釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

山野草の生命力

2018-04-28 19:16:01 | 自然
以前、北海道に住み始めた頃、地元の人から北海道は四季がはっきりしていると言われた。そう言われると、怪訝な気持ちになった。全国各地に住んだが、北海道の印象は逆に四季がはっきりしないと感じていたからだ。どうも厳しい冬が温かい春と涼しい夏と対比されて、地元の人には四季がはっきりしていると感じられていたのかも知れない。東京以南に長く住むんでいたので、北海道は春と夏がはっきりしていないと感じた。春の花が初夏に咲いていたりした。秋も寒さから言えば四国の冬に感じることが多かった。11月半ばには降った雨が夕方には凍ってしまう。そんな北海道と東北のこの岩手を比べると、北海道よりずっと四季の違いがはっきりしている。それでいて、北海道ほどには冬は寒くなく、夏は東京ほど暑くはない。この気温の変化が多分植物にはとても適しているのだろう。岩手に来て驚いたのは、山野草がたくさんあることだった。山野草と言うことは、それらが山野に自生すると言うことだ。山野草に魅入られ、その花たちを写真に収めるために、庭で育てることを始めた。育て始めてわかったことことは、同じ山野草でも温度だけでなく、土が大事だと言うことだった。あらためてホームセンターなどの植物用の土を見てみると、何種類もある。ほとんどの山野草はホームセンターが野菜と花に共通の土として用意してくれているもので大丈夫だが、一部の山野草だけはやはりそれ用の土が必要になる。特に、野生蘭の王者と言われる敦盛草はそれなりの土が必要になる。敦盛草の保護活動が盛んな隣の住田町では道の駅や産直で、そのための土が販売されている。敦盛草はすでに絶滅危惧種に指定されている。一昨年まで住んでいた旧居の庭で発泡スチロールで敦盛草を育てていたが、株分けを怠ったためにダメにしてしまった。仕方なく、昨年、住田町でまた鉢植えの敦盛草を買った。花が終われば発砲スチロールに植え替えようと思っていたが、時期を失してしまった。またダメにしてしまったかと諦めていた。先日、庭のいくつかの山野草の間に置いておいたその鉢をみると、小さな芽が出て来ていた。こう言う時はとても感動させられる。植物の生命力に打たれる。家のすぐそばの職場の関連施設に、遠野からこられている方がいる。この方も山野草を育てられており、先日話した際に、敦盛草があるのを見られると、簡単に盗難に会うと言う話を聞かされた。旧居の庭は周りに大きめの木があるため庭は外からほとんど見えないが、現在の家は十分に外から庭が見える。悩ましいが、今のところ隠すようなことはしないつもりでいる。自分でも毎日目にすることが出来る位置だからだ。来月には本格的な山野草の時期がやって来る。近辺の産直でもたくさんの山野草が安く売られる。昨日見ると、2000年前の種から蘇った大賀蓮も巻き込んだような新しい葉が見えて来た。やはり希少な早池峰薄雪草も葉を伸ばして来てくれている。
朝焼け

米国長期金利上昇

2018-04-27 19:09:44 | 経済
米国の長期金利の指標である10年もの国債の金利(利回り)がついに3%に迫っている。国債の金利は国債を売る人が多くなると上がってくる。米国の債券投資の新たな王者と目されている投資家のジェフリー・ガンドラックJeffrey Gundlachは、以前から米国の株式の下落の始まりは10年国債の金利が3%を超えることが引き金になると言って来た。投資家たちが資金を株式から金利を求めて債券に移し替えるようになるからだ。日本の10年もの国債は相変わらず0.05%と言う超低金利のままである。資本主義社会においては金利はとても重要である。生産が拡大されるためには資金が必要で、その資金は国民の預金で賄われて来た。預金を奨励するのが金利である。超低金利になれば、国民は次第に預金しなくなる。とは言え、日本は米国などに比べると、まだまだ多くの人が預金をしている。日本を含めた先進国の経済成長は2000年代に入り、極めて低くなった。そのため賃金もあまり増えておらず、特に日本は2016年には2000年よりも実質賃金が低下している。金利は経済成長とも相関しており、経済が成長しておれば、金利も上がってくる。実際、日欧米が低金利である現在、アジアの他の国では金利はもっと上がっている。2018年3月時点で、中国4.35%、インド6.0%、ロシア7.5%、インドネシア4.25%などである。新興国ブラジルは6.75%だ。新興国はその名の通り従来の先進国より経済成長している。特にリーマン・ショック後、先進国は景気後退した経済を支え、成長を促すために中央銀行が通貨を大量発行するだけでなく、金利を極端に下げて、資金を実体経済に流そうとした。しかし、実体経済には新たな収益につながる生産がなく、中央銀行の思惑通りには実体経済へ資金が流れず、むしろ資産である株や債券へ流れ、リーマン・ショック時を超える資産バブルを生み出してしまった。バブルが弾けて景気後退に入れば、中央銀行は金利を下げる必要に迫られるため、そうした場合を考えれば、金利を下げる余地を作っておかなければならない。それを急いでいるのが現在の米国の中央銀行であるFRBである。今のうちに金利を上げておこうとしている。欧州の中央銀行ECBもFRBに続こうとしている。しかし、いまだに日本銀行だけはこれまで通りの超低金利を続けようとしている。今では欧米はむしろ日本の超低金利の持続を願うまでになっている。日本の超低金利を利用して、あくまでバブルを膨らませたい。超低金利の「円」を借りて、欧米の株式や債券を買う。2013年から始まった日本銀行による「異次元」の金融緩和(通貨の大量発行と超低金利)は5年経ってもその効果は見られなかった。にも関わらず、日本銀行は方針を変えず、超低金利を維持し続けている。もともと日本の場合は、実体経済の高揚が狙いではなく、政府債務の軽減にある。金利が2.5%以上になると新規国債と借換債合わせて145兆円の金利支払いが困難位なる。金融分析の東短リサーチの加藤出氏は、日本銀行が市中銀行から買い取った長期国債の代金は、結局は市中銀行が大半を日本銀行に預けており、日本銀行の当座預金として積み上がって、金利の少しでも高い長期国債から金利の低い超短期国債に変換されたようなものだと述べている。これを「借金の短期化」と呼んでいる。加藤氏は「借金の短期化」は「円」への信用が損なわれた時、長期よりも先に短期の金利が上昇するため、かえって、危険であると言われる。日本銀行は実体経済のためではなく、政府債務のために今の政策を続けており、そこから抜け出すことがますます難しい状況に追い込まれて来ている。
染井吉野より少し遅く咲いて来た松月桜

国民負担で進められる原発輸出

2018-04-26 19:13:22 | 社会
日本国内では狭い国土に54基もの原発や再処理工場があり、新たな地に原発を建設する余地がなくなって来たため、現政権は海外に原発建設を進める方針を取った。原発は安い電力を供給すると言う神話が崩れ、かえって高コストの電力であることが明らかとなった。2013年に日本はトルコへの原発輸出を締結した。総事業費を企業連合の出資で3割、国際協力銀行などの融資で7割を捻出し、出資分のうち51%分を三菱重工、伊藤忠、仏電力大手GDFスエズ(現エンジー)、49%分をトルコ国営電力会社のEUASなどが分担すると言うものだった。しかし、事業化調査の過程で安全対策費が大幅に増加し、総事業費が当初の2倍強の5兆円超に膨らむことが判明し、伊藤忠商事が離脱することになった。黒海沿岸のトルコのシノプで、原発4基(出力計450万Kw)の建設を予定している。英国のウェールズ・ウィルヴァでは、日立製作所によるウィルヴァニューイッド原発建設計画が進められているが、このために3メガバンクと日本が100%出資している国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が、総額1.5兆円規模の融資を行う。しかし、事故などによる貸し倒れが生じた場合は、日本政府がメガバンクの融資の全額を債務保証すると言うものだ。総額3兆円に上る計画だが、残りの1.5兆円は政府系の日本政策投資銀行、日立製作所、日本原電、中部電力、その他の企業が出資する。2011年の東京電力福島第一原発事故後、福島では小児甲状腺癌が異常に多発しているが、福島県は原発発事故の影響とは決して言わない。米国の西海岸でさえ、海水中の放射性物質は事故前の3倍に達している。海洋へは現在もなお放射性物質が流出し続けている。原発は建設には地域への補助金があり、一度事故を起こすと巨額の補償費を要する。福島の事故では、廃炉と補償費が当初予想の2倍となり20兆円と見積もられている。おそらくこの額さえ、いずれ修正されて、さらに膨らむだろう。廃炉の予定すら立たないからだ。メルトダウンした燃料棒が未だにどこにあるか分からない。日本国内で原発を推進する中心は経済産業省である。政治家は原発に潜在的な核兵器保有を認めているために推進しようとしているが、経済産業省は原発をめぐる利権にしがみついている。政治家や官僚が国民に負担をさせることなく原発を推進させているならまだしも、常に何らかの国民の負担の上で、推進している。金銭的巨額の負担だけでなく、最悪なのが、事故による悲惨な身体的負担である。福島の事故は、廃炉の目処も立たず、身体的被害の終息もうかがえない。
今朝近所で出会ったメジロ

ドルが基軸通貨であることのジレンマ

2018-04-25 19:23:30 | 経済
日本貿易振興機構、いわゆるジェトロJetroの今年3月15日時点の米国の基礎的経済指標によれば、2016年の対外債務残高は30兆ドルとなっている。物やサービスの取引、投資などを含めた各国間の収支である経常収支が、米国は1980年代はじめから毎年のように赤字を続け、それが積み上がったのが30兆ドルである。昨年5月25日、ロイター通信は「The next financial crisis could be in forex(次の金融危機は為替になる可能性がある)」として、基軸通貨ドルが金融危機の引き金になる可能性を取り上げている。記事では二人の経済学者の考えを紹介している。スコットランド出身の哲学者で経済学者のデビッド・ヒュームDavid Humeは1752年に、世界全体で見れば、輸出と輸入の総量は同じだが、国家単位では、慢性的な貿易赤字を抱える可能性があると言う根本的な問題を指摘した。この時代は貿易赤字国は相手国にゴールドで支払っていたが、現代では基軸通貨であるドルで支払われる。従って、現在の経常収支が赤字を続ける米国は、国内の経済のためだけでなく、他国への支払いのためにもドルを大量に印刷しなければならない。通貨は大量に出回れば出回るほど、本来はその通貨の価値が低下する。しかし、ドルは長期で見ると確かに低下はしているが、世界中に流れているドルの量を考えると、まだまだ本来よりドルの価値は高く維持されている。ドルを受け取った相手国は、先々の貿易の支払いのために予備として、準備通貨と言う形でドルを保有しておかなければならない上に、受け取ったドルを米国の債券や株式に投じたりする。ドルへのこうした需要がドルを実際以上に価値を高めている。1944年に英国のポンドに代わって、ドルを世界の基軸通貨とするブレトン・ウッズ協定が結ばれた。1961年、米国エール大学のロバート・トリフィンRobert Triffin教授は、このブレトン・ウッズ協定の矛盾を指摘した。ドルが基軸通貨であるためには、米国から諸外国にドルが流れ出続けなければならない。これは米国にとっては経常収支が赤字であり続けなければならないことを意味する。大量のドルが世界に流れれば、ドルの価値が低下し、ドルへの信頼が低下する。その信頼を維持しようと経常収支を改善すると、ドルが諸外国へ流れなくなり、結果的に、基軸通貨の役割が果たせなくなる。これが教授の指摘した矛盾であり、一般に、トリフィンのジレンマ Triffin dilemmaとして知られる。1962年、フランスの経済財政相となった、後の大統領ジスカール・デスタンGiscard d'Estaingは、米国が赤字の経常収支であっても世界がドルを求めることを評して、「常軌を逸した特権」と言っている。世界銀行によると、国際貿易が世界のGDPに占める比率は1960年の17%から、現在では45%に達していると言う。この貿易の拡大は、米国外で保有されているドルが増加していることでもある。そして、その状況で通貨危機が来れば、それは破壊的なものになる。
今も庭で咲く御殿場桜

東北の伝承

2018-04-24 19:15:10 | 歴史
東北へ来て、いくつかの新たな発見に出会ったが、その一つに『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』をはじめとする和田家文書である。これを重要な資料とした、亡くなられた古田武彦氏を快く思わなかった人たちが偽書として広めた。しかし、偽書とする稚拙な「証拠」は裁判でことごとく否定された。『東日流外三郡誌』の「東日流」は「つがる」と読ませる当て字である。安日彦(あびひこ)・長髄彦(ながすねひこ)兄弟は筑紫(ちくし)の日向の日本国(ひのもとこく)から津軽に逃れた。「ひのもと」は「日下」とも書く。「東日流」は東の筑紫の日向の日本国から津軽に流れたことを意味している。福岡市の吉武高木遺跡は日本最古の三種(鏡・玉・剣)の神器が見出された遺跡で、その近くには日向(ひなた)山・日向(ひなた)峠、日向(ひなた)川がある。そして筑前・筑後合わせて5箇所に日本(ひのもと)地名が残されていた。和田家文書を書いた中心人物である三春藩主の義理の息子である秋田孝季(あきたたかすえ)は、安日彦・長髄彦兄弟が追われたのは神武により大和から津軽へ逃れたと考えたようだが、古田氏は和田家文書の内容から、大和ではなく筑紫からとする。北部九州の水田稲作で栄えていた日本国(ひのもとこく)へ、アマテラスの命でニニギが侵略して来る。安日彦・長髄彦兄弟は対馬海流に乗って東へ逃れて行った。津軽に上陸すると、それまで行っていた稲作を何とかそこに定着させた。青森県の水田稲作遺跡である砂沢遺跡・垂柳遺跡の水田遺構は日本最初期の水田稲作遺跡である板付遺跡と基本遺構が共通していると言う。水田遺構では関東や東北の他地域より青森県の方が早い。つまり、水田稲作は九州から東へ順次伝わったのではない。安日彦が王となり、長髄彦が副王として、阿蘇部族、津保化族、中国の晋の郡公子らと荒覇吐(あらはばき)王国を建立し、さらには陸州の麁族(あらぞく)、羽州の熟族(にぎぞく)などを加え、富士山を含んだ安倍川から越の糸魚川を境とする、領内185族を併せた大国となる。中国の春秋時代の晋は紀元前11世紀に成立し、紀元前376年まで続いた。日本の水田稲作は紀元前900年頃に始まったとされるので、ニニギの北部九州侵略は紀元前900年~紀元前800年頃だろう。この頃に安日彦たちが津軽へ渡り、乱を逃れた晋の郡公子たちと合流したとしても符合する。北部九州で水田稲作を始めたのは日本国(ひのもとこく)の人たちであった。旧唐書倭国伝には、倭国は古の倭奴国であると書かれているところから、ニニギは北部九州を侵略後、国名を倭奴国としたのかも知れない。その後北部九州は倭奴国から倭国となり、倭国から新天地を求めて、神武が大和に至り、大和での支配は交代が何度か繰り返された後、701年より九州で没落した倭国に変わり大和が中心の日本(にほん)国が誕生した。
白根葵

腐敗の浸透

2018-04-23 19:20:24 | 社会
週末は気温が上がり、市街地周辺の山々には淡い緑と山桜が織りなす「東山魁夷」の世界が広がった。植林された杉がなければ、さらにその美しさが増していただろう。東北の山はこの時期と、秋の紅葉の頃が綺麗だ。釜石は平地の桜が終わり、山桜の時期となったが、隣りの遠野では平地の桜と山桜が同時に咲き始めた。そして同じ山桜でも遠野の方が釜石より桜の色が濃く、引き立つ。昨日、日中のウォーキングの際、甲子川沿いに歩いていると、今年初めて、カジカガエルの透き通った声を聴いた。近くからはウグイスの声まで聴こえて来た。 今朝の東京新聞は「疑惑・不祥事 3カ月で「13」 異常事態の安倍政権」なる記事を乗せている。政権を支える政治家や官僚の疑惑や不祥事が頻発する異常を指摘し、与党内からでさえ「政権の末期状態」と言う言葉が出ていることを報じている。しかし、不祥事が頻発している異常は何も政権だけではない。今月20日、東京商工リサーチは、「不適切な会計・経理の開示企業」を公表した。今年3月末までの1年間に、「不適切な会計・経理」処理が発覚した企業は64社に上り、この10年で2.37倍であり、過去最悪となっている。昨年10月17日には、神戸製鋼のデータ改竄をきっかけに、英国BBC放送は「日本企業に一体何が起こっているのか」を報じている。2014年のタカタのエアーバッグ問題、2015年には東洋ゴム工業の免震ゴム性能データ改竄、東芝の粉飾決算、電通の女子新入社員の違法残業の繰り返し、2016年には旭化成子会社の不正データ流用、三菱自動車の燃費データ改竄、2017年には商工中金の書類改竄、富士ゼロックス販売会社の不適切会計処理、日産自動車や富士重工の無資格社員による完成検査など、大企業の不祥事も後を絶たない。政官財の全てでモラル・ハザードを生じている。企業の不正は何も日本に限られていない。米国の巨大企業も税逃れのためにタックス・ヘブンを利用しており、2015年にはドイツのフォルクスワーゲン(VW)が、排ガス規制を逃れるための不正を行っていた。かっての日本は高品質で安いことが各国からの信頼を得ていた。不正会計・経理も希であった。2000年代の新自由主義の蔓延とともに、企業は製品開発より目先の利潤に重点をおくようになり、それとともに政治にもそれを求めるようになる。非正規雇用の拡大はその典型である。企業努力を怠り、政治に安易な利潤獲得を求め、政治も献金をあてにして、それに応える構造が定着して行った。政治家は官僚を思い通りにさせるために人事権を獲得し、官僚までもモラル・ハザードが浸透して行った。日本という国は江戸300年の官僚統治システムが明治で強化され、戦前戦後と受け継がれていた。官僚には政治ではなく、自分たちが日本を支えていると言う良くも悪くも自負があった。高度経済成長が達成されると、その自負が驕りとなり、モラル・ハザードを入り込ませた。民間や政治は官の緩みを敏感に感じ取り、緩みが政治や民間へも伝播して行った。新自由主義はその伝播を加速した。
周辺の山

金利上昇で破綻がやって来る

2018-04-21 19:16:28 | 経済
今年2月2日の日本経済新聞は「「金利版2025年問題」 成長で国債費膨張 」なる記事を載せた。みずほ証券の予測では、「社会保障には25年に団塊の世代が全て75歳以上になり医療・介護費用が急激に増える「25年問題」がある。さらに国債費の増大が重なる恐れがあり、「金利でも25年問題とも言うべき事態を警戒すべきだ」」とある。「財務省が国会に出した資料によると、21年度に名目の経済成長率が2%、長期金利も同じく2%伸びた場合、国債費が7兆円近くも増え、税収の伸びを大きく上回ってしまう。」 証券会社や日本経済新聞は政権や財務省への「忖度」で、国債に代表される政府債務の深刻さをこれでも控え目に報じざるを得ない。2018年度の一般会計では、税収が59.0兆円しかない。新規に発行が予定されている国債は33.6兆円で、その他収入4.9兆円を合わせた97.7兆円が本年度の収入予定となっている。2017年度の政府債務(国・自治体)は1087兆円なので、2018年には新規に発行される33.6兆円の国債と合わせて1121兆円になる。政府の予算には国会で審議される一般会計と国会では審議されず、財務官僚が管理する特別会計があり、その規模は一般会計の2倍である。2017年度で見ると、国債の償還額、つまり返済額は119兆円となっているが、そのうちの106兆円は借換債で賄われている。返済のための新たな借金だ。純粋に返済された額はわずかに13.7兆円しかないのだ。2017年度の国債残高は960兆円であったが、それに対する利払いは9.9兆円しかない。平均で1.03%と言う低金利状態だから、これだけのわずかな利払いで済んでいる。米国の10年国債は現在金利(利回り)が2.92%まで上がって来ている。日本の10年国債は0.05%に日本銀行の買い入れにより抑えられている。今後、日本でも金利が上昇するようになって、米国並みになるとすると、日本銀行は買い入れた国債の2割の額を失い損失となる。平均金利が3%にもなれば、政府の利払い費は3倍になる。日本銀行にとっても政府にとっても超低金利を維持せざるを得ない。しかし、長引く超低金利は市中銀行を圧迫している。市中銀行は利ざやが重要な収益源である。超低金利では利ざやが極めて少なくなる。少しでも高金利・高収益につながる可能性のある米国への投資へ向かわざるを得ない状態になっている。日本の現在の超低金利は従って、日本銀行や日本政府だけでなく、米国の債券や株式をも支えている。ただ米国はすでに債券も株式もバブル状態になっており、それに比べると日本の株式は米国ほどの高止まりではないため、これを割安と見た米国の資金が日本株を買っている。日米ともに国の経済の今後の方向は共に金利がどこまで上がって行くかにかかっている。米国の著名投資家は米国の10年国債の金利が3%を超えると、株式の暴落が始まると見ている。投資家たちが金利の上がった債券へ株式から資金を移すため、株式暴落の引き金を引くと見ている。
タンポポ

自然の豊かさを支える食物連鎖

2018-04-20 19:11:02 | 自然
今日は青空がさほど広がっているわけではないが、日射しもあり晴れて、気温は17度まで上がった。もう毎日のように家の近所でも、職場近辺でもウグイスの声を聴くようになった。桜はかなりちって、若葉が出始めている。東京ではもうツツジが咲くと言う。家の山野草も翁草や白根葵などが咲き、早池峰薄雪草も葉を伸ばして来ている。職場の裏山を見ている時に、4頭の鹿を見付けた。ちょうどそこへ岩手県の北部出身の方が来られ、「熊を見たことがありますか?」と聞かれた。釜石へ来て間も無く、この裏山の木に子熊が上っているのを見たことがあった。その前後にも大船渡との中間の国道を夏毛の熊が横断するのを見かけている。近くにいる鹿を教えてあげると、県北では鹿は滅多に見ることはなく、ニホンカモシカばかりだとのこと。釜石へ来た頃、五葉山がニホンジカの北限だと言われていたが、2010年には青森県八戸市の郊外で2頭のニホンジカが目撃されている。イノシシもかっては岩手にはいなかったが、今では釜石でも確認されている。職場の裏山だけでも目撃した動物は、ニホンジカ、ニホンカモシカ、熊、リス、タヌキがいる。これらの動物がやって来るのは、それだけ餌が付近の山にあるからだろう。頻繁にやって来るニホンジカは山奥だと、時期にもよるが、むしろ猟師に狙われるが、市街地近くだと禁猟になっているため、安全なのだ。この職場の裏山を見てるだけで、いかに岩手の山が豊かであるか分かる。先日、家のそばにある職場の関連施設の方と話す機会があった。その方は遠野から来られている。この方の話では、今でも山には敦盛草が自生しているのだと言う。この方は季節になると山へ入り、山菜や山野草を採って帰り、家で育てるのだそうだ。一部携帯に収めた写真を見せてもらった。熊や体力を考えるとさすがに自分で山に入る気はしないが、地元で山をよく知る人が羨ましくなる。何年か前、遠野の郊外の立ち木に埋れかかった遺跡を見に行った時に、近くで一輪草や延齢草が自生しているのを見て、感動したことがある。片栗の花は釜石の市街地に近い山裾の何箇所かで自生している。山野草は岩手では主に5月にならないと見られない。岩手の山を見ていると、ほんとうに豊かで、その豊かさは動物と植物が互いに助け合って共生することで維持されていることがわかる。動物たちは植物から栄養を与えられ、植物は土壌を肥やす動物たちの糞などで栄養を与えられている。そして、同じ植物でも秋になると紅葉し、冬には落葉してしまうものでなければ、この豊かさは生まれて来ない。
裏山の鹿

金利が生み出す経済循環

2018-04-19 19:11:49 | 経済
資本主義とは基本的にお金がお金を生むと言うものだ。成長が見込まれる企業への投資がその企業の株式の購入になる。実際にその企業が利益を上げ、成長すれば、株式購入者が増え、株価は高くなり、株式を購入した「投資家」も利益を得る。まさにお金がさらなるお金を生む。本来であれば、企業の成長業績が株式購入者を引き寄せるが、バブル状態になると、企業の成長業績とは無関係にその企業の株価だけが上昇するようになる。世界大恐慌を含め、資本主義では景気のいい時と悪い時が交互にやって来る。専門家はこれを景気循環と称する。この景気循環は、しかし過去の歴史を振り返ると、必ず金利の動きと関連して来た。金利が下がれば、個人がお金を銀行から借りることが多くなり、企業も借り入れを多くする。これにより物を買ったり、家を建てたり、新しい工場が作られたりして、景気が良くなる。要は物が買われることが多くなるために世の中でお金がたくさん回る。しかし、物がたくさん買われることで、物価も次第に上昇して行く。こうなると、金利も上がって行く。中央銀行は市中銀行へお金を貸す役割を持っていて、その時の金利により、世の中の金利をコントロールしている。公定歩合と呼ばれている。景気が加熱して実際の企業業績以上に株価や不動産の価格が上がると、加熱を抑えるために中央銀行は公定歩合を引き上げる。しかし、この中央銀行の金利操作は思い通りにはならない。金利の上げ下げのタイミングが難しいからだ。過去の世界大恐慌やバブル崩壊は全て、この金利操作のタイミングに問題があった。日本は戦後、高度経済成長により1965年11月から1970年7月まで、イザナギ景気と言われる好景気をもたらし、1968年にはドイツを抜いて世界第2位の経済大国となった。1979年に『Japan as Number One』が米国の社会学者エズラ・ヴォーゲルEzra Vogelにより著されている。1965年以降日米間での貿易では米国が赤字となっり、以後赤字は急速に増えていった。このため1970年代から1980年代にかけて日米貿易摩擦が生じ、米国では日本製品により市場を奪われた企業の従業員の怒りが爆発している。1981年にレーガン大統領が登場した米国ではインフレが起きており、そのため金利は20%にもなっていた。世界中からこの金利を求めて米国にお金が集まり、そのためドルが買われ、ドル高になり、これにより米国製品の輸出が減少し、輸入が増加、貿易赤字が一層拡大した。1985年、米国は英・仏・西独、日本を集めてプラザ合意を行った。この時の標的は実質的に日本であった。ドル安・円高を日本に飲ませた。しかし、日本は円高により輸出が減り、円高不況に陥るのを恐れて、国内の金利を下げて行く。この金利低下が後の1991年までのバブルを導いた。高騰した不動産価格への融資規制や金利を急速に上げたことで、そのバブルも崩壊し、失われた30年に突入することになった。2000年代の新自由主義の蔓延が、それまでの勤労者への所得配分を減らしたため、GDP国内総生産の6割を占める消費が伸びず、実体経済は低迷した。経済を回復させるために金利は下げられて行ったが、勤労者の所得が増えない状態が維持されたため、金利を下げても効果はなく、2013年には膨らみ過ぎた政府の借金の金利のためにも超低金利を導入せざるを得なくなる。日米ともに低い金利は資産である不動産や株式にバブル状態を再びもたらしているだけで、勤労者所得は増えないため、消費は弱く、実体経済は低迷が続く。ここ1年以内に米国の歴史的な規模に膨れ上がったバブルの崩壊への扉が開き、崩壊の爆風で世界経済は壊滅的な状態になるだろう。
春の彩り

借金経済

2018-04-18 19:15:02 | 経済
歴史上、世界の名目GDP(国内総生産)の総額を、株式の総額が超えたのは2008年のリーマン・ショック直前だけであったが、昨年同じように世界の株式の総額が名目GDP総額を上回った。いずれも80兆ドル規模であるが、現在は株式がさらに上昇している。すでにバブル状態であることははっきりしている。2008年当時は60兆ドル規模であった。しかもその頃と現在の大きな違いは、現在ははるかに債務の規模も大きいと言うことだ。現在の世界の総債務は237兆ドルで、1年間に21兆ドル増えている。8.8%の増加であるが、世界のGDPは2~3%の増加でしかない。収入より借金の方がはるかに早いスピードで増えている。これ自体、とても持続不可能である。債務、借金には金利が付く。現在の金利は世界的にも超低金利である。長期金利の代表である10年もの国債の利回りでも米国が2.83%であり、日本だとわずか0.03%でしかない。金利が上昇してくれば、債務の返済が苦しくなり、債務不履行が続出するのは目に見えている。そして、金利上昇の兆しはすでに出て来ている。2015年から米国は金利をわずかずつだが上げて来ており、最近では銀行間の貸し借りの金利の基本となるLIBOR(London Interbank Offered Rate)が2015年末の0.3%から今は2.3%にまで上昇して来ており、これが経済の伸びにブレーキをかけ始めて来ている。1980年代からの世界経済は金融経済にシフトし、お金がお金を生む仕組みが米国を中心に作り出された。元手の何十倍もの投資を可能とする金融商品などが出来たために借金額が膨れ上がり、しかも中央銀行はその金融経済を支えるために、金融政策の基本である金利を極めて低く設定した。低い金利は政府の借金をも助けたために政府は財政に対して安易になり、各国ともさらに財政赤字を膨らませて来た。政府も民間も超低金利に促されて借金に無感覚になり膨大な債務が積み上がっている。特に米国ではそれが顕著だ。世界の株式をリードしているのも米国であり、その米国の株式は企業の自社株買いで支えられており、その資金はやはり超低金利の融資が賄っている。米国も勤労者の実質賃金は日本ほどひどくはないが、やはり増えておらず、大型小売店の倒産や縮小が続出している。製造業も芳しくなく、自社株買いで、業績とは関係なく株価だけを高めて、好景気を装っている。有史以来の膨大な借金の上に築かれた経済が現在の世界の経済である。土台の借金は金利上昇で、簡単に崩れ去る。このような状態になってしまったのは、裏付けなく紙幣を増刷出来る中央銀行の在り方である。典型的なのが米国で、米国は政府債務が21兆ドルに迫り、対外純債務が8兆ドルある。しかし、ドルが基軸通貨であるため、各国は貿易の決済などのための準備通貨としてドルを持たざるを得ず、ドルは米国内だけでなく、世界中で持たれている。そのためドルへの需要が絶たず、ドルの価値が維持されているが、本来ならこれだけの借金のある国の通貨は暴落しており、ドルの価値の維持は出来ない。基軸通貨を維持して、中央銀行は膨大なドルを印刷することで現在の経済を支えている。米国の中央銀行にとってドルの価値を維持するために基軸通貨を守り、ゴールドの価値を下げておくことが、暗黙の使命となっている。
シデコブシ