米国トランプ大統領は白人労働者の期待を得て当選した。そのため、その労働者の職場を確保するために貿易戦争を始めた。貿易戦争が米国の製造業の復活につながると考えてのことだ。しかし、世界の歴史は貿易戦争が世界経済の停滞をもたらすことを示しており、実際、現在の世界経済はそのようになって来た。今月19日、世界貿易機関WTOは、19年1~3月期の世界貿易予測指数が96.3となり、2010年3月以来の低水準になると報じた。世界経済を牽引して来た中国の落ち込みが響き、日本の輸出も減少し、20日の財務省公表の1月の貿易統計は、中国向けの輸出が前年同月比で、2018年12月の7.0%減に続いて17.4%減と減少が加速している。米国に投じられていた中国資本も引き揚げられ、米国各主要都市で住宅価格が低下し始めて来た。米国の消費の低迷で小売店チェーンの閉鎖も生じている。景気指標となる米国の貨物輸送量も減少している。英国のEU離脱は英国経済の悪化を招く。日本のホンダが英国から撤退を決めただけでなく、日産も生産の縮小に動いている。世界金融の中心地であるロンドンからも金融機関が抜け出し始めた。昨日、本日とベトナムで米朝首脳会談が行われている。北朝鮮はいずれ韓国と統合される。現在の韓国は財閥経済の弊害もあって、低迷しており、北朝鮮の豊かな資源と労働力が救いとなる。北朝鮮にとっては韓国や米国からの資本流入が救いとなるからだ。金正恩は父親とは異なり、スイス留学を通じて世界を見ている。日本のメディアが報じるような愚かな人物ではない。それはトランプについても同じだ。彼らに比べればよほど。米中貿易戦争もいずれ縮小の方向に動く。中国の貿易赤字が大きくなると、中国が外貨準備として保有する大量の米国債を損失覚悟で売却せざるを得なくなる。それは米国にとっては痛手となる。拡大する財政赤字をまかなうために国債の新規発行が増加している中で、中国が売却した国債の買い手を確保するのは厳しい。国債価格が下落すれば、金利は高騰する。今の米国には金利高騰は耐えられない。つい先頃、中央銀行FRBが金利引き上げを見送ったばかりである。貿易戦争は縮小に動くが、すでに課された関税がすぐになくなるわけではない。世界経済の後退は避けられない。そんな中で、貿易交渉が何らかの合意に達するだろうと言う希望で、昨年の年初来、下がり続けていた中国上海の株価指数が上昇に転じ、同じく米国の株価指数も上昇している。後者は史上最高値に迫るほどにだ。米国の株価の支えは中央銀行のこれまでの低金利政策による借金である。従って、金利上昇は株式下落を招く。株式だけでなく、米国は政府、企業、家計の全てが巨大な借金を抱えている。金利は何としても低くなければならない。しかし、金融政策に責任を負う中央銀行は、次なる危機の到来に備えて、今のうちに金利を少しでも引き上げておきたい。今や米国中央銀行はジレンマに陥っている。日本は「アベノミクス」の円安により6年で輸出が31%増加し、輸出産業中心に企業利益は6年間で65.8%増加したが、この間、勤労者の実質賃金は5.1%低下している。国際通貨基金IMF統計では、この6年間の世界の年平均実質GDP成長率は3.5%だが、日本はその半分にも満たない1.2%である。20世紀のうちに日本は世界の経済大国入りしたが、いまだに政府や企業は新興国型の経済体制に固執している。経済大国となれば、消費が中心であり、そのためには賃金を上げなければならない。日本は賃金を抑えることで大企業に必要以上の利益を得させた。しかも、その利益は世の中に循環しない内部留保として積み上がった。「アベノミクス」は、笑えないほど日本を虚弱体質に変えてしまった。嵐がやって来れば、統合された朝鮮半島にも及ばない小国になってしまうだろう。
ツグミ