;値上げ連発;(金利)25bps連発;50bps連発;75bps連発;最初はフォワードガイダンスあり、次になし。」この物価水準の不安定さが金利も不安定にし、パリティ(株価に対する社債の理論価格)と為替の不安定さにつながったと言う。

ポズサーは、最近のマクロ経済における「戦争」というテーマ-「中国との貿易戦争、COVID-19の戦争、ロックダウンに対処するための戦争金融(量的緩和)、戦争金融をやりすぎたためにインフレに対する戦争、その後戦争はウクライナ、金融、商品、チップ、海峡を巻き込んで広がって行った」にもかかわらず、現在Fed(米国中央銀行)は「戦争金融」と逆のことをして、量的引き締めを続けていると指摘している。

そして、ブリッジウォーターのレポートを引用し、「今後数ヶ月の間に民間部門が吸収しなければならない政府債務の額は、世界大戦(中央銀行が債券の安全リスクプレミアムを操作した時)と世界金融危機以外のどの時期よりも大きい」と述べている。

著者は、「(オーバーナイト・リバース・レポ)ファシリティには、今後発行される国債を吸収するための2兆ドルがある」一方で、買い手は不足していると説明する。国債はオーバーナイトのインデックス・スワップよりかなり安くしないとRV資金にはならないが、銀行は手元資金が減少しているため、水面下の債券や資金調達市場の利用を好むと思われる状況では購入しないだろうと論じた。

ポズサーによれば、昨年の地政学的な出来事によって「世界の資金の流れが根本的に変化し、大規模な為替準備運用会社の米国債に対する意欲が低下した」ため、為替ヘッジの買い手も買い手になる可能性は低いと言う。

「私の感覚では、これは「牽制」のような状況だ。FRB(米国中央銀行理事会)は枢軸にならず、終末金利はさらに上昇しなければならないかもしれない(こちらを参照)。どちらも、リスク資産(売り→国債へ)にも国債にも好ましいことではない。」ポズサーは、「寒いところでの熱い戦争、熱いところでの寒い戦争にはQT(金融引き締め)ではなく『戦争資金』が必要」と言い添えた。

減少する国債需要への解決策。イールドカーブ・コントロールと言う「名目」のQE(金融緩和)で、「2023年末までにやってくる」とポズサーは考えている。しかし、「低金利とリスク資産プットの文脈でのQEとは異なり、来るべきQEは国債市場の機能不全の文脈で行われる」だろう。

「今度のQEは、高金利でスワップスプレッドを取り締まることが目的であり、利回りを下げてリスク資産を膨らませることが目的ではない。次のQEは、高インフレ、地政学的緊張の高まり、西洋と世界の東と南の間の醜い金融離婚の中で、「荷車の車輪を維持する」ことを目的としている」と、ポズサーは付け加えた。

コモディティに20%投資

ポズサーは、「戦争」特集を終えるにあたり、「大国間紛争」がこの10年のマクロと投資の展望を決定づけ、投資家がポートフォリオを計画する際に取り入れるべきものであることを繰り返し強調した。

「大国間の対立は冗談ではない。極めて現実的なものだ。習近平主席はこれを "闘争 "と呼び、最新の中国共産党大会で22回も使った」とポズサーは指摘する。「西側諸国では、この10年間に起こることを『闘争』とは考えない傾向があるが、そうすべきだ」。

ポズサーにとって、これはポートフォリオ投資において、通常の60/40方式はもう通用しないことを意味している。現金、株式、債券、コモディティの4種類で、20/40/20/20を提案する。

後者については、イエローゴールド(金の延べ棒)、ブラックゴールド(石油)、ホワイトゴールド(EV用リチウム)の3種類を含めるとよいとのことだ。このほか、銅やコバルトなどの範囲も含めるべきだろう。


「 過去10年間、ほとんどの機関投資家がコモディティに投資していたのは1%未満だった。ゾルタンは機関投資家の間で大きな影響力を持っている。この戦略の変更は、何年もかけて展開されるだろう。長期的なコモディティ強気相場が待っている ...
- Willem Middelkoop (@wmiddelkoop) 2023年1月8日」

ドルについては、一夜にして引退するわけではないが、「BRICS+の中央銀行による脱ドル化とデジタル化(CBDC)により、ドルの優位性と国債の需要が低下する 」とした。

「ドルの強弱は、貨幣の4つの価格という文脈で考える必要がある。ドルは、他のDM通貨に対しては『FX』的な強さを維持するが、商品に対しては『価格水準』的な弱さ(つまり、明白な切り下げ)になり、ほとんどのBRICS通貨に対しては『FX』的な弱さになるだろう」、とポズサーは付け加えている。

これらにより、「この10年間、貨幣の4つの価格すべてにおいて多くのボラティリティ(価格変動の度合い)が保証される」とし、QEを支持する考えを示した。

このブリーフィングの情報はクレディ・スイスから得たものである。筆者はクレディ・スイスとは何の関係もなく、証券会社でもない。売買を推奨するものではありません。本資料は、Credit Suisse社より入手したものです。著者はいかなるライセンスも保有していません。

ポズサーの言う「ブレトンウッズIII」
ブレトンウッズI 1944年からの金と交換可能なドルを軸にした国際通貨体制
ブレトンウッズII 1971年からドルと金の交換停止し、ドルの供給の天井がなくなった国際通貨体制
ブレトンウッズIII ドルに代わる代替資産、金などコモディティ(取引対象となる商品)をベースにした国際通貨体制


ミソサザイ

債務国の通貨切り下げ

2022-06-24 19:16:27 | 経済
戦後世界の覇権国となった米国は、1980年代のレーガン政権下で巨額の貿易赤字と財政赤字が発生し、いずれもが現在まで膨らみ続けて来た。米国は世界最大の借金国だ。海外に対する債務は23兆ドルで、政府債務はついに30兆ドルを超えた。1971年に金本位制を放棄した米国の通貨ドルは、本来、価値が低下したはずだが、1974年に当時の国務長官キッシンジャーがサウジアラビアのリアドへ赴き、石油をドルで販売するとのサウジアラビアとの間で密約を交わした。これにより、世界は石油を購入するためにドルを手に入れなければならなくなった。世界は自国通貨をドルに交換するため、ドルを買わねばならず、ただの印刷紙幣であるドルの価値が維持された。米国は、輸入の支払いもドルで行うため、ただドルの輪転機を回し続ければ良かった。巨大な内外の債務を抱えても、通貨ドルの価値が維持されて来た。しかし、北アフリカのリビアの最高指導者カダフィ大佐は、リビア中央銀行の143トンの金地金およびほぼ同量の銀地金を利用したリビア・ディナール金貨を発行してアフリカ通貨体制を築こうとした。しかし、2000年末に殺害された。また、イラクのサダム・フセインは、イラク産出石油の取引をドルからユーロに変更した。準備金100億ドルをユーロに替えた。その後、イラク戦争で囚われ、2006年12月30日死刑が執行された。米国は基軸通貨ドルを揺るがす事態は看過出来ない。ロシアは広大な国土に豊富な資源を有する大国であり、米国はロシアを米国の望むグローバル経済に巻き込みたい。ロシア国内に自由に米国資本を投じ、巨大な利益を得たい。ソ連崩壊後の9年間は、それが可能であったが、プーチンが登場するや、事態が大きく変わってしまった。プーチンは重要な石油などの資源を国有化し、ロシアの産業を守る姿勢に出た。米国民主党政権は、こうしたプーチンを潰そうとした。ロシアに隣接するウクライナに米国は資金を投じ、革命を起こさせ、米国寄りの政権を樹立させ、ロシアをウクライナ侵攻へ誘い込んだ。ウクライナ侵攻で、プーチンが国内で窮地に立たされ、自滅すると考えた。しかし、事実は、プーチンは国内の80%の支持を受け、欧米による経済制裁の中でも、貿易黒字は最高となり、通貨ルーブルも最強となってしまった。米国の思惑は大きく外れた。外れただけではなく、政権の支持率はむしろ米国で最低に落ち込んだ。米国に同調したイタリア、フランス、ドイツも政権の支持率は低下している。経済制裁がむしろ、制裁国で急激なインフレをもたらし、国民の生活の圧迫と、産業の資源不足による生産の停滞を生み出した。各国中央銀行のインフレ対策としての金利引き上げが、株式、債券、不動産など資産市場を直撃した。金融経済が主体の米国がその最も大きな影響を受けている。そして、金利上昇は債務者に最大の打撃を与える。その最大の債務者は米国政府でもある。戦後、政府債務が積み上がると、政府は通貨の切り下げで、表面的な債務不履行(デフォルト)を避けて来た。日本の1946年の「円切り替え」も実際は円の切り下げであった。米国は1970年代と1985年にドル切り下げを行なっている。ドルの切り下げは、部分的な借金の踏み倒しである。巨大な債務を抱えた米国や日本の政府にとって、金利上昇は耐えるには限界がある。しかし、金利上昇の原因であるインフレは容易には治らず、むしろ、今後さらに高まって行く。今日のNHKは、「BRICS首脳会議 中国とロシアは対欧米で結束強化を呼びかけ」を報じている。現在、オンライン形式でBRICS首脳会議 が行われている。BRICSはロシアへの経済制裁には参加していない。ロシアは経済制裁により石油の販路を欧州から中国、インドに切り替えた。欧州がロシアに依存していた天然ガス、石油、肥料、農産物などが欧州には入らなくなって行く。希ガスやレアメタルもロシアから得られなくなるため、半導体も欧米では入手しにくくなり、産業全体が大きな打撃を受けることになる。インフレと景気後退が同時にやって来るスタグフレーションがまさに起きようとしている。いずれにしろ、インフレは広範な分野に及ぶ。つまり金利上昇も続いて行くことになると言うことだ。その何処かで、米国は金利負担の限界に達する。経営・情報コンサルタント、吉田繁治氏は、遅くとも2024年には、米国はドルの切り下げを行うと見ている。世界196カ国中148カ国はロシアへの経済制裁には加わっておらず、ロシアや中国は国際決済システムをすでに立ち上げており、ドルからの離脱を始めている。裏付けのないただの紙でしかないドルよりも資源や金に紐づけられたルーブルや人民元が台頭する下地はすでに出来ている。世界は間違いなく大きな転換期にある。中国への経済制裁は、眠れる獅子を目覚めさせ、ロシアへの制裁は眠れる熊を目覚めさせた。米国にとって、もはや引き返すことは出来ない。米国も欧州も地盤沈下は避けられなくなった。ロシアや中国は米国にとって、リビアやイラクとは異なる。武力対抗は出来ない国だ。そのためにウクライナ紛争へは直接介入しなかった。経済制裁が唯一の対抗手段と考えて、経済制裁に踏み切ったが、結局は、それがブーメランのように我が身に飛び帰って来た。恐らく、11月の米国中間選挙では、現在の政権党である民主党は大きく議席を失うだろう。そして、その後の政権運営は厳しいものになる。経済制裁でインフレが高じた国は全て、政権の支持率を落としている。そんな中で、日本だけは、変わらないように見える。恐らく、来月の参議院選挙でも自公多数は変わらないのだろう。国内のインフレがさらに進み、米国発の金融崩壊の津波がやって来て、生活が困窮して初めて、何をすべきだったか、に気付くのかも知れない。日本も遠からず、円の切り下げをせざるを得ないだろう。2024年には20年ぶりの新札発行があったように思うが。
ハマナス

経済制裁がもたらすもの

2022-06-22 19:11:13 | 経済
2020年に新型コロナウイルス感染が世界に広がったが、これにより世界の物資の供給は、輸送の遅滞は見られたが、止まったわけではなかった。しかし、今年2月24日のロシアのウクライナ侵攻後の西側諸国によるロシアへの経済制裁により、多くの物資の供給が途絶した。制裁国は196ヵ国中48ヵ国で、欧米中心で、アジアでは日本、韓国、台湾、シンガポールのみだ。制裁により、食糧、肥料、希ガス、レアメタル、天然ガス、石油など広範囲の物資の供給が絶たれた。最もロシアへの依存度が高かった欧州が直撃を受けている。オランダで抗議デモが行われ、19日の日曜には物価が9%上がったベルギーでNATOに反対する7〜8万人と言われる大規模な抗議でもがあり、英国、ロンドンでは30年ぶりの賃上げを求める大規模なストライキが起き、鉄道労働者は6月25日まで抗議を続け市内の地下は閉鎖された。秋から冬にかけての欧州でのエネルギー不足が続けば、人命に関わる事態にもなりかねない。ドイツの公共放送ARDが運営するテレビチャンネルDas Ersteの6月15日の番組maischbergerで、”ヨーロッパ・マガジン”の記者ヴォルフラム・ワイマーWolfram Weimerは、「気分が悪い現実かもしれないが、、向き合わなければならない。ロシアはすでに勝っている。シュルツ首相は同じ言葉を繰り返している。ロシアは勝ってはいけない。ウクライナが勝つべきだと。私が心配しているのはこの後、政治的にどこに向かうのかだ。何故ならば、ドンバスはすでにロシアが制圧した。もう時間の問題だ。制圧したエリアは広大だ。オランダとベルギーを合わせた大きさだ。クリミアへも繋がっている。この先、どうやってロシアが負けるのか。ウクライナは我々が武器を送っても立ち向かう強さはない。さらにロシアは世界の制裁合戦でも勝利を治めている。中国は当然飛びついた。インドはかってないレベルでロシアとの貿易を開始している。ブラジルや南アフリカなど世界の重要な国々が西を捨てた。ドイツ連邦の首相が南アフリカまで出向いて恥をかいた。(南アフリカは)制裁はしない侵略・戦争と言う言葉は聞きたくないと。世界の支持は得られてないのだ。それを認めなければいけない。(フランスの)マクロン大統領の姿勢はこの事実を反映しているのだ。この戦争は勝てない。最短で終わらせるべきだ。外交的な解決を探るのがドイツ政府が出来ることだ。気が進まないのは分かるが、ロシアとの対話もしてショルツ首相のキエフ訪問が和平交渉の現実的実現につながることを強く願っている。」と述べている。まさしく正論である。欧米や日本はウクライナへ武器や資金を支援しているが、それらは実際には、多くが戦場には届いておらず、前線のウクライナ兵は食糧もままならい状態で、小火器で現代兵器を十分に装備したロシア兵と戦っている。投降者が続出しているのが現状だ。ウクライナ側でミサイルなどの現代兵器が使われているのは、前線ではない。ロシアは民間人を極力巻き込まないように攻撃しているため、前進は遅いが、着実に制圧域を広げている。新しい武器をウクライナへ送っても、それを使いこなす訓練さえ不十分だ。5000人近くいた外国人傭兵もその半数が離脱している。ロシアは広大な国土に90万人の兵員を抱えており、ウクライナへは定期的に兵員の交代を行い、兵員の戦闘力を維持しているだけでなく、多くの兵員に実戦経験のチャンスを与えてもいる。昨日は飛行距離500Kmに及ぶ最新ミサイルの投入も決定した。元沖縄米軍海兵隊のマックス・フォン・シュラー氏は、米国の戦闘機・空母・ミサイルよりもロシアの方が、実戦ではより優れていると語っていた。米国軍需産業の肥大化で、あらゆる武器が電子化された複雑で高価なものになり、実戦では、むしろ使い難く、修理も簡単ではないと言う。ドイツの記者ワイマーが語るように、ウクライナはロシアには勝てない。ロシア軍が米軍のような無差別の絨毯爆撃を行えば、短時日でウクライナを制圧出来るだろう。しかし、それはロシアの目的ではない。西側がウクライナ支援を続け、経済制裁を続けることは、もはや無意味であり、インフレを高めて行くだけである。米国の8.6%のインフレは、中央銀行の金利引き上げを招き、株価を25%まで下げている。今日のブルームバーグは、「高インフレで投資家は未経験の不確実性に直面、現金残高膨らむ」を報じた。「ウォール街関係者の多くは、現在のような市場環境を目にしたことがなかった。  先週は物価や成長の見通し悪化で広範囲の資産でボラティリティーが急激に高まり、米株式・債券は急落。数十年ぶりの高い伸びとなっているインフレ率は予想外に高止まりが続いており、中央銀行の多くが従来の金融政策を急速に修正。ベテラン投資家もショックで手を引いており、現金に近い金融資産やファシリティーにはかつてない額の資金が集まっている。」とある。20日の米国経済メディアRamp Capitalは、「Everything Is Broken(すべてが壊れている)」を書いている。「暗号、株式、債券、住宅、消費者信頼感、インフレ、悪いニュースのリストは終わりがないようだ」とある。欧米は制裁によるインフレによる対応として中央銀行が金利を引き上げているが、日本では、インフレが欧米ほどではないためもあり、日本銀行は、従来通りの超低金利を維持しようとしている。インフレも金利も欧米ほど変化していないため、日本のメディアはほとんどこれに触れないが、実際には日本の国債市場では、凄まじい戦いが起きている。一昨日の米国ZeroHedgeは、「Bank of Japan Spends A Record $81 Billion To Avert Collapse, But $10 Trillion JGB Market Is Now Completely Broken(日本銀行は破綻回避のために過去最高の810億ドルを支出したが、10兆ドルの日本国債市場は完全に破綻している)」を書いた。「ちょうど1週間前、ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏は」、「「日銀プリンターはオーバードライブ状態」で、現在の購入ペースが続くと、6月には約10兆円を購入したことになると算出した。」日本銀行は国債市場で国債を巨額に買い込み、今では国債の半分以上を保有し、国債市場の売買国債量が極めて少なくなり、実質的に国債市場が機能しなくなっている。先週、ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏が、「日本の金融市場で劇的で予測できない非線形性が働く段階にまもなく入るだろう」と語った「翌日、日本の債券市場の少なからぬ部分が崩壊し、中央銀行が政策目標のコントロールを維持するために戦い、世界最大のヘッジファンドが、日銀がコントロールを失いそうだという賭けを何十億も積み重ね、ソロスの日銀に対する劇的な聖戦(この億万長者の民主党は結局勝利し、今日まで米国政府の影の操り人形師になる富を得ている)を繰り返したのだ。」、「Bloombergが指摘するように、日銀は最も安く買える債券の市場を事実上追い詰め、他者がそれを購入することはほぼ不可能になった。一方、先物価格は下落し、それに気づいた人々が急いで取引を終了したため取引停止寸前まで落ち込んだ。」、「日本銀行が圧力に屈し、ますます孤立した超金融緩和政策を変更することに賭けるファンド(特に1270億ドルの巨大ファンド、ブルーベイ)が増えているため、日本国債への投機的な攻撃が高まっているのだ。」、「しかし、ここ数日、日本の債券市場に対する不吉な降伏が感じられる。まるで、もう戻れないところまで来ていて、日本国債市場だけでなく、不正なMMTパラダイム全体が最終的に崩壊するのが、数時間とは言わないまでも、ほんの少し先であるかのようである。実際、ラボバンクのマイケル・エブリ氏は、現状を維持しようとするたびに、日銀は金融のゴムひもをさらに引っ張ることになり、それが必然的に反対側に折れ曲がったときにはるかに大きな痛みを伴うとし、日銀のYCCペッグがいずれ壊れるとき、市場は大きな打撃を受けるだろうと結論付けた。もし両方が一度に逆転したら...大変だ!」。経済制裁によるインフレは欧米では直接国民生活を直撃しているが、欧米ほどではない日本も、背後では国債が攻撃を受けていて、日本銀行が必死で防衛している。日本メディアはこれを伝えない。国債が今年中に崩壊する可能性もあるにもかかわらず。
ハルザキシュウメイギク

日本銀行の暴挙

2022-06-14 19:19:07 | 経済
朝は雲が多かったが、日中はよく晴れて、強い日射しの中で、冷たい風が吹き、気持ちのいい日中だった。関東はすでに梅雨入りしたようだが、東北の梅雨は比較的短い。北海道では梅雨がないが、道東の釧路は霧雨の日が多かった。6月に入り釜石市での新型コロナウイルス感染はほぼゼロとなった。内陸はまだ毎日のように感染者が出ているが、それも全国的な流れと同じく減少傾向にある。現在の日本の感染がどの変異株が主体なのか、よく分からない。感染関係の情報も日増しに少なくなっている。そんな中で、今日の日本経済新聞は「「感染症危機管理庁」新設、対応を一元化 首相表明へ」を報じている。わざわざこうした機関をこの時期に内閣官房に設置するのは、米国CDCの出先機関を日本に設置することと関係しているものと思われる。政府は今後も感染が続いて行くと考えているのだろう。イタリアの分子腫瘍学研究所の荒川央博士は、これまでの変異種を含む新型コロナウイルスは、全て自然界での進化では考えられないことを明らかにした。つまり、今後も、人為的に新たなウイルスが投入される可能性があると言うことだろう。感染禍は、経済活動の抑制にもつながる。ウクライナ問題もあり、世界は資源と食糧不足がいよいよ深刻になって行くだろう。資源も食糧も人の生命活動には不可欠だ。供給不足の中で需要はある。従って、感染と同じくインフレもまた続いて行くと言うことだ。今日の米国ZeroHedgeは、「Japan On Verge Of Systemic Collapse With "Dramatic, Unpredictable Non-Linearities" In Financial Markets, DB Warns(日本は金融市場の「劇的で予測不可能な非直線性」によってシステム崩壊の危機に瀕している、とドイツ銀行が警告)」を載せている。日本銀行は10年国債の利回りを0.25%に抑えるために1兆5000億円超の国債を購入する。ドイツ銀行の試算によると、現在の買い入れペースが続くと、6月におよそ10兆円を買い入れることになる。「世界の他のすべての中央銀行が政策を引き締めていることを考えると、これは「真に極端な」レベルの貨幣印刷である。我々が円に対して弱気になっている理由の一つである。そして、多くの人が主張しているように、円安の原因は日銀自身であることを考えると、この環境下での為替介入は単純に信用できない。」と書いている。欧米の中央銀行がインフレ抑制に向かって金利を上げている中で、日本銀行だけが、真逆の金利抑制に執着している。ドイツ銀行のジョージ・サラベロスGeorge Saravelos氏は、「「通貨と日本の金融市場は、ファンダメンタルに基づく評価のアンカーのようなものを失う過程にある」と懸念している」。資本主義における市場は、民間の自由な取引によって決まる金利などの評価が指標となっている。その市場機能を中央銀行の過度の介入により、失わせており、錨を失った船のように、金融市場は流れに舵を取れなくなる。「世界のインフレ率が上がれば上がるほど、日銀は増刷する。しかし、緩和が加速すればするほど、(インフレの)崖が近づいたときにブレーキを強く踏む必要性が高くなり、危険度が増す。その結果、日本の金融市場で劇的で予測不可能な非線形性が働く段階にまもなく入るだろう、とドイツ銀行のストラテジストは指摘する。「もし、国債利回りの清算水準が日銀の目標値25bpを超えていることが市場に明らかになれば、これ以上国債を保有するインセンティブがあるのだろうか」とも述べている。」。インフレになればなるほど、市場の金利上昇圧力は強くなり、それを抑えるために日本銀行はさらに国債購入を増やす。つまり国債を買って、その代金として円通貨を大量増刷することになる。そして、今後も増刷を続けて行けば、それだけ市中に通貨が溢れ、インフレは急進する。これを抑えようと金利引き上げや国債の手放しなどの急ブレーキをかければ、金融市場や国債を大きく傷付けかない。記事は、「最後に、円が不換紙幣の崖から転落し、円建て貯蓄の国内保有者がドルや暗号通貨に逃避した場合、そしてその時はどうなるのだろうか。私たちはすぐにそれを知ることになる。」と結んでいる。日本や米国、欧州がこれまで行って来た異常な金融緩和は、デフレの下で可能であった。金融緩和とは通貨を大量に社会へ流すことだ。しかし、インフレ時にはこれをやれば、インフレはさらに高じる。今の日本銀行は国民生活を直撃するインフレを抑えることよりも、国債の利回り=金利を抑えることを優先している。そこに大きな矛盾がある。国債とはまさに円と言う通貨そのものの価値である。国債の金利を低く抑えると言うことは、国債の価格を低下させないことでもある。日本銀行は国際価格を低下させないために、通貨を大量発行し続けている。しかし、それは社会のインフレを高めることでもある。国際価格を守ることがインフレを高じ、高じたインフレは円通貨の価値を下げる。円を守って円を毀損していると言う矛盾に落ち込んでいるのだ。もっとも、日本銀行は国債=円を守ろうとしているのではなく、政府の金利負担を軽減しようとしているだけなのだが。そのために結局は通貨を犠牲にしているのだ。そして、それは国民の資産を潰すことでもある。日本のインフレは今のところ、欧米ほどではないが、夏以後には、本格的な上昇がやって来るだろう。日本のLNG(液化天然ガス)輸入の39.2%は豪州からである。今、オーストラリアの前首相は、国内需要を優先するため、LNG輸出を停止するべきだと述べている。卵の元になるヒヨコはほぼ100%輸入に頼っている。農産物の種の90%以上はやはり輸入だ。国内の加工業者や卸売、小売などの業者が、極力値上げを抑えているが、これも遠からず限界となり、一層の値上げラッシュがやって来る。LNGに支えられた火力発電コストもさらに上がるため、電力料金をまた上がって行く。ロシアからは半導体に必須の希ガス、レアメタルが、また、飼料や肥料も入らなくなる。原発用のウランもロシアからの輸入であった。インフレ下での日本銀行の国債購入は、社会経済にとってもはや暴挙でしかない。米国の株式下落も続いているが、日本のメディアは日米の株式下落は報じても、日本銀行の暴挙については全く触れない。欧米メディアだけが報じる。ただ、米国もまた巨大金融崩壊と言う爆弾を抱えている。そして、今回は通貨ドルの崩壊でもあるだろう。米国も同じくインフレ下では、リーマン・ショック後のような金融緩和(通貨大量発行)は不可能だからだ。日米通貨の信用の失墜は避けられないだろう。
山法師

収縮して行くドル

2022-06-02 19:18:49 | 経済
WHOの国際保健規則改正、いわゆるパンデミック条約は、47のアフリカ地域加盟国を代表したボツワナの保留表明により成立しなかった。また、ブラジルも明確な反対を表明した。しかし、WHOは諦めておらず、評決を延期しただけである。今日のロイターは、「気候変動でウイルス性感染症の脅威増大、WHO責任者が警告」を報じた。「世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者マイク・ライアン氏は1日、気候変動の影響により、サル痘やラッサ熱といったウイルス性感染症の感染拡大がより持続的で頻繁になっている、と警告した。 同氏は、地球規模の気候変動が干ばつなどを通じて各地の気象条件を急激に変化させた結果、動物間の感染にとどまっていたウイルスがヒトに伝播する傾向が強まっていると指摘。」とある。2月18日から22日にドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議で、ビル・ゲイツは「次のパンデミックは50%の確率で人為的な気候変動によるものか、バイオテロリストによる意図的なものである」と述べていた。WHOとビル・ゲイツは共通の認識に立っているようだ。ビル・ゲイツは感染症の専門家ではなく、基本は投資家なのだが。彼は気候変動やバイオ関連にも投資をしている。「そのため」か、彼はコロナウイルスやサル痘の感染を見事に予言している。ワクチン開発にも投資をしており、そのワクチンは有効性が否定され、有害ですらあることが分かっても、保健当局はそれを認めず、接種をいまだに進めている。しかし、さすがに現実を見た多くの人が、ワクチン接種に明らかに消極的になっている。ワクチンの有効性が厚生労働省のデータ改竄によることが露見しても、大手メディアは決して報じない。マスクの有害性も主流メディアは報じないが、先月31日の福井テレビは「その頭痛、マスクのせい?マスク内はCO2が30倍、酸素は1割減…増える“マスク頭痛”に対策は【福井発】」を報じ、マスク着用により吸入酸素が13%減少し、二酸化炭素は体内で30倍になることを報じている。マスクには害こそあれ、益はない。マスクの内側にウイルスが貯留し、かえって感染ウイルス量を多くする。冷気の中でマスクを着用し息を吐くと、マスク周辺から白く息が吐き出されるのが分かる。感染者がマスクをしても、ウイルスは確実に排出される。現在のメディアは、視聴者や読者に考える材料を提供せず、メディア側の一方的な意図に基づく情報を垂れ流すだけだ。しかも、情緒的な傾向が強い。ワクチンやマスクは何の根拠もなく「有効」であり、ロシアや中国は悪である。この前提で集めた情報のみを流し続けている。今日の朝日新聞は「ロシア外貨建て国債の利払い「不履行」 金融機関団体が判断」を報じた。「世界の金融機関で構成する「クレジットデリバティブ決定委員会」は1日、ロシア政府が外貨建て国債の利子を支払わなかったことは「支払い不履行」にあたると判断した。市場からは事実上の債務不履行(デフォルト)とみなされる可能性が高い。財政破綻(はたん)ではなく、経済制裁が理由のデフォルトとなれば異例だ。」と書いている。米国が利子の支払い手段を禁じたことで、ロシアに支払い意思があっても支払不能となったことが、デフォルトだとする。デフォルトの意味の子供じみた変更でしかない。1991年末にソ連が崩壊した後、ロシア連邦初代大統領エリツィンはIMF国際通貨基金からの融資を受けて、市場経済を導入したが、豊富な資源産業は悉く新興財閥や欧米のグローバル資本に奪われ、国民生活はどん底に落ち込んでしまった。1992年のインフレ率は2600%にもなった。9年間のエリツィン時代を引き継いだプーチンは、主な資源産業を国有化し、他は民間企業に任せ、市場経済を進め、ロシア経済を立て直し、IMFからの融資も完全返済した。GDPは1992年の203億6000万ルーブルから2021年には130兆7953億ルーブルへ6424倍にもなった。経済制裁により一度は低下したルーブルも今では世界最強の通貨となり、ウクライナ侵攻前よりもドルに対して上昇している。中国、インドは経済制裁に参加しておらず、ロシアを加えた3国の人口は30億人で、人口約13億人のアフリカ連合54ヵ国はアフリカ統一通貨を目指している。人口2億人のブラジルも経済制裁には参加していない。今回の米国によるロシアの金利支払い禁止措置を見たこれらの国は、これまで以上にドルとの距離を置くことになるだろう。米国はロシアへの経済制裁や今回のロシアのデフォルト演出で、自らドルを追い込んでいる。ドル経済圏が急速に狭まって来ているのだ。石油取引をドルで行うことで、基軸通貨としての地位をドルが維持出来て来たのであり、そこが崩れれば、もはやドルと言う不換通貨の価値を保証するものが失われてしまう。昨日のロイターは、「米ケース・シラー住宅価格、3月は前年比21.2%上昇 伸び過去最高」を報じている。「米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが31日に発表した3月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(主要20都市)は前年同月比21.2%上昇した。伸びは前月の20.3%から加速し、過去最高を記録した。 特に中古住宅の在庫が逼迫していることで、住宅価格が押し上げられている。」とある。インフレを通じて再び住宅バブルが起きている。国際取引でのドル需要が減少して行く中で、秋に資産バブルの崩壊がやって来れば、ドルの凋落は確実になる。そして、それを避ける道はない。ただいつそれが起きるかと言う問題だけだ。経済制裁と言う米国自ら引き起こしたことで、自国が真っ先にインフレに見舞われ、今後も制裁が続く限りインフレは高まるだけである。従って、中央銀行FRBも金利を上げ続けざるを得ず、金利上昇のどこかで資産バブルは崩壊する。米国はこれまで、こうした資産バブルの崩壊を何度も経て来た。これまではその度に金融緩和で大き過ぎて潰せないとして、資金を流すことで表面上は繕って来た。しかし、今回ばかりはもうその手が使えない。金融緩和で市場を助けられるのはデフレ傾向にある時だけだ。バブル崩壊は金融収縮であり、市場から資金が失われることで、デフレになるが、同時に資源や生活手段と言う物が不足した状態のために、需要は減少せず、むしろインフレが持続する。米国での今後の金融崩壊は確実にドル基軸通貨制度の終焉をもたらす。基軸通貨の地位を失ったドルでは、従来のような貿易赤字の維持は不可能になる。信用を失ったドルの価値は暴落し、国債もまさに紙屑となる。経済覇権国の地位を失うことも確実だろう。ただグローバル資本は痛手は大きいが生き残るだろう。BRICS、東南アジア、中南米、アフリカなどの従来の主要国以外の国々が相互に連携した新たな経済圏が構築されるだろう。
月見草

コロナ禍と経済

2021-08-13 19:12:23 | 経済
今日も日中の気温は19度までしか上がらず、小雨が降り続いている。お盆休みに入ったために、朝の通勤時の通りの流れはとてもスムーズだった。勤務先の建物に入っても、自室に行くまで人影を見ることもなかった。昼休みに八幡神社側の高台から周囲を見ると、低い山は霧雲に覆われており、遠くの愛染山は全く見ることが出来ない。眼下を流れる甲子川の上をゆっくりと羽がまだ茶色のウミネコの幼鳥が飛んでいた。今日はさすがにセミもウグイスの声も聞こえてこない。 岩手県も少ないながらも連日感染者が続いており、実行再生産数は1.49になっている。岩手県でもなお感染拡大がしばらく続いて行くと言うことなのだろう。先進国は、日本を含めて一貫して非科学的なコロナ対策を続けている。今後もデルタ型が収束すれば、次にはラムダ型、イオタ型などの変異種株の波がやって来るだろうし、ワクチン接種によるさらなる新たな変異株も生まれて来る。新型コロナウイルス感染は、簡単には治りそうにはない。先進国があえて非科学的な対策を続けることで、先進国経済の本格的な回復も遠のく。デルタ株の散発的な感染が続いてはいるが、中国は他の主要国に比べてずっと回復スピードが早い。米国のトランプ政権から続く、中国への締め付けで、中国も欧米への輸出をアジア、アフリカ、南米によりシフトし始めている。中国は1978年の改革開放以来、資本主義経済を積極的に取り入れ大きく経済発展した。単に先進国の資本を導入しただけでなく、留学生を欧米に多数送り込み、国内の教育・研究にも多額の国費を投じた。文部科学省科学技術・学術政策研究所は、今月10日、「世界で2017~19年に発表された自然科学分野の学術論文のうち、他の論文に引用された回数」を発表した。論文総数では、中国は35万3174本で、初めて米国の28万5717本を抜いて1位となった。被引用数が各分野の上位10%に入る論文数でも中国は4万219本で初めて首位となった。日本は日本は前回の16~18年よりさらに後退し、インドに続く10位となった。経済は労働者数と科学技術、資本で維持される。日本は資本の蓄積と労働者数は今のとこ維持しているが、科学技術、特にそれを支える教育・研究を疎かにして来た。米国は巨大な資本と科学技術、労働者数を維持しているが、資本の多くが製造業ではなく、金融経済に蓄積され、その一方で、民間も政府も巨大な債務を抱えている。国家としてみると、政府債務と対外債務は米国史上かってない巨額の債務にまで膨らんでしまっている。現在、なお米国は世界一の経済大国の位置を維持してはいるが、その実態は極めて危うい状態になってしまっている。アルゼンチンやギリシャのように、本来であればもっと早くデフォルト(債務不履行)となっていた。そうならないのは、ドルと言う基軸通貨のおかげである。一般に債務を積み上げた国通貨は他国から売られ、売られた通貨は価値が低下する。輸入品の価格は暴騰し、急激なインフレに見舞われる。基軸通貨とは貿易や投資の決済に使われる通貨で、現在の世界では、それにまだドルが多く使われており、各国はドルを手にすることで他国との取引が行えるために、ドルを買おうとする。この他国によるドルへの志向がドルの暴落を抑えて来た。中国の経済規模が巨大化し、米国や欧州が中国と対立を強めるようになると、中国は欧米から他の地域に経済圏を拡大し、それによりドルから少しずつ離れ始めている。中国は世界の工場であるため、原材料を輸入し、生産物を輸出する。その輸入と輸出先を変えようとしている。先進国の主要メディアは中国経済の弱点を往々にして取り上げる。しかし、米国の巨大な内外の債務についてはほとんど触れず、触れることがあっても、国内債務についてのみ触れ、ほとんど対外債務については触れることがない。米国は世界最大の経済大国であると同時に世界最大の対外債務国であり、世界最大の政府と民間の債務を抱える国である。米国政府はコロナ対策として9兆ドルを費やす。米国の国家予算は年間で5兆ドルである。政府債務はさらに増加するが、現政権は富裕層への増税を目論んでいる。そのため、富裕層は今年度に入り6000人以上が米国の市民権を放棄して、他国へ移住している。世界的な米国の巨大企業も既に何年も前に国外のタックス・ヘイヴン(租税回避地)へ逃れている。巨大な課税逃れがある米国の政府債務は日本以上に返済が不可能で、同じく日本同様に中央銀行が手を貸して、自転車操業しているだけである。迷路に入り込もうとしている先進国のコロナ対策は、特に米国の経済力を削ぎ続けている。米国中央銀行は、超金融緩和を継続している。金融緩和とは、世の中に通貨を多量に流し込むことだ。金本位制と異なり、現在の中央銀行はただ輪転機を回すだけである。社会に通貨が大量に流れれば、本来は、猛烈なインフレになる。物やサービスに比べ通貨の量が多くなるために。米国中央銀行は延々と金融緩和を続けているが、簡単にはインフレにはならなかったのは、米国には大量の通貨を飲み込む金融経済があるからだ。株式や不動産投資、新手の金融商品などに大量通貨が流れ、それらの超インフレをもたらしている。その上で、コロナ禍では、世界的な製造の低下と輸送の障害で、消費大国で輸入大国である米国の輸入品価格は上昇しており、消費者物価や生産者物価を上げて来ている。今後も金融経済ではなく実体経済でのインフレが進めば、中央銀行は金融緩和を中止し、金利を引き上げざるを得なくなる金融引きしめに転ずる可能性が出て来る。金融引き締めは、金融緩和の逆で、世の中から通貨を引き上げる。金融引き締めは、金融緩和で流れ込んだ金融経済から通貨を引き上げることになり、金融資産の収縮、暴落が発生する。現在の米国の金融資産は超インフレ状態であり、この暴落は米国経済だけでなく、世界経済へも大きく打撃を与えることになる。コロナ禍は世界経済のリセットをもたらすかも知れない。
宵待草

放漫財政と通貨

2021-05-28 19:16:12 | 経済
日本政府や東京都のコロナ対策よりもひたすらオリンピック開催にに慢心する姿勢には呆れるが、さらに呆れさせられるのは国際オリンピック委員会IOCだ。カナダの最古参の委員は「菅首相が中止を求めても、大会は開催される」と言い、委員会はオリンピック参加は自己責任で、参加選手に同意書を求めると言う。日本の実情も参加選手の立場も全く考慮しないその態度には呆れるしかない。日本の主権などIOCの前では何ら考慮されない。今月5日の米国ワシントン・ポスト紙(電子版)は「Japan should cut its losses and tell the IOC to take its Olympic pillage somewhere else(日本は損失を減らし、IOCにオリンピックの略奪をどこか他に持っていくように言うべきだ)」と題したコラムで、バッハIOC会長を「Baron von Ripper-off(ぼったくり男爵)」と表現した。世界的にも名の通った利権屋だと言うことだ。世界にも日本にも利権屋が群がっていて、その利権のために多くの犠牲者を出しているし、今後、オリンピックが開催されれば、さらに犠牲者は増えていくことになる。大阪府は秋の御堂筋や大阪の魅力を広く発信するとして、今年11月3日に「御堂筋オータムパーティー2021」を開催する予定だが、その警備及び運営等業務を電通・よしもと・電通ライブ共同企業体に計1億3420万円で委託すると言う。またしてもいつもの委託先であるばかりか、たくさんの自宅待機や施設待機を抱え、死者まで出している現在の大阪の新型コロナ感染を考えると、大阪府の予算の使い方に疑問を持たざるを得ない。ただ単にいつものように「空気が読めない」首長では済まされない。日本も世界も、経済は大きく落ち込んでいる。コロナ禍で税収が減少する中で、国家や都府県の支出はむしろ増加する。今日のブルームバーグは「バイデン大統領の予算案、年間歳出6兆ドルに拡大-28日に公表」で、米国の2022会計年度(21年10月-22年9月)予算案で、「連邦政府の歳出が6兆ドル(約660兆円)に増加するもようだ。年間の財政赤字は今後10年間にわたって1兆3000億ドルを超える見通し。」だと米国ニューヨーク・タイムズが報じたことを伝えている。昨日のブルームバーグでは「ドルの津波は止まらない-短期調達市場のゼロ金利、2022年まで継続も」と題する記事が書かれている。コロナ禍で景気が悪化したことを理由に、一昨年までの中央銀行による超低金利などの異常な金融緩和に加え、政府による財源が確保されていない純債務となる巨大な財政支出が行われ、米国ではまさに「ドルの津波」が起きている。1971年のニクソン・ショック以来、世界の通貨は金(ゴールド)の裏付けなく、際限なく発行されて来た。金融市場では短期市場で金利はゼロとなり、実体経済ではインフレが生じて来ている。資本主義経済では金利は通貨の価値を表す。インフレは通貨の価値の低下を表す。現在、ビットコインのような仮想通貨が一時に比べ下落しているが、実態のない仮想通貨などは、中国が一般の仮想通貨を禁じる声明を出しただけで、下落してしまうのだ。そして、逆に、ドルの反通貨である金が再浮上して来ている。本来であれば、金は既にもっと上昇しているはずであるが、ドルの価値が下がることで損失を被る金融界は金の先物取引で、金の先物を売ることで金価格を下げ、見かけ上のドルの価値を維持して来た。しかし、それも限界があり、あまりにもドルが大量に印刷されれば、ドルへの不安を隠し切れなくなる。さらには、金市場の世界の中心地であるロンドンで、来年1月からは英政府によるバーゼル3適用により、これまで行われて来た、裏付けとなる実物の金を保有していなくても可能であった先物売り取引が出来なくなる。EUではさらに早く来月末からの適用となる。こうなれば、金価格を意図的に抑えることが難しくなる。そして、今後ますますドル印刷は加速して行く。ドルの凋落はもう目前に迫って来ているようだ。日本の円も実態は既に凋落済みだ。日本銀行が必死に国債を買い支えて、その事実を覆い隠しているだけである。コロナ禍で苦しむ国民を放置し、利権にしがみ付くばかりの為政者たち。結局は通貨もまた犠牲になっていると言える。最後にババを引くのが国民である構造は変わらない。
上り藤(洋名はルピナスだが、日本の固有種である)

インフレにトドメを刺される債務とバブル

2021-04-27 19:13:39 | 経済
昨日の米国の株式市場では、S&P総合500種とナスダック総合がともに終値で過去最高値を更新した。コロナ禍で実体経済はまだ回復出来ていないが、マネーだけは有り余っている。1979年からの英国サッチャー政権と1981年からの米国レーガン政権の小さな政府を標榜する両保守政権は新自由主義経済を展開した。政府支出を削減し、民営化を推し進めた。しかし、両国とも、特に米国は製造業が既に衰退しており、金融商品なる新しい商品を「金融工学」により生み出し、金融経済にシフトせざるを得なかった。金融経済とはマネーゲームであり、以後、金融危機が再三訪れることになり、特に2008年のリーマン・ショック後は、中央銀行が本格的に経済を支える構造が常態化した。日本ではそれをバブル崩壊後20年も早く行なって来た。小さな政府を掲げる保守の新自由主義下で、中央銀行の大量通貨印刷が平然と行われるようになった。それを加速させたのは日米の実体経済の低迷から脱却するための政務債務の増大である。もはや小さな政府に止まれなくなり、米国で新たに政権を握った民主党はコロナ禍で、まさに大きな政府を堂々と展開し始めた。コロナ対策1.9兆ドルに続いて、8年間で2.65兆ドルという巨額の環境、インフラ投資を行う。富裕層や企業への増税により社会保障の増額も検討されている。しかし、所詮はこれらの支出を税収で賄うことは出来ないために、債務をさらに積み上げ、中央銀行頼みを続けるしかない。コロナ禍での政府支出の増大や中央銀行の大量の通貨供給で、資産市場へは利益を求める投資資金が集まり、株式を史上最高値まで押し上げている。現在、世界の債務は300兆ドル、金融商品デリバティブは1500兆ドル、未積み立て年金が500兆ドルあり、実質的な総債務額は2300兆ドルにもなっている。コロナ禍では世界の国家間の貿易や投資は減少しており、米国では物価が上昇する、インフレが生じている。米国の先にあげた経済政策は史上まれに見る規模の経済政策で、アメリカのGDPの15%にも匹敵し、EUの7%、日本の4%の経済政策と比較しても群を抜く規模で、これが国内の消費を押し上げ、物価上昇を引き起こしている。今月14日のNHKは「アメリカ 消費者物価 8年7か月ぶり上昇 急激なインフレ懸念も」で、米国の「3月の消費者物価は、前の月に比べた上昇幅が0.6%と、8年7か月ぶりの大幅な上昇を記録しました。景気の回復を反映したものですが、急激なインフレにつながる懸念も出ています。」と伝えている。月に0.6%の物価上昇は年間では7%を超える上昇である。同じ日の米国メディアProject Syndicateで、ニューヨーク大学経済学のヌリエル・ルービニNouriel Roubini教授が、「Is Stagflation Coming?(スタグフレーションが来ているか?)」と題する論を載せている。経済が停滞する中でインフレが進む状態がスタグフレーションである。教授は、保護主義、米中対立、サプライチェーンの分断、移民の制限、労働者の権利向上などが供給の急速な落ち込みにつながるため、需要が大きく落ち込んだリーマン・ショックとは異なると言う。異例の規模の財政政策と、強力な金融政策が長く続く中で、供給が急落する。公的・民間債務がすでに積み上っており(先進国でGDPの425%、世界で同356%)、長期・短期金利とも低く維持しなければ、債務の持続性を保てない。今後数年のうちに、持続的な供給減少の出現により、緩和的な金融・財政政策が、持続的なインフレを、そして最終的にはスタグフレーション的な圧力の引き金を引き始めるとして、インフレがこれまでの債券の趨勢的な強気相場を終わらせ、債券の名目・実質利回り上昇(金利上昇)が現在の債務を持続不可能にし、世界の株式市場をクラッシュさせるだろう、と述べている。世界の主要国は超低金利により支えられて来たが、インフレがやって来ると、金利は上昇せざるを得ない。中央銀行の唯一のインフレ対応策は金利引き上げである。しかし、その金利引き上げは、超低金利に支えられた債務と資産バブルを崩壊させてしまう。そのインフレの足音がコロナ禍の米国で聞こえて来た。

信号は既に赤だけになっている

2021-04-09 19:12:33 | 経済
変異株が反映されたGoogleの人工知能AIによる日本の新型コロナウイルス感染の予測を見ると、4月29日には1日の全国での新規感染者数は1万6394人となっている。1日の死者数は438人である。東京都の健康安全研究センターが発表した変異株の調査結果では、最新の変異株の割合は74.1%にもなっている。免疫回避の特性を持っている「E484K」変異は41.8%、感染力が強いと言われる「N501Y」も41.8%である。変異株が主流となった大阪府や兵庫県と同じく東京都も今後、新規感染者や死者数が急増して行く。感染症の本来の基本的対策である検査と早期隔離、治療を最初から制限している以上は、当然の成り行きである。いつまで経っても終息の影は見えて来ない。次の冬には恐らく第5波となるだろう。無論、オリンピックなどとても無理である。 今月2日の日本経済新聞は「欧州でコロナ債務「帳消し」論 ピケティ氏ら提唱 ECB総裁「考えられない」と一蹴」と題した記事を載せた。日本政府の対GDP債務残高(266% 2020年10月現在、日本経済新聞)は世界一だが、欧州連合EUでも対GDP債務残高は危機的で、イタリアは158%、スペインは121%、フランスは118%で、コロナ禍でさらに増加することは間違いない。今年2月、「21世紀の資本」で知られるパリ経済学院のトマ・ピケティThomas Piketty教授ら仏独伊スペインなどの経済学者約150人が共同で、欧州中央銀行(ECB)や各国中央銀行が保有する国債約3兆ユーロ(約390兆円)の「帳消し」を求める意見書を発表した。コロナ禍で各国債務はさらに膨らみ、債務返済はもはや不可能であり、いわゆる「徳政令」を要請した。2021年の対GDP債務はフランスとスペインがそれぞれ120%超、イタリアでは約160%に達する見通しだと言う。日本よりはるかに低い対GDP債務出あるにもかかわらず、既に現実的には返済不能の域に入ってしまった債務である。まして、日本などは全く絶望的な領域に踏み込んでしまっており、通常の税収での返済が可能な時期はずっと以前に過ぎ去ってしまっている。米国も2020年度末の政府債務残高は26.9兆ドル(約 2820兆円)であり、GDPが21兆ドルであるから、米国の対GDP債務は128%になっており、現政権の大きな政府は、今年度さらに債務を膨らまそうとしている。まともな経済学者が見れば、もはや欧米や日本の政府債務は、経済成長による税収増では対応不可能であり、何らかの「徳政令」で対処するしかない域に来てしまっている。しかも、中では日本が最悪なのである。メディアも国民もあまりにも楽観的過ぎる。米国の中央銀行の異常な金融緩和と債務を頼りの政府支出で、株式初め資産バブルが凄まじい。先日、デリバティブと言う米国の金融商品の一端が崩壊し、日本の野村証券やみずほ銀行が大きな損失を抱えた。どこまでそれが波及するか分からないが、2008年のサブプライムローンと同じになるかも知れない。米国の投資会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創設者であるハワード・スタンリー・マークスHoward Stanley Marks氏は、今月6日の米国Bloombergのインタビューで、「ある国が莫大な債務を増やし、莫大な貨幣を増発し、借金返済・借換え・利払い・財政赤字のために莫大な借金をする時、条件反射的な反応は、ドルの流通量が多すぎるためにドル安が起こる、というものだ。米国は、国民から財政赤字分を調達するのが困難になる。」と語った。既に資本主義主要国は実際には機能不全に陥っているが、中央銀行がとりあえず大量に通貨を発行することで表面上を繕っているだけで、いずれそれも維持出来ない時が遠からずやって来る。米国の株式などの資産崩壊がきっかけになるか、コロナ禍がきっかけになるか。その時、再びの中央銀行の大量の通貨発行ではとても凌げない。通貨への信認が地に落ちているからだ。「赤信号みんなで渡れば怖くない」をいつまでもは続けられないのだ。

「ドルの脆弱な覇権」

2021-04-05 19:16:52 | 経済
日本の政治の劣化は、何も与党だけではない。これほど劣化の激しい与党を相手に何も対抗策を講じうことが出来ない野党も同じく劣化は激しい。世界を見れば、政治の劣化は日本だけではないようだ。米国は二大政党制でやって来たが、主に民主党は大きな政府、共和党は小さな政府を志向して来た。民主党が革新で共和党が保守と言う見方が一般的だが、近年、「戦争」・「対立」と言う面で見ると、民主党の方が交戦的であり、軍事費にも多くの予算を注ぎ込んでいる。以前にも書いたが、共和党に属する前大統領の功績として、戦争をしない、米軍の引き上げを進めたことだろう。当然、軍事費の縮小につながる。しかし、戦後まもなくアイゼンハワー大統領が警告した通りに巨大になった軍産複合体は、トランプ前政権の米軍の世界での縮小には応じられず、何としても民主党政権を樹立せざるを得なかった。米国は多くのメディアも「革新」であり民主党支持である。現在の民主党政権は予想通り、世界で「民主主義」の名で対立を深め、北朝鮮は無論、イランやロシア、中国へも「制裁」を強化している。前政権は孤立化を強めたが、現政権は、同盟を求めている。1971年のニクソン・ショックで米国の経済力の凋落は明らかになっていたが、マネーゲームでしかない金融経済でとりあえずの延命を図った。しかし、2008年のリーマン・ショックはその金融経済が限界であることを示した。ここで米国中心の「資本主義経済」は大きな修正を行わざるを得なくなった。資本主義は自由市場が原則である。しかし、2008年以後、中央銀行が大きく介入せざるを得なくなり、資本主義の建前は大きく崩れた。既に米国はこの時点で経済では世界の覇権国の地位を失った。ちなみに、日本の資本主義の崩壊はバブル崩壊による。日本の資本主義は中央銀行である日本銀行の介入がなければ存続し得なくなってしまった。それを資本主義と言えるかどうかは別として。今月1日の日本経済新聞は、「世界の株式時価総額が3月末時点で、約106兆ドル(約1京1600兆円)と過去最高を更新した。」とし、「このうち米国が同7割増の約45兆ドルだった。」、「過熱感は否めない。国際通貨基金(IMF)によると世界の名目GDPは83兆ドル(2020年時点)。時価総額がGDP(国内総生産)よりも大きい。」と書いている。世界では昨年初めから新型コロナウイルスが拡散し、主要国は軒並み経済が落ち込んだ。米国の2020年のGDPは74年ぶりと言うマイナス幅であった。つまり、米国は実体経済がコロナ禍でマイナスに落ち込んでいる時に、株式は70%も増加していた。米国の2020年のGDPは20兆9349億ドルである。米国の株式はGDPの215%にもなっている。時価総額をGDPで割って算出する「バフェット指標」は100%をはるかに上回るバブル状態である。実体経済が悪化していても、中央銀行FRBが超低金利でドルを大量に注入し、株価を押し上げて来た。もうしばらく前から「中央銀行相場」と言われて来ていたが、コロナ禍で、その中央銀行頼みの政府による巨額コロナ対策費がさらに株式高騰に拍車をかけた。中央銀行による金融政策も政府による財政政策もともに富裕層により恩恵を与えた。感染を広げるだけの日本の「GO TO」キャンペーンなど困窮者には何の恩恵もなく、関連業界を潤すだけである。そのための途方もない財政支出のツケは将来の増税として国民に回されて来る。本来のコロナ対策にはほとんど財政が回されず。米国も日本ももはや中央銀行の支えなくしては、政府財政も市場経済も立ち行かなくなってしまった。しかし、その中央銀行が発行する通貨には何の裏付けもない。自国通貨を大量発行し、債務不履行デフォルトとなった国は、いくつもある。ただ、それらの国は、ドルを保有していなかったために債務不履行となった。米国は支払いにドルを使える特権があるためにこれまで債務不履行を免れて来た。しかし、既に、ドルへの信認は低下している。世界の著名専門家が投稿するNPOであるProject Syndicate(プロジェクト・シンジケート)に、3月30日付けで、米国ハーバード大学の経済学者、ケネス・ロゴフKenneth Saul Rogoff教授が「The Dollar’s Fragile Hegemony(ドルの脆弱な覇権)」と題して投稿している。この投稿の中で、教授は「19世紀終わりに世界最大の貿易国として米国が英国を凌駕したのと同様、中国ははるか昔に同じ物差しで米国を抜いていた。」「今日のアジアのドルとの密接な関係と、1960年代・1970年代初めの欧州の状況とは驚くほどの類似点がある。」として、かって欧州がドルからユーロに転換したように現在のアジアでもドル離れが進んで行き、中国の通貨である人民元が為替市場で自由に変動するようになれば、「ほぼすべてのアジア諸国は中国に従うだろう。」と書いている。そうなれば、ドルは基軸通貨の地位を失い、通貨としての価値が急落するだろう。コロナ禍はまさしくそれを加速てもいる。
シデコブシ(幣辛夷)