釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

世界経済の行方

2019-02-28 19:16:36 | 経済
米国トランプ大統領は白人労働者の期待を得て当選した。そのため、その労働者の職場を確保するために貿易戦争を始めた。貿易戦争が米国の製造業の復活につながると考えてのことだ。しかし、世界の歴史は貿易戦争が世界経済の停滞をもたらすことを示しており、実際、現在の世界経済はそのようになって来た。今月19日、世界貿易機関WTOは、19年1~3月期の世界貿易予測指数が96.3となり、2010年3月以来の低水準になると報じた。世界経済を牽引して来た中国の落ち込みが響き、日本の輸出も減少し、20日の財務省公表の1月の貿易統計は、中国向けの輸出が前年同月比で、2018年12月の7.0%減に続いて17.4%減と減少が加速している。米国に投じられていた中国資本も引き揚げられ、米国各主要都市で住宅価格が低下し始めて来た。米国の消費の低迷で小売店チェーンの閉鎖も生じている。景気指標となる米国の貨物輸送量も減少している。英国のEU離脱は英国経済の悪化を招く。日本のホンダが英国から撤退を決めただけでなく、日産も生産の縮小に動いている。世界金融の中心地であるロンドンからも金融機関が抜け出し始めた。昨日、本日とベトナムで米朝首脳会談が行われている。北朝鮮はいずれ韓国と統合される。現在の韓国は財閥経済の弊害もあって、低迷しており、北朝鮮の豊かな資源と労働力が救いとなる。北朝鮮にとっては韓国や米国からの資本流入が救いとなるからだ。金正恩は父親とは異なり、スイス留学を通じて世界を見ている。日本のメディアが報じるような愚かな人物ではない。それはトランプについても同じだ。彼らに比べればよほど。米中貿易戦争もいずれ縮小の方向に動く。中国の貿易赤字が大きくなると、中国が外貨準備として保有する大量の米国債を損失覚悟で売却せざるを得なくなる。それは米国にとっては痛手となる。拡大する財政赤字をまかなうために国債の新規発行が増加している中で、中国が売却した国債の買い手を確保するのは厳しい。国債価格が下落すれば、金利は高騰する。今の米国には金利高騰は耐えられない。つい先頃、中央銀行FRBが金利引き上げを見送ったばかりである。貿易戦争は縮小に動くが、すでに課された関税がすぐになくなるわけではない。世界経済の後退は避けられない。そんな中で、貿易交渉が何らかの合意に達するだろうと言う希望で、昨年の年初来、下がり続けていた中国上海の株価指数が上昇に転じ、同じく米国の株価指数も上昇している。後者は史上最高値に迫るほどにだ。米国の株価の支えは中央銀行のこれまでの低金利政策による借金である。従って、金利上昇は株式下落を招く。株式だけでなく、米国は政府、企業、家計の全てが巨大な借金を抱えている。金利は何としても低くなければならない。しかし、金融政策に責任を負う中央銀行は、次なる危機の到来に備えて、今のうちに金利を少しでも引き上げておきたい。今や米国中央銀行はジレンマに陥っている。日本は「アベノミクス」の円安により6年で輸出が31%増加し、輸出産業中心に企業利益は6年間で65.8%増加したが、この間、勤労者の実質賃金は5.1%低下している。国際通貨基金IMF統計では、この6年間の世界の年平均実質GDP成長率は3.5%だが、日本はその半分にも満たない1.2%である。20世紀のうちに日本は世界の経済大国入りしたが、いまだに政府や企業は新興国型の経済体制に固執している。経済大国となれば、消費が中心であり、そのためには賃金を上げなければならない。日本は賃金を抑えることで大企業に必要以上の利益を得させた。しかも、その利益は世の中に循環しない内部留保として積み上がった。「アベノミクス」は、笑えないほど日本を虚弱体質に変えてしまった。嵐がやって来れば、統合された朝鮮半島にも及ばない小国になってしまうだろう。
ツグミ

変わらない「無謬性のロジック」

2019-02-27 19:18:19 | 社会
ちょうど1週間前に慶應義塾大学土居丈朗教授のインタビュー記事について書いたが、同じく慶應義塾大学の小林慶一郎教授が昨年9月に東京財団政策研究所の「論考・コラム・レポート」で、「財政破綻という最悪の事態に備えを」と言う表題の論考を公開していた。書き出しは日本の大きな組織の思考の歪みの指摘から始まっている。「財政は破綻しない?――日本を蝕む無謬性のロジック」と言う小題を設けていて、長くなるが、大切だと思うので引用させてもらう。「私は財政破綻が近いと言いたいわけではない。しかし、「最悪の事態を想定することをタブー視して、誰もそれを語らない」という現状は、政策論議のあり方としてきわめて不健全である。最悪の事態を想定しないという日本の政策論争の特徴は、日本の大組織に典型的にみられる「無謬性のロジック」によって生み出されている。すなわち、「失敗してはならないのだから、失敗したときのことを考える必要はないし、考えてはならない」。こういう理屈だ。しかし、少し考えれば、このような「無謬性のロジック」がまったく道理に合わないことはすぐにわかる。いくら政府が財政再建しようとしても、人間がやることなので失敗する可能性はある。失敗したときに起きる最悪の事態(財政破綻)が具体的にどういうことで、そのとき善後策として何ができるのかを検討することは政策論として重要だし、政府が当然やるべきことだ。本来は、巨大地震対策や原子力発電所の過酷事故対策と同じように、政府が各省庁の専門的な知見を結集して、財政破綻が国民生活にどのような影響を与えるか検討し、国民への被害を最も小さくするための危機対応プランを考えておくべきなのである。さらに言えば、日本の組織に蔓延する「無謬性のロジック」は、戦時中の日本軍が最悪のケースに備えた兵站の必要性を否定し、無謀な作戦を実行したときの「必勝の精神」のロジックと同じものである(必ず勝つのだから負けたときのことは考えなくてよい)。つまり、一見、理屈に合っているように見えて、実はまったく不合理な日本的思考なのである。ちなみに、これとまったく同じロジックが、国会答弁や記者会見でよく耳にする「仮定の質問には答えられない」という言葉だ。不測の事態を想定し、さまざまなプランを考えて、それを実行することがリーダーの仕事なのだから、仮定の質問になぜ答えられないのか、またこの返答になぜ質問者や我々国民の多くは納得し沈黙してしまうのか。「無謬性のロジック」の恐るべき根深さである。」。財政破綻について、政府は無論、官庁エコノミストと呼ばれる人たちも起き得ないとして、何ら対策を考えていない。大学教授の職に就きながら、いざとなれば政府が発行する国債を日本銀行が全て買い取れば、何ら問題ないとさえ主張する呆れた人がいる。もっとも、こうした主張を研究者がするのも、すでに日本のバブル崩壊後に、巨大金融機関に公的資金を投入して救済する、「大き過ぎて潰せない」としたこととも関連している。本来の資本主義は新自由主義者が好む自己責任であるから、公的資金を注ぎ込んではいけない。それが政府自身であってもだ。中途半端に資本主義国が社会主義化し、社会主義国が資本主義化しているのが現在の世界だ。いずれにしろ、日本銀行が国債を買い取り続けて政府債務が維持されるならば、最初からそれをやればいいのだ。それが出来ないから、従来は一般の金融機関や投資家に買ってもらっていたのだろう。政府がいくらでも借金が出来る仕組みの通貨や国債を誰が信用するだろう。小林教授は最近の別の記事で、財政破綻時には敗戦直後と同様の財産税の導入により、国債の返済は行い、債務不履行はしないだろうと考えているようだ。預金封鎖、新円切り替えなど同じ方法を取ると見ている。官僚はいつも慣例に従うものだ。要するに国民を犠牲にして、政府はデフォルト回避の対面を保つわけだ。敗戦直後の大蔵大臣は「払うものは払う」と言った。国民から財産を奪った上で。
カワアイサ 左:雄 右2羽:雌


止まらない河川の薬物汚染

2019-02-26 19:13:42 | 科学
今日も昨日に続いてよく晴れた日になった。ほんとうにもう日射しだけを見ていると春だ。今日のように晴れると、朝は放射冷却でやはり冷え込む。出勤直後の職場の裏山で今日はリスを見かけた。山の斜面にも日射しが早く射すようになって来ている。鹿の姿は見当たらない。多分先日見かけたジョウビタキの雌が今日も来ていた。少し移動すると尻尾を上下に動かす独特の動きをして、また、すぐ近くの枝に移って行く。家の周りだと、しばらく辺りを見ていると、必ずツグミを見かけるが、この職場の裏山ではほとんどツグミを見ることがない。東北は落葉樹が素晴らしい秋の景観をもたらすだけでなく、その木の実が鳥や野生動物たちを育んでいる。とても自然が豊かだ。この豊かな自然もしかし、福島の事故で、実際には大きな影響を受けている。目にはまだはっきりとは見えないが、確実に放射性物質が食物連鎖を通じて、濃縮された形で蓄積され、動植物に吸収されて行っている。23日の英国インデペンデント紙The Independentは、オランダのラドバウド大学Radboud University Nijmegenのオルデンカンプ博士Dr. Rik Oldenkampによる世界の河川の薬剤汚染調査結果を伝えている。Environmental Research Lettersに発表された論文によると、オルデンカンプ博士は抗生物質シプロフロキサシンと抗てんかん薬カルバマゼピンの2つの薬剤に焦点を当てて、1995年から2015年の間の20年間に、薬物の濃度の上昇と影響を受ける地下水面の数が増加しており、水生生態系に対するリスクが20年前よりも10倍から20倍高いと示している。特に、シプロフロキサシンのリスクははるかに広がっており、テストされた449の生態系のうち223が有意なリスク増加を示した。水中のバクテリアは栄養サイクルで重要な役割を果たしているが、そうしたバクテリアにとって、シプロキサンの濃度の増加は危惧される。抗生物質は廃水処理に使用されるバクテリアコロニーの有効性にも悪影響を及ぼす可能性があるとオルデンカンプ博士は述べている。医薬品の残留物は、維持管理が不十分な下水道からの排水、または家畜に使用されている薬物の飼育地から流出し、これらの淡水系に侵入する可能性があると言う。博士は「環境が様々な病原体に対する抵抗力の源として機能することがますます明らかになっているにもかかわらず、「この問題における環境の役割についての認識はほとんどない」」と危惧している。同紙に掲載された汚染地図を見ると、日本は他の先進諸国と同じく、すでに1995年時点で高濃度の赤で色付けられている。自然も社会も目には見えない背後で何が起きているかがとても重要だ。動物の一つでしかない人間にとって、自然のミクロの世界で起きていることは、必ず人間自身にも跳ね返って来る。日本と同じく最近米国も急激に人口が減少して行くと言う予想が出て来た。そんな中で、人の男女の生殖機能の低下が、こうした自然界の変化によることが分かって来て来ている。こうした状況が放置されれば、冗談ではなく、人類は自ら滅亡への道を歩むことになる。もっとも、20~30年後には日本は消える、国家としての存在感がなくなると、ジャック・アタリはじめ何人かの著名な識者が予測してはいるが。これはあくまで社会的な要因からだ。自然・科学的な要因からも日本の存亡が危ぶまれるのかも知れない。
掘り出したクルミをくわえるリス

途方もない提言をせざるを得ない債務の現状

2019-02-25 19:16:59 | 社会
過去の歴史では、国家が大きな借金を抱えたのは戦争か放漫な財政支出を行った時である。後者は主に君主制国家の国王の放漫によることが多かった。現代は特に第二次大戦のような規模の大きい戦争があるわけではない。平時に政府の借金が先進各国で増えており、日本や米国は突出している。平時に政府の借金が増えるのは、国としての経済成長が低下していることと高齢化による社会保障費の拡大のためである。経済成長率が高ければ、税収も潤い、政府がわざわざ借金してまで財政出動する必要もない。経済成長率が低下し、税収増が期待出来ず、社会保障費は増え続ける。日本も米国もその点では同じであり、さらにはいずれの国ももはや返済は不可能であり、どこかで清算しなければならない。2017年3月14日の経済財政諮問会議で、米国から招かれたノーベル経済学賞受賞のコロンビア大学ジョセフ・スティグリッツ教授は、日本の政府債務には多くの人が懸念しているとした上で、提言の一つで、国債の無効化を訴えている。1月ほど前に先に来日した米国プリンストン大学の同じくノーベル賞受賞者のクリストファー・シムズ米教授は、日本のエコノミスト誌のインタビューで、政府債務のインフレによる解消を提言している。二人の著名経済学者が日本の政府債務は返済不能であることを前提に提言しているのだ。米国自身も他人事ではない。米国の政府債務は22兆ドルに達した。日本の2倍であり、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの政府債務合計の約10倍になる。ただ、政府の何らかの財政破綻は日本の方が先行する可能性が高いため、米国は日本の実験を参考にしたいのだ。昨年末から年初にかけて、米国の株式市場が下落したため、米国の中央銀行FRBは金利引き上げを見送った。金利が上がれば、借金で維持されている経済は弱まる。下手をするとバブル崩壊の引き金になりかねない。現在、株式市場は金利引き上げが見送られて、安心し、再び上昇に転じている。しかし、実体経済ではすでに景気後退の兆しが出て来た。輸送量の減少や企業収益の悪化が報じられている。今年から来年にかけて大きな景気後退がやって来る可能性が強い。大恐慌に発展するだろう。世界中の国が巻き込まれる。どの国も不況の嵐になる。その後、体力のある国が立ち上がって来る。ジム・ロジャース氏によれば、次の覇権国は中国だと言う。今や中国のエンジニアは米国の10倍、日本の15倍であり、科学・数学など理系の大卒者は、米国の8倍、日本の24倍もになると言う。10億ドル以上の規模の世界のベンチャー企業の5割は米国だが、3割は中国だ。特許の出願数は他国を圧倒して突出している。中国も民間債務が巨大であり、金融危機を免れることは出来ない。悲惨な経済状況へ一度は追い込まれた後に、大きく復活して来る可能性が強い。しかし、教育・研究費を削り、斜陽産業の保護を続け、人口が減少し続ける日本は、長期の低迷に陥る。ロジャース氏は、2050年の日本は犯罪大国になると予想する。日本の主流メディはこうした世界や日本の背景を一切報じない。そのため誰もが、現在の生活がずっと続いて行くものと思い込んでいる。巨額の政府債務など何とかなるのだろうと思っているのだろう。中央銀行の大量の国債の買取や、「マイナス」金利などの「異常さ」も「異常」とは思ってもいない。目の前の生活がとりあえず維持出来ればいいのだろう。しかし、残念ながら、そうした生活にもいつか突然終わりがやって来るだろう。海外が仕掛けるか、政府自身が意図的に仕掛けるかどちらかになるのだろうが。
シジュウカラ

健康とは抗老化

2019-02-23 19:12:42 | 科学
今朝も3頭の鹿が職場の裏山に来ていた。気温が少しずつ上がり、日射しはもう春の日射しになっている。我が家の庭でもマンサクが開き始めて来た。今冬はほぼ毎日凍りついた睡蓮鉢に、先日、紅い金魚が1匹だけ姿を現していた。家の裏の空き家には朝よく1羽のツグミがやって来る。そのうちこのツグミも北へ帰って行くだろう。 若い時には自分の健康は空気のように当たり前のもので、何ら気にする事がなかった。しかし、加齢とともに自分の筋力の衰えに気付き、瞬間的な動きも悪くなっていることに気付かされ、健康の維持や老化を防ぐことに注意を注ぐようになった。これからの世界は、特に日本は大変な時代を迎えることになる。そんな時も大事なことは健康でいることだ。研究者の中には病気は老化だと言い切る人もいる。だとすると、健康は抗老化と等しい。健康とは細胞の健康であり、細胞が傷付くと細胞は本来の働きが出来なくなる。傷付いた細胞は除去される仕組みが備わっているが、加齢とともにその機能さえもが低下し、体に様々な障害をもたらしてもいる。つまり細胞の健康を維持するためには、常に細胞にエネルギーを与え、傷害された細胞は速やかに除去されなければならない。これが維持出来れば、健康でいられると言うことになる。長寿を研究し、自らも実験台となった米国ハーバード大学デビッド・シンクレアDavid Sinclair教授は、毎朝1gのNM​​N(nicotinamide mononucleotide)と0.5gのレスベラトロールをヨーグルトと混ぜて、NMNは3年間、レスベラトロールは12年間摂り、夜には1 gのメトホルミンを3年間服用した。その結果、生物学的年齢が24歳若返った。教授によると、老化を抑える経路には3つあるそうだ。1つはAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化で、古くからの安価な糖尿病薬であるメトホルミンが有効だ。2つ目はサーチュイン経路と呼ばれ、長寿遺伝子などとも呼ばれるサーチュイン遺伝子の活性化で、これにはNMNとレスベラトロールが有効で、3つ目はmTOR(mammalian target of rapamycin)と言われる蛋白質複合体を抑制することで、この複合体の一部が傷害された細胞の除去であるオートファジーを抑えるため、このmTORの活性を抑える必要があり、それには免疫を抑える薬剤であるラパマイシンが有効だが、教授は副作用を問題にして、自分では服用していない。しかし、スペルミジンと言う物質がラパマイシンと同じ働きをする事が分かっている。そして、スペルミジンは納豆に多く含まれており、中でも引き割り納豆に含有量が多い。運動と食事制限はこれらの3つの経路のどれにも効果的であるそうだ。日本でも東北大学はじめいくつかの大学でもこの抗老化の研究に取り組んでいて、金沢医科大学古家 大祐糖尿病・内分泌内科学教授は、30代から60代の男性4人に1日に必要なエネルギー量からカロリーを25%制限した食生活を7週間続けてもらい、7週間後には長寿遺伝子が作るサーチュイン酵素の量が4.2~7倍にもなったことを報告している。NAD+と言う成分が細胞内のミトコンデリアで、細胞活動のエネルギーとして作られるが、この前駆物質としてNMNやNR(nicotinamide riboside)と言われる物質がある。加齢とともに人体では、このNAD+が減少して行くため、この前駆物質であるNMNやNRを補ってやる事が有効になる。シンクレア教授はNMNが有効だと考えているが、アイオワ大学のチャールズ・ブレンナーCharles Brenner教授はNRも有効だとしている。NMNやNRはサプリメントとして販売されているが、前者は極めて高く、いずれシンクレア教授が開発を予定している1日分がコーヒー1杯分の価格になるものを期待した方がいいかも知れない。シンクレア教授は老化は病気だと考えている。ただ教授によると、80歳以上になると老化のメカニズムが違って来るのではないかと考えているようだ。
ホオジロガモ雌(左)雄(右)

生物を絶滅しかねないマイクロプラスティック

2019-02-22 19:13:27 | 科学
日本の海は、2015年に北太平洋の16倍、世界の海の27倍にも及ぶ、マイクロプラスチックが存在することが東京都環境局によって公表されている。19日の朝日新聞は、英国ブルネル大学の調査で、スーパー8店で売られている貝の全てからマイクロプラスチックが検出されたことを伝えている。日本でも東京農工大学の高田秀重教授らが、東京湾でイワシやムール貝の一種、ムラサキイガイなどから検出していると言う。また、オーストリアの研究チームは、日本、英国、イタリア、オランダ、オーストリア、ポーランド、フィンランド、ロシアの計8人の便を調べ、やはり全てからマイクロプラスチックを検出している。米国ミネソタ大学の調査では、世界14カ国159カ所の水道水を調べて、イタリア以外の13カ国の水道水からマイクロプラスチックが検出されている。日本でもすでに体内にマイクロプラスチックが入ってしまっていると考えた方がいいだろう。水道水もペットボトルのミネラルウォーターもすでにマイクロプラスチックを含んでいる。マイクロプラスチックは、そのものよりもそれが有害物質をスポンジのように吸収することが科学者たちを危惧させている。吸収された重金属は腎臓、肺、および脳を損傷し、ビスフェノールAは子供の脳を損傷し、行動の発達を障害する。また、フタル酸エステルなど、プラスチック中の化学添加物は男性機能の発達障害をもたらす。2018年1月の世界経済フォーラムの報告では、海洋には1億6500万トンを超えるプラスチックがあると推定され、それは3500を超えるタイタニック号の重さに相当し、毎年およそ900万トン、タイタニック号190になり、今後20年間でプラスティックの使用はさらに2倍になると予想されており、2050年までに海洋の魚1トンにつき1トンのプラスチックが存在することになる。米国イリノイ大学比較生物科学科のジョディ・フローズJodi Flaws教授らの最近の研究では、プラスチックをしなやかにさせる可塑剤の一つであるフタル酸エステル類を投与されたメスのマウスは妊娠しなくなることが明らかになった。フタル酸エステル類の一つであるフタル酸ビスがホルモンのシグナル伝達や卵巣の成長・機能を破壊することも分かった。これまでのフタル酸エステル類の研究では、実際に生活環境内で暴露されるものよりも高い濃度で研究されていたが、今回の研究ではほぼ生活環境内で暴露される濃度が使用された。教授は化学物質への曝露が停止されてから、ずっと後になってからも、なおメスの生殖能力が損なわれ続けていたことを危惧している。化粧品やパーソナルケア製品を介した人へのフタル酸エステル類への暴露が人に生殖老化を引き起こし、数年早く閉経期に入ることがすでに報告されている。フタル酸エステル類は体内で速やかに分解され、その代謝産物は数日以内に体外へ排出されるにも関わらず、マウスでは数か月後まで影響が残る。フタル酸エステル類は人の男女の生殖機能を低下させる可能性がある。欧州やオーストラリア、ニュージーランドなどは規制に動き出しており、ヨーロッパ化粧品工業会は業界団体として、マイクロプラスティックの使用中止に向けて動き出している。業界優先の日米は相変わらずここでも遅れをとっている。
カルガモ

歴史に学ぶジム・ロジャーズ

2019-02-21 19:20:38 | 社会
米国人投資家のジム・ロジャーズJim Rogersは、ジョージ・ソロスGeorge Soros、ウォーレン・バフェットWarren Edward Buffettとともに世界の三大投資家として知られる。米国エール大学を卒業後に、英国 オックスフォード大学をも卒業している。いずれでも歴史学を学んでいる。金融街である米国のウォール街でアルバイトを始めたのがきっかけで、投資の世界に入った。30歳で ジョージ・ソロスとともに投資会社クォンタム・ファンドを設立し、10年間で33倍もの利益を生み出し、一躍、投資業界で知られるようになる。ジム・ロジャーズは学んだ歴史を重視し、世界や米国の大きな流れを読む役割を担い、ジョージ・ソロスは投資対象への投資のタイミングを見出す役割を担い、互いに得意な分野で役割分担することで成功した。しかし、後に、考えの違いから、二人は袂を別った。富豪となったジム・ロジャーズは、米国が勢いを失い、これからは中国の時代がやって来ると考え、2007年にシンガポールへ移住する。米国は二重国籍が認められる。娘二人に中国語を学ばせた。一般に「歴史は繰り返す」と言われるが、彼は作家マーク・トウェインの言葉である「歴史は韻を踏む」を重視する。「世界の出来事のほとんどは、以前にも起きている。まったく同じ出来事が起きるわけではないが、何かしら似た形の出来事が、何度も繰り返されている。」。1920年代、米国は世界最大の債権国となり、「黄金の20年代」と呼ばれるようになった繁栄の時代があった。自動車産業が興隆し、大量生産・大量消費で、まさにバブルが発生した。しかし、1929年の株式大暴落をきっかけに世界恐慌へと発展して行った。1990年代から2000年にかけても米国は一見繁栄を続け、2000年代初頭にはやはりバブルが発生して行く。2007年頃、彼は住宅バブルの発生を危惧し、住宅関連企業や、住宅ローン関連の銀行の株を空売りし、2008年のリーマン・ショックで「少なからぬ利益」を得ている。その彼は、現在の世界では資産は東洋にあり、負債は西洋にあると言う。今や米国は有史上最大の債務国となった。世界最大の債権国は日本であるが、その日本は「国内の財政をのぞいてみると、腰を抜かすほどの赤字になっている。」「これだけの借金を返すために公債を発行し、その借金を返済するためにまた公債を発行──と、どうしようもない悪循環に陥っている。」「債務が大きい国は、つねにひどい姿になって終焉する──。こういうことは、すべて歴史が教えてくれる。」「アジア全体は莫大な資産を持っているのに、いくつかのアジアの国、とくに日本は莫大な借金を抱え込んでしまった。」「もし私が10歳の日本人だったとしたら、日本を離れて他国に移住することを考えるだろう。30年後、自分が40歳になった頃には、日本の借金はいま以上に膨れ上がって目も当てられない状況になっている。いったい誰が返すのか──国民以外、尻拭いをする者はいない。」
裏山に今朝も鹿が7頭来ていた

末期状態に入って来た政府債務

2019-02-20 19:13:22 | 社会
IMF国際通貨基金による推計では、日本の2018年末の一般政府債務(地方自治体・社会保障基金を含む)は1327兆円になる。2019年の政府予算は拡大し続け、101兆4000億円となった。歳出では、社会保障費34兆円が突出しており、次いで、国債費が23兆5000億円となる。軍事費も年々拡大し、今では文教科学の5兆6000億円に並ぶ5兆2000億円にもなった。地方交付税交付金が15兆9000億円、相変わらずの公共事業が6兆9000億円もある。文教科学よりも多い。その他の残りが10兆3000億円となる。膨大な債務を抱えながら、毎年国の予算は拡大し続けている。少子高齢化がますます加速して行き、人口が減少して行く。この人口への実効ある対策は何ら打たれていない。誰が高齢者の年金を支えるのか。医療制度も維持は不可能になる。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が公表する年金積立金は2018年第3四半期で、150兆6630億円であり、内国内債券へは42兆6796億円、国内株式35兆9101億円、外国債券26兆3484億円、外国株式36兆7706億円がそれぞれ投じられている。このまま何事もなくとも、社会保障が専門である学習院大学鈴木亘教授の「現実的な条件」での試算では、厚生年金は2033年に積立金はゼロとなり、国民年金も2037年にはやはり積立金がゼロとなる。しかもこれらは現在の経済成長率が維持されていなければならない。政府試算は全て経済成長率が2〜3%と言う今では想定出来ない成長率を前提にしている。世界的に債務拡大している現在、今後はむしろ世界全体の経済成長はさらに鈍化する。経済成長は人口で支えられている。今後の日本はマイナス成長すら考慮しなければならない。まして、次に金融危機が訪れば、債券や株式にまで投じられた年金積立金は一瞬で巨大な損失を抱え、早晩年金は行き詰まる。現在、欧米、中国の景気後退の兆しが見えて来た。米国の中央銀行FRBが金利引き上げを見送ったのも、単に株価のことだけではない。日本国内のメディアは官僚ですら「忖度」で不正統計を出す中で、とても政権が嫌うことを報じることが出来ない。そんな中で、米国経済情報紙であるブルームバーグBloombergは18日に、財政をはじめとする公共経済が専門である慶應義塾大学土居丈朗教授のインタビュー記事を載せている。表題は「諭吉先生のお札が紙切れに、日銀緩和続けば経済大混乱も-土居慶大教授」である。「昨年9月末時点で日銀の国債保有残高は全体の43%に達した」が、「このまま日本銀行が国債を買い続けて、「日銀はやがて6割、7割を買い取ってしまうかもしれない」とし、国の財政赤字を日銀が従属的に穴埋めする「財政ファイナンス」との見方を払しょくできなくなる可能性を指摘。」し、そうなると、「慶応の人間としてはあまり言いたくないが、福沢諭吉先生の肖像の1万円札が紙切れになるかもしれない」と語った。金利急騰かインフレが起きるためだ。教授は「財政出動と日銀の大量国債購入を繰り返せば、最も起こる可能性が高いのは「金利の急騰だ」」と述べている。「インフレが先か金利急騰が先か分からないが、「どちらかが急に起こる可能性はある。日銀が国債を買い入れる度合いが高まれば高まるほど、発生確率は論理的に高まっている」」。経済に精通する研究者の多くは、同様に考えているはずだ。しかし、公にはそれを伝えられない。国から睨まれれば、研究費が付きにくくなる。同教授も外国紙だから述べているのだろう。しかも、それでもまだ控えめに。政府債務はもはやもうどんな手を打とうと、手遅れだ。全ての政府公表値が過大な経済成長率を前提にしたものであり、国民に危惧させないためには粉飾した数値を公表するしかない。多くの世界の実質デフォルト国が末期には公表数値を粉飾した。今日本はその道を辿っているだけだ。
ジョウビタキ(雌)

自然回帰を考える時代

2019-02-19 19:12:51 | 科学
人は空気中の酸素を取り込んで命を保っている。体内に取り込まれた酸素の95%は細胞内のミトコンドリアと呼ばれるエネルギー生産工場で使われる。しかし、その内の0.1~2%ほどは対象を酸化させる活性酸素になる。一般には活性酸素は悪玉として捉えられているが、体内に細菌が侵入したり、癌が発生したりすると免疫システムがその活性酸素を発生させて、排除しようとしてくれてもいる。コレステロールと同じく、活性酸素のも善玉と悪玉があるようなものだ。ただ現代は生活環境に過剰な活性酸素を発生させる要因が増加しており、その過剰な活性酸素が癌や生活習慣病など様々な病気をもたらし、老化をも早める。細胞の中で過剰な活性酸素が発生すると、細胞の重要な膜や遺伝子を構成する核酸を傷付ける。ステレスや食品添加物を含む食品の摂取、携帯やスマートフォン、パソコンから発せられる電磁波も過剰な活性酸素を発生させることが分かっている。一方で、自然食品群にはそうした過剰な活性酸素を取り除いてくれるものもたくさんある。特に植物には太陽光を浴びることで発生する過剰な活性酸素を除去する成分が、植物自体の生命維持のために備わっているものがある。こうした植物は人の体にも適している。老化や病気に大きく影響するものに人の体の血管がある。血管は血液の流れで全身の細胞に重要な成分を送り届け、逆に老廃物などを排出する役割の一端をも担っている。40代に入るとこの血管の壁に傷みが生じるようになり、血液の流れも徐々に悪くなる。血管とそこでの血液の流れは想像以上にとても重要だ。血管の末端部は毛細血管と呼ばれ、この毛細血管が体の中の血管の90%以上を占めていると言われている。加齢とともに真っ先にこの全身の毛細血管が失われて行く。この毛細血管の消失を少しでも少なくすることが、病気の予防や老化の遅延につながる。体温を上げる入浴や手足までの血液の流れを良くする運動など、また、ダークチョコレートなど、血管を広げて血液の流れを良くすることが明らかな食品を摂ることなどが日常的に大切になる。基本的に、人間は自然界に属する動物であることを忘れないことだろう。自然界の動物は自然の中のものを摂り、自然の中に身を置いている。現代人はあまりのもそうしたことを忘れさせられる環境に閉じ込められてしまっているように思う。自然に存在していた温泉は、体温を上げ、血液の流れを良くし、ストレスを解消もしてくれる。しかし、そうした良き温泉も今では消毒剤が含まれるまで変容してしまっている。プールなどと同じく過剰なまでに消毒剤が使われている。今では、便利であったり、食欲をそそられるものほど気を付けなければいけなくなってしまった。
コサギ

自由市場の崩壊

2019-02-18 19:10:48 | 経済
社会主義や共産主義と資本主義の経済システムの大きな違いは、資本主義では市場が中心となり、前者では政府の計画が中心となることだ。資本主義国では新自由主義の浸透により、1990年代半ば以降、次々に金融ビッグバンが波及し、「市場原理が機能する自由な市場」が形成された。日本でも金利は市場で決まり、資本も自由に投じられる環境が作られた。ある意味では、この時点で初めて資本主義国が真の資本主義国になったとも言える。しかし、皮肉なことに、この頃から先進国は政府債務を増やして行った。特に顕著であったのは日本である。本来資本主義では、政府の財政政策や中央銀行の金融政策は市場の補助役に過ぎない。にも関わらず、日本ではこの金融ビッグバンに並行して、むしろ政府や中央銀行が乗り出して来ている。1991年のバブル崩壊の傷跡が癒えないままに米国から求められた金融ビッグバンを進めたため、日本の経済は政府や中央銀行の助けがなくては自立出来なかった。そして以後、次々に米国資本が日本へなだれ込み、名だたる大企業はたちまち米国資本下に置かれてしまった。アベノミクスは円安で、それをさらに加速させた。米国は史上最長の景気拡大と言われているが、日本も負けずに現政権が成立した2012年12月から続く「景気拡大」が高度経済成長期の「いざなぎ景気」(1965年11月~1970年7月、57カ月)を超え、戦後最長の「いざなみ景気」(2002年2月~2008年2月、73カ月)をも本年1月には越えたとしている。改ざんされたデータと返済不能の政府債務や有り得ないマイナス金利や大量国債の買い入れと言う日本銀行の「異次元」の金融政策によって、まるで社会主義国や共産主義国が顔を赤するような手法で維持された「経済成長」ではないか。せっかく金融ビッグバンで金利が自由化されたはずなのに、金利は中央銀行が無理やりゼロに抑え込んでいる。市中金融機関で維持されて来た国債市場も今では全く市場機能を失ってしまった。新規発行の国債はみんな日本銀行が買っている。日本銀行が国債を買い込むことで、国債金利は最低になっている。国債金利が最低と言うことは、国債の価格が発行時の価格より高いと言うことだ。国債の金利と価格は逆に動く。つまり日本銀行は国債を割高に買っている。先進国では例を見ないここまで極端な国債金利の押さえ込みは、もはやこれを永遠に維持するしかないところまで来ている。何故なら、金利が今後少しでも上がっていけば、国債を保有するものはその保有国債の価格が下がり、損失を抱えることになる。現在、発行済の1000兆円の国債の半分を市中銀行や保険会社が保有している。残り半分を日本銀行が保有する。大手銀行や大きな保険会社は、海外にも支店を置き、海外に投資することで利益を得るチャンスはあるが、地方銀行は利ざやと国債で利益を得るしかない。しかし、地方銀行の半分はすでに超低金利で利ざやが稼げず、赤字になっている。この上、金利が上がり、保有国債の価格が下がれば、もはや倒産するしかない。大手金融機関にしても損失を被る。金利上昇は確実に日本に金融危機を引き起こす。今後わずかな金利上昇でも損失が出ることが分かっている国債を誰が買うのだろう。日本銀行が永遠に買い続けるしかない。しかし、裏付けのない通貨である円は、国債の信認で支えられている。新規発行の国債の全てを日本銀行が買い続ければ、そんな円をどこの国が信頼するだろう。経済成長を偽装すること自体、実体経済である製造業が自立出来ていないことを意味する。自由な市場での競争にもはや日本の製造業が太刀打ち出来ない状態になっている。ただ幸いなことに、同じことが欧米で起きているために、日本の製造業が目立たないだけである。
オナガガモ(雄)