釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

二度あったことは・・・

2018-06-30 19:16:56 | 経済
日本銀行は、6月20日現在の「営業毎旬報告」によると、市中金融機関から買い取った451兆円の国債を保有し、投資信託を通じて株式へは20兆円を注ぎ込んでいる。6月27日の日本経済新聞は、「日銀、企業の4割で大株主 イオンなど5社で「筆頭」」と言う記事を載せている。「マーケットの価格形成機能に及ぼす副作用も無視できない。業績や企業価値と無関係に買われる株式が増えれば、本来の株価よりも高止まりしてしまう。」と、さすがにここまで異常な状態となると、保守的な経済新聞でも不安になって来ているようだ。2008年のリーマン・ショック後、米国、EU、日本の中央銀行はそろって異例の金融緩和を行った。国債や不良債券を買い取ったが、株式まで購入したのは日本銀行だけである。米国とEUは金融緩和から金融引き締めに転じる動きを見せているが、日本のみいまだに表立った転換は行えないでいる。実際には買い取る国債の買取りペースを密かに落として来ているが。江戸幕府が倒れた主因は財政破綻であった。明治維新後もこれまでに日本では2度、実質的な財政破綻が起きている。明治の廃藩置県の際、各藩の財政赤字は新政府により踏み倒された。また、敗戦直後にもハイパーインフレ、預金封鎖、財産税、新円切り替えと言う実質的な財政破綻があった。歴史上、ゴールドの裏付けのない通貨での巨額の財政赤字は必ず破綻している。1929年10月24日、米国で株式の大暴落が起きた。日本にもその影響が大きく及び、失業者が溢れ、農産物価格も急落した。1931年には物価は大きくマイナスになり、現在以上のデフレ状態となった。この年の末に成立した犬養毅内閣で、日露戦争の戦費をロンドンで辛くも調達に導いた高橋是清が大蔵大臣となった。その直後、高橋は金本位制から離脱し、翌年の1932年11月、日本銀行は政府の発行する国債を直接買い取る。これにより政府は財政を大きく膨らませた。金利も低金利政策が導入された。低金利とは言え、3%台であり、現代のマイナス金利のような異常さではなかった。しかも、日本銀行は政府から直接買い取ったとは言え、すぐに国債を市中金融機関へその85%まで売っており、現在のように日本銀行が保有し続けているのとは異なっていた。金本位制を離脱したことで、通貨である円は価値を下げ、いわゆる円安となったことで、他国との価格競争に有利となり、輸出が増大し、他国に比べいち早く世界恐慌から脱することが出来た。しかし、満州事変を始め軍事費は膨らんで行き、政府は日本銀行が引き受ける国債発行を増大し続けた。敗戦後、政府債務はGDP比で200%となった。現在は240%である。1990年代始めのバブル崩壊後、日本経済は低迷し、2000年頃から日本銀行は他国の中央銀行に先んじて、国債を市中金融機関から少しずつ買い取るようになった。それが、2013年からは現政権の要請で、巨大な額の国債を市中金融機関から買い取るようになった。戦前の政府債務の膨張を許したのが、日本銀行による政府発行の国債の直接買取りであったことから、戦後は、財政法で、この日本銀行による国債の政府からの直接買取を禁じた。しかし、現在の日本銀行の国債買取りは、単に形の上で市中金融機関を通しているだけである。政府が新規に国債を発行すると、市中金融機関が買い取るが、買い取ったその日のうちに日本銀行へ転売されている。実質的な日本銀行の直接引受である。形式を重んじる官僚の考えそうなことだ。実態は財政法が禁じる、日本銀行による国債の直接引受である。日本政府の債務はすでに巨大であり、そんな政府が発行する国債を買い支えて来た市中金融機関も、国民の貯蓄率の低下で、国債を買い取る余力を失い始めた。中央銀行が買い取らなければ、国債の金利が急上昇しかねない。そうなって困るのは政府である。金利支払いが急増するからだ。日本銀行が買い取ることで、以上なマイナス金利まで押さえ込んでいるのが現状だ。いずれにせよ、戦前と同じ道を行く、政府と日本銀行の目前には、同じく財政破綻が見えている。それがハイパーインフレの形を取るのか、財産税の形を取るのかわからないが、実質的には財政破綻である。官僚や政治家は決して責任をとらない。常に国民が尻拭いさせられる。
山紫陽花

進化を無視した食生活

2018-06-29 19:14:01 | 科学
東京に住んでおられる方から、身内の方が膵臓癌の末期であることを聞かされた。日本では2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなっていると言われる。医療が高度に進歩したとされる日本では癌が増え続け、先進国の中でも日本だけが癌で亡くなる人の数も増えている。むろん、超高齢化も一因だと思われる。しかし、それだけではなく、他にも日本は他の先進国と異なることがあるように思う。癌を含めて多くの病気は毎日繰り返される生活の中に原因があると思う。戦後、社会環境が大きく変わり、豊かにはなったし、医療も高度になったが、病気は一向に減らないばかりか、増え続けている。10年前に岩手に来て、豊かな自然を目の前にして、人は動物だとあらためて気付かされた。そして野生動物にはほとんど癌は見られないそうだ。動物の進化には気の遠くなるような時間を要する。しかし、戦後、豊かさは人の食事と運動量や社会環境を大きく変えた。特に食事は飽食の時代とまで言われるほどに、TV番組では毎日のように料理番組が登場している。車や電車、過労死を生み出す職場環境は、人の運動量を減らし、ストレスを増加させている。人類がチンパンジーから分かれて地上生活を始めたのは700万年前からである。その後の長い期間を狩猟生活で送って来た。考古学では人類が初めて穀物などの農耕生活を始めたのは1万1000年前の西アジア、アラビア半島の根付である今のシリアやヨルダンの地域である。日本人の稲作に至っては、たかだか3000年前の北部九州が始まりである。人類の体内には何百万年もの間、穀物は入っていなかった。穀物をはじめ糖分が人類の身体に適応するにはあまりにも期間が短いのだ。長い狩猟時代は人類の体内ではごくわずかなインシュリンが分泌されていただけである。1万年前に穀物を食べるようになると、穀物は体内で糖分に変わり、インシュリンの増加が必要になった。まして、戦後の急速な食物の広がりは、人類の歴史のごくごく短期間に急速で、多量のインシュリンの分泌を要した。インシュリンは癌の増殖も促進する。進化にはとても長い時間を要する。にもかかわらず、人類はその歴史のごく短期間に身体には合わない食物を大量に体内に入れる生活に至っている。食べ物だけでなく、日本では食品添加物まで欧米の3〜5倍も多い種類が許可されている。狩猟時代には動物の肉や魚を口にしていたが、今ではそうした肉や魚すら牧畜や養殖に抗生物質などの化学的な物質が使われ、自然回遊する魚ですらマイクロプラスティックが検出されるようになってしまっている。スーパーには豊富な食品が並ぶが、添加物の含まれていない食品を探すのは不可能な状態になっている。大阪大学は癌に対するケトン食療法に積極的に取り組んでいる。米国ではすでに2011年からその実証研究に入り、有効性が認められ、実際の治療にも使われている。このケトン療法はまさに人類の進化に適応させようとする治療法とも言える。糖質を制限し、インシュリン分泌を極力抑え、エネルギーを糖分から脂肪が分解されて出来るケトン体に変えると言う、実際にも人類の狩猟時代の食生活に近付けるものだ。癌細胞は糖分をエネルギー源としており、正常な細胞の何倍もの糖分を必要としていると言われる。糖分が制限されると癌細胞はエネルギー源を絶たれてしまう。人の身体では糖分が入って来なくなると、脂肪が分解されて、ケトン体と言うものが作られ、これが正常細胞のエネルギー源となる。しかし、癌細胞の方はケトン体はエネルギー源として使えない。このことが癌のケトン食療法となった。人類の進化過程を考えれば、ある意味では当然のことのように思える。空腹や飢餓は長寿遺伝子を活性化させると言われる。これも長い狩猟時代に人類の身体が身に付けた進化の結果なのだろう。獲物が長期に渡って捕れない状態でも生命が保たれるように進化したのだろう。
庭で自生した一輪草

米国経済

2018-06-28 19:15:17 | 経済
2008年のリーマン・ショックでは株価の暴落や不良債券の大量発生により、一気に金融市場での流通通貨が減少した。これを支えるために、中央銀行FRBは大量の不良債券を抱え込んだ金融機関の不良債券や米国債を買込むことで、金融機関に通貨を流し込み、同時に金利を一気引き下げ、歴史上かってない超低金利にした。金融機関に通貨ドルが大量に流れ込み、超低金利になることで、株価や不動産価格は上昇に転じ、再びバブル域に達した。金融の世界では確かに「好景気」となっているが、企業は収益を新たな設備投資には回さず、自社株買いを行っているだけで、日本と同じく実質賃金は低迷している。FRBはバブルがさらに膨らんで行くことを警戒し、「出口政策」として、金融機関から買い込んだ債券を少しずつ売り始め、金利も小刻みにあげて来た。金融市場に流れるドルを少しずつ引き揚げ、金利を引き上げて来たため、ドルの流通量は以前より少なくなり、金利も上がって来ているため、相対的にドルの価値が上がり、このため新興国の通貨は低下した。新興国にとっては米国に対する負債額が増えたことになる。その上、米国から新興国に投資されていた投資資金が高い金利を求めて、米国に引き上げられる動きが出て、一層通貨の下落を加速させた。米国は対外的な経常収支の赤字と政府財政の赤字と言う双子の赤字を現政権でさらに膨らませている。財政赤字以上に巨額になっている経常収支の赤字を早急に減らすために、大統領は輸入品への関税を打ち出した。関税をかけると確かに輸入量は抑えられる。しかし、それは国内では物価を高めてしまう。物価上昇はさらなる金利上昇につながる。また、一方で、米国政府の借金である国債は、その半分を中国、日本、EUで買ってもらうことで支えられてもいる。4月には経済制裁を受けているロシアが大量に米国債を売り、中国も日本も保有していた米国債を減らしている。大統領の「貿易戦争」はある意味では自分の首を絞めかねない。国内経済も金融部門のみが活況を呈しているだけで、製造・流通・小売部門はむしろ低迷している。その金融部門にもバンク オブ アメリカが警告を出し始めている。1970年以後の7回のバブル崩壊を含めた景気後退では、必ず直前に短期金利と長期金利の逆転が起きている。一般に2年と10年の国債の金利で見るが、通常は短期の2年の金利の方が長期の10年の金利よりも高いが、景気後退直前にはそれが逆になり、2年金利の方が10年金利よりも高くなる。通常はお金を借りる期間が長い方が金利は高くなる。現在の米国債の長短金利差は0.33%に縮まって来ている。大統領は就任直後、弱いドルがいい、と言っていたが、財務長官に実際のところはどちらがいいんだ、と尋ねている。今現在は一時的には強いドルになっている。世界的な問題が起きると、世界のマネーは「有事のドル」を求めて来た。短期的には世界情勢次第でドルは強くなったり、弱くなったりするが、長期で見ると確実に弱くなって来ている。つまりドルの価値は下がって来ている。2008年のピークの株価の2.68倍になり、国も企業も個人も借金をその当時以上に膨らませた。後、40日ほどで、株価の上昇は歴史上最長期間に達する。今年後半から来年にかけて多くのエコノミストが米国の景気後退が始まると予想して来た。しかし、次の景気後退は単なる景気後退では終わらなくなるだろう。大規模金融緩和を行って来た中央銀行には、次の景気後退で打つための余力が残されていない。大赤字を抱えた政府も財政出動が制限される。しかも国や世界の借金額は巨大に膨らんでいる。2008年のリーマン・ショックは中央銀行の異例の金融緩和により、世界恐慌への進展を防げた。異例の金融緩和を何とか米国のみが終えて正常化しようとしているが、日本やEUはいまだに模索中だ。次の景気後退では2008年をはるかに凌ぐバブル崩壊となり、とても中央銀行は支え切れない。凄まじい世界恐慌へ発展するだろう。
梔子(くちなし)の花

才能ある女性研究者

2018-06-27 19:10:10 | 社会
米国のマサチューセッツ工科大学、いわゆるMITは世界的な研究者を輩出して来た米国を代表する理工系大学である。先日、英国の教育評価機関である「クアクアレリ・シモンズQuacquarelli Symonds Limited(QS)が発表したばかりの2019年度の「QS世界大学ランキング」では世界第1位となっている。2位にスタンフォード大学、3位がハーバード大学で、日本の東京大学は23位、京都大学は35位である。このマサチューセッツ工科大学MITは理工系大学でありながら、46%は女子学生である。ハーバード大学を含めた米国東部伝統校8校、いわゆるアイビーリーグでも女子学生は50%である。しかし、日本の東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学はそれぞれ19%、22%、38%、36%と言う状態だ。アジアの文化は歴史的に男尊女卑の傾向が強かった。日本では現在も企業や大学でもやはり男性が優位だ。米国の大学の状態を見れば、男女に能力の差がないことは歴然としている。能力があれば、性別に関係なく優秀な大学へも進学出来る。ただ、そうした風土が日本には欠けている。2014年に理化学研究所の研究員であった小保方晴子氏が英国科学誌NATUREに「STAP細胞」を発表した。人を含めた動物の細胞は、もともと将来様々な細胞になり得る初期的な細胞から出発して、その後、多様な細胞へとそれぞれが変化して行く。小保方氏の研究はすでに多様な細胞へと変化してしまった細胞でも、外部からの刺激で、元の初期的な細胞に戻り得ることを示した。しかし、科学的な研究は他の人が再現出来なければ、「真実」として認められない。その上、論文には写真の盗用などの不正があったとして、批判が高まり、メディアは批判を加熱した。その上、出身校での博士論文にも不正があったと大学が判断し、博士号が取り消されてしまった。メディアはこぞって小保方氏がとんでもない研究者であると報じた。しかし、出身校で博士論文の調査に当たった委員会は論文には不正はなかったと結論していたのだ。小保方氏は理化学研究所に移る前にハーバード大学で研究しており、そこではチャールズ・バカンティCharles Alfred Vacanti教授の指導を受けており、同教授は小保方氏の才能を高く評価している。2015年、テキサス大学のキンガ・ヴォイニッツKinga Vojnits氏らが「Characterization of an Injury Induced Population of Muscle-Derived Stem Cell-Like Cells」と言う論文で、損傷を受けたマウスの骨格筋の細胞が、怪我の外的刺激によって初期的な細胞に変化したことを発表した。世界は小保方氏が論文で主張した「STAP細胞」の存在を認めなかったが、テキサス大学の研究は「STAP細胞」の存在の強い可能性を示した。博士号まで剥奪された小保方氏は、研究者として道を閉ざされてしまった。本来、米国のハーバート大学の教授が有能と認めていた人の才能を日本は潰してしまった。小保方氏が入った大学では学生時代でも、男子学生が優勢で、女子学生は顕微鏡すら男子学生に譲らねばならないような状態であったと言う。画期的な研究が若い女性研究者によってなされたために、旧来の秩序を乱すことに危機感を覚え、排除する動きが出た可能性もある。歴史の分野でも『東日流外三郡誌』が当初、稚拙な根拠で偽書キャンペーンが張られたり、古田武彦氏の「九州王朝説」にまともな反論をせず、無視し続けたりすることで葬ろうとする。秩序を考慮せず、才能があり、画期的な事実を明らかにしようとする人は、日本では排除される。
山紫陽花

日本の地震と津波

2018-06-26 19:17:05 | 科学
今日、政府の地震調査委員会は、30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる危険性を示す全国地震動予測地図2018年版を公表した。新たに巨大地震が想定された十勝沖から根室沖はM8以上で、17世紀に発生した超巨大地震型だとM9となる。この地域での地震の確率は63%から78%となっている。また、大阪・和歌山から淡路島、鳴門を経て、九州の由布市に伸びる中央構造線断層帯では、地域により最小はM6.8から最大ではM8.0の地震が予想されている。18日の大阪での地震の断層については地震調査委員会としては決定出来なかったようだが、東京大学地震研究所の加藤愛太郎准教授の調査では、長さが4Kmほどの断層が2つ同時に動いたものと考えられると言う。北側にある断層がずれ動き、それとほぼ同時に南西側の断層が動いた。中央構造線断層帯は四国電力の伊方原発がある佐田岬半島のすぐ北側を通る。今月16日には九州電力が玄海原発4号機を再稼働した。また新潟県知事も選挙後には柏崎刈羽原発の再稼働容認の姿勢に転じた。原子力規制委員会の基準では、活断層の上に原発の重要施設を建設出来ないことになっているが、実際には活断層が敷地にあったり、すぐ近くにある原発が全国で17箇所もある。日本には知られている活断層だけでも2000を超える。地表からは確認出来ない未知の活断層もある。16日に再稼働された玄海原発の近くには8本もの活断層が走っている。柏崎刈羽原発は、敷地内に23本もの断層があり、一部は6、7号機の真下を通る。にもかかわらず、原子力規制委員会は東京電力の「20万年前以降は動いておらず活動性はない」と言う主張を鵜呑みにして、再稼働を認めた。立命館大学の高橋学教授は、東京電力の主張は詭弁であり、「断層になっている以上、いつ動いてもおかしく」ないと言われる。しかも、同教授は未知の断層を含めれば、日本には断層が数万本以上はあると言われる。また、「仮に、全原発の稼働を止めても、原発に放射性廃棄物が残っている以上、地震や津波が襲えばおしまいです。・・・放射能が緩和されるには、200年以上かかるといわれています。日本列島には、1基の原発も建ててはいけなかったのです」とも述べておられる。今月15日の琉球新報は、「放射性物質、東京湾奥部に集積 原発事故で放出」と題する記事を載せている。近畿大の山崎秀夫・元教授らのグループが、2011年8月から2016年7月まで、東京湾と流れ込む河川の計約90箇所で土壌などを採取して、セシウム濃度などを分析した。その結果を米科学誌プロスワンPLOS ONEに発表した。東京電力福島第1原発事故で放出され、首都圏に降り注いだ放射性物質のセシウムが河川を通じて東京湾奥部に集積し、現在でも汚染が続いている。「平成22年度防災白書」によれば、日本は世界の陸地面責の1%未満であるにもかかわらず、M6 以上の地震の回数では世界の20.5%も占めている。この白書では、1979年から2008年までの29年間に、世界の地震災害被害額17361億ドルのうち、日本は2068億ドルで、11.95%を占めている。約20兆円を超える。ここには2011年の東日本大震災や原発事故は当然含まれていない。小さな島国であるにもかかわらず、毎日のように地震があり、火山も噴火し、一度それらの災害が起きると多額の国費を費やすだけでなく、尊い人命まで失う。地球物理学の上田誠也東京大学名誉教授は、日本の地震予知計画は、地震観測網の整備・充実に人員や予算を集中しているために、基礎的研究としての実験室的検討が決定的に不足していると言われる。地震の短期予知は簡単ではないが、科学的作業であり、人員と予算を1%でも「短期予知」に投じれば、前進可能だとされる。米国カリフォルニア州に1300Kmにもなるサンアンドレアス断層San Andreas Faultがあるが、そのさらに北側には1100Kmのカスケード沈み込み帯Cascadia subduction zoneがあり、いずれもが巨大地震を起こす可能性があるが、今月に入り、後者に近いカナダのバンクーバー島で、1日に150回以上の地震が起きている。カスケード沈み込み帯では1700年にM9の地震があり、その時の津波が日本にも到達している。国立の産業技術総合研究所の研究では、この時の津波が岩手や宮城などの沿岸では、最大で 6mの高さに達している。カスケード沈み込み帯の巨大地震の発生間隔の平均は270年で、すでに最後の巨大地震から318年経過している。
桔梗

インフレの足音

2018-06-25 19:15:19 | 経済
今日は関東以西で30度を超える夏日となっている。釜石では日射しと重なる白雲が夏を感じさせるが、気温は23度くらいまでで、朝には相変わらずウグイスが鳴き、夜にはホトトギスの声が聴こえて来る。日中も涼しい風が吹く。それでも今週からは半袖に変えた。日射しの中を歩くとやはり暑く感じるからだ。今朝も気持ちのいい風を受けながら、ウォーキングに出かけた。ウグイスの声やカジカガエルたちの声が気持ちを和ませてくれた。出勤してみると、裏山には鹿が1頭来ていた。白い斑点があるのでまだ若い鹿なのだろう。海岸から7Kmほど離れた家のあたりよりも海岸に近い職場の方がなお1〜2度気温が低く感じられる。 今月に入り、政府が発行した国債がまる1日売れなかった日が5日あったようだ。昨年1年間でも2〜3日しかなかった。今日のBloomberg日本版でも「債券下落か、20年債入札控え上値重い-材料難で取引閑散との見方も」と書かれている。日本政府が発行する国債は、これまで市中金融機関が買い取り、その日のうちに日本銀行がそれを買い取ると言う形で収まっていた。市中金融機関は日本銀行が高値で買い取ってくれるために入札に応じて来た。にも関わらず、ここに来て、市中金融機関が政府からの国債買い取りを足踏みし始めている。ハーバート大学の研究では過去300年間でゴールドなどの裏付けのない紙幣が増刷された財政赤字国は例外なくハイパーインフレを起こしており、56例ある。今再び危ぶまれているイタリアやギリシャなどよりも対GDP比では日本の政府債務の方がはるかに高い。幸い、これまでは国民や企業の預金が多く貯蓄率が高かったために、それによって政府の借金が支えられて来た。しかし、貯蓄率が低下し、1995年のピーク以来、15〜64歳までの生産労働人口が減少しており、実質賃金が増えていないので、蓄えるよりも生活費での支出が増えている。元日本銀行審議委員の白井さゆり慶應義塾大学教授は、最近のTV番組で、「「賃金が上がらない中で社会保険料が上がっており、食料の値段も上がっていて、生活が苦しいと感じることを物価が高いと感じてしまう傾向がある。実際の物価上昇より家計が感じる物価上昇ははるかに高い。」と述べている。生活が苦しいと感じていると言うことは、貯蓄の余裕もない。何事もないように見える今の社会で、今月19日に厚生労働省が発表した「自殺対策白書」は、日本の若者の自殺が先進国で突出していることを示している。若者にとって現状の日本には未来が見えない。膨大な借金を抱えて、社会保障が維持出来なくなることを国民は無意識に感じ取っている。大学を出ても正規雇用に就けない若者がたくさんいる。産業構造の転換が言われて久しい。しかし、政治家や官僚、既存大企業は既得権にしがみ付き、将来よりも現在を重視する。日本銀行は現政権発足後、異次元の金融緩和を開始したが、その際、黒田東彦総裁は、政府に対して財政赤字の解消方向へ取り組むよう一言加えている。残念ながら、そうした方向への動きは見られなかった。2008年以来現在もハイパーインフレが続くアフリカのジンバブエはやはり政府が紙幣を増刷し、財政赤字の解消に真剣に取り組んで来なかった。自国の通貨まで廃して、他国の通貨を使っても、インフレを抑えられない。ひとたび自国の通貨への信用を失くすと、雪崩を打ってハイパーインフレに見舞われる。今の日本は生活の多くを輸入に依存している。食料や衣料、エネルギー資源などは輸入に頼っている。通貨の信用を失くせば、輸入品はたちまち高騰する。2008年の金融危機を予測したことで知られる米国の投資家ピーター・シフPeter Schiff氏は、米国でのインフレはすでに進行していて、「マネー・サプライがそうであり、量的金融緩和がそうだ。通貨発行と債券買入れこそがインフレだ。今それが金融資産、株式、債券、不動産から消費者物価に移りつつある。」米国の金融市場が9年間、金融緩和により上昇して来た。いよいよ物価が上昇し始めた。「これは巨大なインフレの波の始まりであり、地球全体を飲み込むだろう。」と述べている。インフレは金利上昇をもたらす。グローバル化した世界の金融は日本の超低金利へも直撃する。国債の金利が上昇すれば、その支払いも巨額になる。
開いて来た3つ目の睡蓮の花

健康長寿の可能性

2018-06-23 19:19:32 | 科学
昨年7月に厚生労働省が発表した2016年の日本人の平均寿命は、男女ともに過去最高を更新し、女性87.14歳、男性80.98歳となった。1960年には女性が70.19歳、男性が65.32歳であった。平均寿命は同じ死亡率が続くと仮定した場合、その年に生まれた0歳児が何年生きられるかを表している。日本人の平均寿命はめざましく延びて来た。しかし、その一方で、高齢化とともに何らかの病気を抱える人も増加している。寿命が延びても健康でなければ、延びた意味は薄まる。そこで、健康で生きられる期間、いわゆる健康寿命を昨年7月やはり厚生労働省が発表した2016年簡易生命表に基づいて試算された健康寿命を見てみると、女性が74.21歳、男性が71.19歳となっている。平均寿命に比べて、健康寿命では男女差が縮まっている。しかも、平均寿命の延び率よりも健康寿命の延び率が良くない。健康な長寿が理想だ。人の老化は、身体の中の細胞の老化であり、その細胞の老化が病気ももたらしている。病気の代表である癌は今では日本人の2人に1人がなっている。人の身体では毎日数千個もの癌細胞が発生していると言われる。その癌細胞は身体の免疫機能により、増殖を防いでもらっているために健康でいられる。しかし、免疫機能も老化とともに急速に低下して行く。癌以外の生活習慣病と言われる病気などもやはり細胞の老化が関与している。健康な長寿生活を維持するには、細胞の老化を防がなければならない。細胞も分裂を繰り返しながら次第に老化して行く。そして、細胞分裂のたびに染色体の末端部の「テロメア」が短くなることが分かっている。細胞の老化を防ぐには、このテロメアが短くならないようにする必要がある。昨年10月17日、生物・医学学術誌のBMC Cell Biologyに英国エクスター大学とブライトン大学の研究者たちが「Small molecule modulation of splicing factor expression is associated with rescue from cellular senescence」と言う論文を発表した。この論文によると、研究者たちは老化とともに短くなるテロメアを長くし、老化した人の細胞を若返らせることに成功した。エクスター大学のローナ・ハリーズLorna W. Harries教授たちは、細胞が分裂する際に、DNAが正常にコピーされるために重要な働きをしているスプライシング因子と呼ばれる遺伝子が、老化した細胞では活動が低下していることに注目した。教授たちは、赤ブドウ、赤ワイン、ダークチョコレートなどにも含まれる「レスベラトロール類似体」と呼ばれる化学物質を、培養液の中に入れて、培養液の中の老化した人の細胞を観察した。すると、数時間のうちにスプライシング因子が活動し、老化細胞は若い細胞のようにふるまい、分裂を始めたのだ。若返った細胞を調べてみると、テロメアまで長くなっていた。何度も同じ実験を繰り返したが、どの場合も細胞が若返った。この研究は、老化した細胞の機能を回復させ、人が健康を維持したまま長寿を叶えられる可能性を示した。
今年もカッコウが鳴いていた遠野の田園地帯

米国の企業債務

2018-06-22 19:15:49 | 経済
昨日の日本経済新聞は、「スタートアップ、上場より大企業傘下」と題する記事を載せている。「日本のスタートアップ企業が、成長資金の確保や市場開拓を狙い大企業による買収を選ぶ動きが広がっている。2018年1~5月の国内の買収件数は前年同期比で3割増え、新規株式公開(IPO)件数を上回った。」ここで言う「スタートアップは一般的に短期間で急成長を目指す未上場の若い企業を指す。」としている。従来、日本ではこうした若い企業は、成長とともに株式公開により独立を保ったまま資金を集めて来た。しかし、今では米国と同じように大企業による買収、いわゆるM&A(Mergers and Acquisitions)が優勢になって来ている。長く続く超低金利が、企業買収のための資金を借りやすくしている。日本よりは金利が上昇して来ている米国では、この企業買収が日本以上に極端に多くなっている。金利が上昇しているとは言え、米国の現在の金利は歴史的にはまだまだ低い。米国では今年に入り、6月までにすでに企業買収額は2兆ドルに達している。米国の企業では、株主や経営に関わる取締役が、企業の長期的成長ではなく短期的な株価上昇を望み、自社株買いと企業買収を行なっている。そのどちらもが低金利の借入や社債発行で賄われている。従って、企業にとっては低金利が続く限りは目先の「利益」を確保出来ることになるが、今後、金利がさらに上昇し続ければ、金利コストが増加し、それに耐えられない企業が出て来る。米国の企業買収の過去をみると、まさにその金利上昇と、景気後退のサイクルが見事に描き出されている。米国の中央銀行であるFRBのデータによれば、今年3月末の米国の企業の債務は49.7兆ドルになり、対GDP比で254.0%になっている。ちなみに日本の政府債務は対GDP比で240%である。米国の投資銀行などの金融機関の債務は対GDP比で81.4%である。米国でも長く続いて来た超低金利が、企業を安易な目先の利益に導き、こうして債務を膨らませてしまった。対GDP比での企業債務はすでに過去3回の景気後退直前値を越えてしまった。2008年のリーマン・ショック直前の企業債務は、対GDP比は50%にも満たなかった。いかに現在の企業債務が異常であるか。そして、それを生み出した一因は中央銀行による超低金利である。当然、米国の中央銀行であるFRBはこの状況を知っている。そのため、今後の金利を上げて行くのにも、慎重になっているはずである。米国の代表的な株式市場の一つであるナスダックは史上最高値を更新している。株価の上昇だけが企業収益に結び付き、景気の指標とされてしまった。その株価は借金によって支えられた株価である。今年、FRBは後2回金利を上げると予想されている。金利上昇で、いずれ過去の景気後退以上に空前の巨大になった債務バブルが弾け、世界を大混乱に陥れることになる。その時、もはや中央銀行にも、債務がやはり巨大になった政府にも打つ手は残されていない。
雲霧草

日本の科学・技術

2018-06-21 19:11:47 | 科学
今月12日、2018年版の科学技術白書が閣議決定された。日本の科学技術が急速に低下している。日本の研究者の論文数は2004年の6800本がピークで、2015年には62000本まで減少している。この間に中国は5倍に増え、24万7000本、米国は23%増えて27万2000本となっている。研究のために海外へ出た研究者の数も2000年には7674人であったが、2015年には4415人に減少している。日本では2004年から国立大学が法人化され、国は教育・研究費を削減して来た。国立大学は人件費や研究費を削減せざるを得なくなった。江戸幕府が倒れた後、明治政府は西洋に追いつくため最も力を入れたのが教育と研究だ。「殖産興業」を旗印に、未来を築くには教育や研究に力を入れざるを得ない。欧州から厚遇で教授陣を招き、日本の若者を教育させた。その若者たちがさらに若い世代を導いた。太平洋戦争で荒廃した国土の中で、新しい欧米の知識と技術・研究を取り込み、後の奇跡的な経済成長に繋がった。1990年代から市場経済を取り込み始めた中国も、教育・研究に重点をおき、日本以上に急速な経済発展を遂げている。日本ではまだまだ中国の後進的なイメージが根付いているが、世界ではすでに中国は日本をはるかに凌駕している。特に、教育・研究レベルは目を見張る進展を遂げている。循環器の病気が専門の東海大学医学部後藤信哉教授は、国際医学雑誌Circulationの編集に携わっておられ、「中国の臨床医学研究の量と質の改善に日々圧倒されている。」と述べている。「1990年代は日本の時代であった」が、「今は中国が「世界の中心」として注目されつつある。」と言われる。教授の専門の一つである心筋梗塞、心臓に栄養や酸素を送る冠状動脈が詰まった状態を治すのに、他の部位の静脈を使って、冠状動脈のバイパスを作る手術、「静脈グラフトによる冠動脈バイパス術」の例を1256例も集めて研究し、論文を出していると言う。教授によれば、日本ではこれだけの例を集めることは不可能だと言われる。「ランダム化比較試験」と言う研究手法もレベルが高く、「中国のバイパス手術の技術も先進諸国に劣らない。」と言われる。以前にも触れたが、中国は留学生を米国へ30万人以上送り込んでいる。日本は2万人にも満たない。中国の留学生は当初は米国へ残り、中国へ戻らない人も多かったが、今では、むしろ留学後帰国して活躍するようになっている。日本の未来の国力は若い世代の存在と、教育・研究にかかっている。しかし、残念ながら、そのいずれにも期待出来ない現状になっている。若者の数は減少して行き、大学は人件費の削減で、研究者や研究・教育の質が低下している。白書によれば、社会人で大学院の博士課程へ入学する人の数は増えているが、修士課程から博士課程へ進学する人が減っている。結果的に、博士課程を修了する人が少なくなっている。日本は経済的にも産業構造の転換が必要だが、そのためのイノベーションの原動力である研究さえ低下してしまった。
睡蓮

世界経済の移行期

2018-06-20 19:14:42 | 経済
米国の大統領は自国の製造業とその雇用を守るために、貿易の一部に関税を引き上げようとしている。輸入品に税をかけることで、国内製品の競争力を回復させようとしている。自由の国で、自由貿易を推進て来た国が保護貿易に転換している。第二次大戦の敗戦国である日本やドイツがどん底の経済状態から経済成長して、経済大国となったのは、米国が関西と言う貿易品への課税を緩やかにする自由貿易を推進して、安い日本やドイツの製品を輸入してくれたおかげだ。しかし、そのために米国の日本やドイツと競合する製造業は賃金コストで太刀打ち出来ず、敗れてしまった。1990年代後半からは、中国がそれまでの日本やドイツに代わり、安い賃金で製品を作るようになり、米国、日本、ドイツも中国に工場を移したり、外注することで、安い製品を作るようになった。この過程で、当然、技術も中国に伝わる。かって、日本やドイツが経験したことを、今中国がやっている。一度経済大国となり、賃金の高さを経験すると、中国と同じ産業で競争は出来なくなる。同じ産業で競争する限りは、自国の賃金を低めるしかない。それが現在の先進国の状態だ。製造業ではすでに日本やドイツに太刀打ち出来なくなった米国は1980年代から金融経済に主軸をおくようになり、ドイツもそれに追随した。しかし、日本は財務官僚の規制が強く、米国やドイツほど金融経済に移行出来ていない。これには旧来の製造業の政治献金を通じた政治への圧力も関係しているだろうが。現在の先進国の基本的なジレンマは、中国を含めた新興国とは異なる新たな産業を生み出せていないことにある。米国のような金融経済は、所詮は株式・債券・不動産などの金融資産のバブルを生み出し、その頂点で崩壊しする、そのサイクルの繰り返しでしかなく、繰り返すたびに債務がさらに膨らんで行く。新たな産業は教育・研究の中で生み出される。現在注目されているのは人工知能AIやロボットだ。それらの研究では米国が先端を走っていたが、それさえも今では中国が迫っている。中国にはドイツと同様に日本の大学を超える大学が数校あり、米国への留学生数も日本をはるかに超える。先進国に今共通することは失業率が低いにもかかわらず、賃金が伸びないことだ。新興国と同じ産業で競合しようとして、生産コストを下げるために、安易に非正規雇用を拡大させた。賃金が伸びなければ消費も増えない。米国は現在、好景気とされている。日本もうわべは景気がいいとされる。かっての経済であれば、景気が良ければ、インフレで金利も上がっていなければならない。好景気と言われる米国でさえ、預金金利は1%にも届かない微々たるものだ。戦後、何度も下落を繰り返しながらもたゆまず上がり続けているのは株価だけである。先進国の「景気」の指標は株価である。政治家も政権維持に株価の維持を求める。日本は中でも極端で、直接中央銀行に株価の維持を行わせている。今や先進国は金融市場に中央銀行が介入し、本来、市場が決めるべき価値を歪めてしまっている。自由市場であるはずのものが、社会主義国のようになっている。そして、本来共産主義国であるはずの中国が市場の自由化を段階的に進め、自由貿易を求めている。20〜30年後には経済の中心は西から東のアジアに移行しているだろう。実際、2000年の歴史の中では中国が世界の大国であった期間はかなり長い。教育水準が上がれば、インドもいずれ大国となるだろう。
山紫陽花